其の406:人体の神秘「ミクロの決死圏」

 昨年は懐かしの東宝特撮映画を“記録”するため幾つか取り上げたが、今回は懐かしのアメリカ製SF映画「ミクロの決死圏」(’66)をチョイス(筆者はSFものも大好き)。もう充分“古典”だよね(笑)。「ピラニア」や「グレムリン」のジョー・ダンテ監督作「インナースペース」(’87)の元ネタでもある(製作はスピルバーグで、ブレイク前のメグ・ライアンも出とる)。今作自体も手塚治虫の「鉄腕アトム」の某エピソードが元ネタとも言われているけど(笑:「ライオン・キング」の元ネタ、「ジャングル大帝」といい、やはり手塚は天才)。もしかすると現在では、かの肉体派女優ラクエル・ウェルチが身体にぴったりのウェットスーツを身につけるシーン(体内は36度前後あって“熱い”から)がある映画として有名かも?でも、それはマニアだけか(苦笑)。

 
 東西冷戦下ー。特別情報部員グラント(=「ベン・ハー」出演にして若くして夭折したスティーブン・ボイド)は、軍の上層部により秘密基地へと連れて行かれる。そこでは<空前絶後の作戦>が計画されていた!実は“物質の縮小化”が極秘で研究・開発されていたのだが、アメリカでは技術的な問題で縮小できる時間はわずかに1時間。この限界を克服する技術を開発した科学者を西側から亡命させたものの、敵の襲撃により意識不明の重体に陥っていた!しかも患部は外から手術の出来る位置ではなかった・・・。そこで、特殊潜行艇に医師と科学者を乗せミクロ大に縮小して体内に進入。博士の脳内出血部に内側からレーザー光線を当てて治療する、というミラクルなもの!!メンバーは脳外科医デュバル(=アーサー・ケネデイ)とその助手コーラ(=もちウェルチ)、循環器の専門医マイケルス(=ドナルド・プリーゼンス)、海軍大佐オーウェンス(=ウィリアム・レッドフィールド)、そしてグラントの5人。はたして1時間以内に彼らは任務を遂行し、体内へ脱出することができるのか!?

 
 冒頭、いきなりスパイ映画のようなサスペンス調でスタート。その後、基地での作戦解説&メンバー紹介を経て、ここがちと長い気がしなくもないが(苦笑)、いざ<縮小化>するところからは目が離せなくなる(→どうやって小さくなるかは観てのお楽しみ♪)。いざ体内に入ると原題「幻想的な旅」のタイトル通り、美しくもファンタジックな映像が続出する(邦題はアクション映画っぽいけど)。

 目的地が<脳>で、タイムリミットは1時間しかないから、そんなに体内をあっちこっち廻る訳じゃあないんだけど(笑)首の動脈から注射で入って、思わぬトラブルもあり(←お約束)、心臓から肺、さらには耳を通って目的地へ。その間、CGのない当時としては最新の特撮技術(=巨大セット&ミニチュア模型、アニメに合成・・・背景の合成がバレバレなのは「ご愛嬌」ということでひとつ:苦笑)を駆使して映像化している。こんなに体内が美しいかどうかは知らんけど(笑)、これらの描写は一見の価値あり!特に脳の様子ー神経と神経の間を電気信号がキラキラ光りながら行き来する・・・は、今では「健康バラエティ」とかの解説CGでお馴染みだけど、当時としては画期的な描写だっただろう(感心)。66年度のアカデミー賞2部門受賞(美術監督・装置、特殊視覚効果)も頷ける。

 監督はリチャード・フライシャー(→この人のお父さん、「ポパイ」で知られるアニメ界の草分け的存在:マックス・フライシャー)。今作以前にはネモ船長が活躍することで有名な<SFの開祖>ジュール・ヴェルヌのSF小説「海底二万哩」(’54)も演出してるから、そのあたりで起用されたんじゃないかしら(→潜航艇の描写は「ノーチラス号」とマジそっくり)。今作以降はリメイクもされたファンタジー映画「ドリトル先生不思議な旅」(’67)、黒澤明降板騒動で有名な「トラ!トラ!トラ!」(’70)、俳優復帰が噂されるシュワちゃんの出演作「キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2」(’84)、「レッドソニア」(’85)も手掛けとる(当時の典型的な職人監督のおひとりですな)。今作の演出も可もなく不可もなく・・・という感じ。

 出演者の中で唯一(?)メジャーなのがラクエル・ウェルチ・・・その美貌とナイスバディで、とても脳外科医の助手には見えないけど(笑)、<大人の娯楽のお色気要員>として合格点^^!“ある事情”で彼女を助けるため、他のメンバーが彼女の身体をまさぐるシーンがあるのだが・・・共演俳優陣は美味しいことしてるよな〜(羨ましい)^^。男性陣が濃い分、彼女がいなかったら相当ムサい作品になっただろうから、キャスティングした人、えらいっ(座布団2枚差し上げる)!!

 斬新な内容ゆえSF映画史に残る作品ではあると思うが・・・設定につっこみどころも多々あるし(→後に「銀河帝国の興亡」三部作で知られる超メジャーSF作家:アイザック・アシモフがノベライズ化し、矛盾点ほかを補完。オリジナルで「続編」も執筆している)、旅の途中描かれるサスペンス描写(ネタバレするんで詳しくは書きませんが)もいまいち消化不良。終わり方にも、もうちょい余韻が欲しい・・・というのも正直なところ。

 加えて「現在の最新CGで作り直したい!!」と観た人誰もが思うだろう。ハリウッドの方々もそう思っているようで(企画不足だし、)実はウン年前からリメイクの話が出ているんだけど(一時期は「地球破壊王」ことローランド・エメリッヒの名前も!)先頃「ナイトミュージアム」シリーズのショーン・レヴィ監督に決まった・・・らしい(しかも3D化)。ところが製作を担当するのが“3D大好きで「アバター」もあと2本続編作る”ジェームズ・キャメロンだから・・・キャメロンとレヴィがもめて、監督降板騒動が起こりそうな気がしないでもない(苦笑)。

 
 さて今年は<懐かしのアメリカ製SF映画シリーズ>ということで「禁断の惑星」とか「遊星よりの物体X」、「宇宙戦争」、「地球最後の日」、「アルゴ探検隊の大冒険」他を取り上げようかしら(嘘、嘘。でも気が向いたらやるかも)。


 
 <どうでもいい追記>トゥラ・サターナが今月4日に亡くなった・・・。つい、この間「アストロ・ゾンビ」の話を書いたばっかりだったので・・・なんか妙な因縁を感じてしまった。まぁ、会ったことも一緒に飲んだこともないんだけどさ(笑)。