<其の808>アメリカ暗黒史「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」短評

 あっという間に秋めいて10月下旬となりました(その間、日本では有名人が相次いで亡くなった)。もう本屋では来年のカレンダーを売っていたりして・・・1年経つのが早いなぁ!!

 

 マーティン・スコセッシ監督最新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観て来ました。スコセッシ初の西部劇(ガンマンが決闘するようなベタなやつではない)にして、スコセッシ作品新旧の“顔”、ロバート・デ・ニーロレオナルド・ディカプリオが共演!これは映画オタクなら観るしかないだろ^^。

 

 1920年代のアメリカ・オクラホマ州。ここでは石油利権でお金持ちのオセージ族(=ネイティブ・アメリカン)に白人入植者達が群がっていた。戦争で負傷したアーネスト(=ディカプリオ)は仕事を求めて、伯父で牧畜業を営む町の有力者ウィリアム(=デ・ニーロ)の元に身を寄せる。運転手として働く中、オセージ族のモーリー(=リリー・グラッドストーン)と知り合い、お互い惹かれるようになる。だが町ではオセージ族とその関係者達が次々と不審な死を遂げていく・・・!

 

 これ実話なんですよね・・・(この映画の話を聞くまで筆者も初耳)。これぞ知る人ぞ知るアメリカ暗黒史のひとつ。ホント、白人はネイティブ・アメリカンに悪い事ばかりしてきたよなぁ!詳しい事件のあらましや結果、フラワームーンの意味ほか知りたい方は原作本を参照の事。レオ様(製作総指揮兼任)は当初、事件を捜査する方の役をオファーされたんだけど、アーネスト役を演りたいとの事でキャスティング変更されたそうな。

 なんせデ・ニーロとレオ様(過去に「ボーイズ・ライフ」で共演)だからねぇ~、悪人役は上手い。安心して観てられる(笑)。筆者的には終盤ちょっとだけだけどジョン・リスゴー(懐)と「ハムナプトラ」シリーズのイメージはなくなったブレンダン・フレイザーが出てたのは良かったかな。スコセッシもヒッチコックよろしく、俳優としてちょい出てる^^。

 映画観ていて一番感じたことは80歳にもなったスコセッシ(共同脚本も)がまだまだパワフルな事!制作に際し、リアリティーを追求するため事件のあった現地でも撮影&オセージ族のトップに協力を仰いで当時の様子を徹底再現。演出も突如として起こるバイオレンス描写は勿論、石油が湧き出た時のスローモーション、当時のニュースフィルムを思わせるモノクロ映像使用と要所要所に変化をつけ、少々中だるみした箇所もあったものの、上映時間206分(!!)を一気に見せきる。つまんない映画だと30分もしないで飽きるけど(笑)、こんな大作作ってもなお観客を飽きさせないとはスコセッシ、恐るべし!!実在した百合修道女を描いたポール・バーホーベンといい、近日「ナポレオン」を公開するリドリー・スコットといい・・・現代の80代監督は元気だな~(笑:でもマジで尊敬)。

 決して明るい話ではないし、スコセッシの集大成・・・とまでは思わないけど、レオ様のファンや映画ファン、歴史好きは観て損のない一作。

 

 今作も先行して劇場公開した後は<配信>されるそうで・・・(その為か、パンフレットが作られてなかった)。個人的には劇場でもやらない<配信オンリー作>よりは嬉しいけど、せめてソフトは出して欲しいんだよねぇ。先述の「ナポレオン」も今作と同じパターンみたいだし。配信観るの苦手な筆者にはキツい時代が来たのかも(汗)。