<其の814>ジョー・ダンテの怪作「グレムリン2 新・種・誕・生」

 12月も下旬になりました。何気に街も年末感が出て来ましたなぁ・・・。今年も世の中色々あったけど、筆者個人はまたまた仕事だけの1年だったわ(後悔)。

 

 ジョー・ダンテ監督(「神曲」のダンテとは無関係)といえば「ジョーズ」の良く出来た二番煎じ作「ピラニア」(後にリメイクされた)や「ハウリング」、そしてスピルバーグがプロデューサーの「グレムリン」(’84)で知られる監督(近年は撮ってないようだけど・・・)。その彼が手掛けた「グレムリン」の続編が「グレムリン2 新・種・誕・生」(’90)。まぁ、これがねぇ・・・凄いのよ、無茶苦茶で(苦笑)。観る人によると思うけど、これもある意味「面白い映画」だわ^^。あくまで人によるけど(笑)。今作を観る前に「1」は必ず観てね(「1」のパロディーやってるところもあるんで)。

 

 アメリカ・ニューヨーク。チャイナタウンの再開発を進めていた不動産王ダニエル・クランプは、ギズモを飼っていた老骨董品店店主が亡くなるとすぐさま店の解体に着手した。その際、ギズモは外に逃げ出したものの、遺伝子研究所の所員に捕らえらえてしまう。

 一方、ビリー(=ザック・ギャリガン)とケイト(=フィービー・ケイツ)は地元を離れてクランプが所有する巨大ビル「クランプ・センター」で働いていた。ひょんなことからギズモが建物内にある研究所にいる事を知ったビリーはギズモを助けたものの、彼が不在の時に水がかかり、数匹のグレムリンが生まれてしまう。ビル内で更に大量発生したグレムリン達は「クランプ・センター」内で大暴れ!!ビリーとケイトは事態収拾に乗り出したのだが・・・!?

 

 前作が大ヒットした為、すぐに続編を依頼されたダンテだったが興味がわかなかった為にオファーを受けず、他の作品を作るもののヒットに恵まれなかった。一方、スタジオ側はダンテ抜きで企画を進めたもののうまくいかず、前作より高条件(製作費アップや内容はお任せ)をダンテに提示。こうして双方の利害が一致して、いざ製作に入ったら「パニック映画」ではなく、ダンテの趣味が満載した「ドタバタコメディー映画」と化していった(笑)。

 映画はなんとアニメ「バッグス・バニー」(この為の新作!)からスタート(ダンテはアニメ好き)。わかりやすいニューヨークの空撮でドラマ本編が始まるが・・・劇中、テレビではスタローンの「ランボー/怒りの脱出」が放送されてたり、「バットマン」マークの照明が置かれている他、様々なパロディーと引用で溢れている。クランプはどう考えてもトランプ(現在からみれば彼は前アメリカ大統領だ)が元ネタだし。クリストファー・リーが出演しているのは・・・おそらくホラー映画ファンのダンテの趣味のキャスティングだろう^^。

 延々ドタバタが展開していく中、筆者が驚いたのは中盤、いきなり映像が止まってフィルムが焼け落ち、「グレムリン2」を観てる映画館内に場面がチェンジ!何故かそこにハルク・ホーガンがいて、無事本編に戻るという・・・ギャグ。アメリカ人は爆笑するかもしれないけど、筆者は一瞬不安になった(苦笑)。ダンテは映画館に様々なギミックを仕掛けたウィリアム・キャッスルをイメージして演出したそうだが・・・よくホーガンもオファー受けたな~^^。

 ラストはネタバレするから書けないけど・・・恐らくこのオチで映画が終わるという想定をした観客は皆無だろう。一時期の三池崇史監督作品を彷彿させ、苦笑い必至!その上、エンドロールでもまだやりたい事やってるからねぇ・・・。「好きにしていいと言われたし、絶対3作目が作られないようにしてやる!」とダンテが思ったのかどうかは不明だけど・・・。おかげで今作は一部で「大手スタジオが製作した映画史上、最もムチャクチャな続編」と言われている(爆笑)。

 前作から再登板したザック・ギャリガンとフィービー・ケイツが今作についてどう思ったのかは不明だが(再び二人は酷い目に遭ってる^^)、グレムリンは様々なタイプが大量に登場するから(人間の言葉を話すタイプも)“グレムリン・キャラファン”は喜ぶと思われ(当時は人形を使ってやってるから操演スタッフは大変だったと思う)、予算が増えた分、ドタバタぶりもパワーアップはしてる。ただ流石に遊び過ぎて、興行は惨敗。批評も散々な結果となった(あ~あ)。

 

 ひとりの映画監督が“映像作家”として(良くも悪くも)趣味を全面に出した作品としてコメディー好きな人、クリーチャーもの好きな人には面白いと思う。筆者はこれまでに今作より遥かにつまらない映画を山ほど観てきたし(マジです:苦笑)。ダンテのセンスがわかる人には是非見て欲しい一作。

 

 <どうでもいい追記>さて次回815回目は2023年の個人的総括回。きりのいい数字で締めくくれるのは良かった!その代わりに新年度のスタート回は半端な数字になるけどね(苦笑)。