<其の813>リドリー・スコット「ナポレオン」短評

 「エイリアン」、「ブレードランナー」他で知られるリドリー・スコット監督の最新作「ナポレオン」を鑑賞(←SF、実録犯罪もの、歴史ものという<リドスコ3本柱>の範疇に入る)。この作品も<配信前の先行上映>なので、早く観ないとスクリーンで観られなくなっちゃう(ソフトにもならんから困るわ)!

 ナポレオン・ボナパルトはこれまでにも数々の映画で取り上げられてきた人物ですが(かのスタンリー・キューブリックが生前断念した企画の1本としても有名)、スコットらしい演出&解釈で作られた作品でした。筆者はリドスコのファンだし、歴女ならぬ歴男でもあるので、喜んで観に行った次第。絶賛公開中なので、いつも通りサクッと書きます。

 

 物語は「フランス革命」直後、ギロチンにかけられるマリー・アントワネットの様を眺める青年ナポレオン(=ホアキン・フェニックス)が次第に軍人として頭角を現す中、年上の未亡人にして子供もいるジョゼフィーヌ(=ヴァネッサ・カービー)に恋して結婚。自由奔放な妻との関係を軸に彼の生涯を描くー。

 

 リドスコ自身、長年「ナポレオン」をやりたかったそうだし(この点はずーっと秀吉やりたかった北野武監督作「首」と同じ)、史実に乗っ取った歴史もの(「伝記」ともいえる)を過去に何本も作っているのでお手の物だとは思うけど(次回作は「グラディエーター2」のようだし)今作も・・・凄いよ!有名な「アウステルリッツの戦い」や「ワーテルローの戦い」他を再現する為、イギリス各地やマルタ島でロケを敢行。ナポレオン時代の軍事演習を受けた8000人ものエキストラを動員して最大11台のカメラで同時撮影。大迫力の戦闘シーンを演出してる。湖の氷が割れて敵軍がどぼどぼ水没していく場面では、撮影用の湖をわざわざ造ったそうだからーどんだけ製作費かかってんだろ!?勿論、VFXも使ってるんだけど・・・まぁ、見事でしたよ。こういう作品こそスクリーンで観るべきものだよね^^。

 ホアキンさんは「グラディエーター」以来のリドスコとのお仕事。肖像画で見る実際のナポレオンには似てないけど(めんご)、映画を観ている内にそんなに違和感がなくなっていくのが、、、不思議だわ。脚本は専門家たちの意見を聞いて書かれたそうだけど、ホアキンが沢山の質問をリドスコにして、一部書き直したというから、ホアキンの役への入れ込みようが分かる。一方、ナポレオンの最初の妻で悪妻として知られるジョゼフィーヌを演じたヴァネッサ・カービー肖像画には似てないけど(太地喜和子に似てると思ったのは筆者だけ!?)観ていくと実際こんな感じの人だったのではないかーと思ってしまった。ナイスなキャスティングだと個人的に思う。

 

 基本、史実通りなので(といっても一部、映画的脚色はあるからまんま信じてはいかんよ)ラストは書かなくても予想出来ると思うけどーこの映画をナポレオンの本国・フランスの人々がどんな感想を持つのか知りたいね。筆者は80歳越えても、こんな大規模な映画を創るリドリー・スコットのパワーをただただリスペクトするのみ。この劇場版は158分なんだけど、<別バージョン>としてリドスコは270分版も作ってるんだって(劇場版は「このシーンないの?」と感じてしまう箇所があったので、編集でかなりカットしてると思った)!!このバージョンも後日、是非観たいなぁ。

 

 今作も<配信前の先行上映作品>と先述したけど、フィンチャーやスコセッシの作品と違って、この「ナポレオン」は珍しくパンフレットが売られてた(驚)!パンフコレクターでもある筆者が購入した事はー書くまでもない。

 

 2023年、映画館に行くのは・・・これで最後だな~。スコットの作品で年を締めるのも映画オタクとして悪くないでしょう^^。