其の489:タラの新作「ジャンゴ」の出来は?

 忙しくしていたら、あっという間に3月に!そして今日は大震災から丁度2年・・・。いや〜、筆者も年食う訳だ(苦笑)。

 そんな中、先日クエンティン・タランティーノの新作「ジャンゴ 繋がれざる者」を鑑賞。タイトルからも分かるようにタランティーノマカロニウエスタンのオマージュ(→“ジャンゴ”は「続・荒野の用心棒」の主人公の名前)!!果たしてその出来の程は・・・?


 1858年、南北戦争が起こる2年前のアメリカ・テキサス州ー。「奴隷市場」で売られた黒人奴隷ジャンゴ(=ジェイミー・フォックス)たちが鎖に繋がれ、白人兄弟の先導で歩いていたところ、自称・歯科医のドイツ移民:キング・シュルツ(=クリストフ・ヴァルツ)によって助けられ自由の身となる。シュルツは実は<賞金稼ぎ>で、彼はジャンゴの協力によって賞金首のプリトル3兄弟を検挙することに成功した。以後、2人はコンビを組んで次々とお尋ね者たちを取り押さえてゆく。そんな中、「奴隷市場」で離れ離れとなったジャンゴの妻・ブルームヒルダ(=ケリー・ワシントン)が大農園の領主カルヴィン・キャンディ(=レオナルド・ディカプリオ)の所にいることが判明。ジャンゴとシュルツは彼女を奪い返すためカルヴィンの下へ向かったが・・・!?


 これまで様々な“ジャンル映画”を撮ってきたタランティーノが大好きな「マカロニウエスタン」を撮ることはある意味、予想できたことだが・・・思ったより早かったわ^^。前回来日した際、日本のホテルで大量のマカロニ・サントラを聞いていて今作のアイデアが浮かんだそうな。「キル・ビル」2部作はあらゆる映画からのパッチワーク的側面が強かったが、今作は彼なりにマカロニを咀嚼して作り上げた堂々たる大作となっている。

 彼の作品だけにある程度“元ネタ”を紹介しないといけないのだが→→→タイトル及び主人公の名前&主題歌をまんま「続・荒野の用心棒」から流用。シュルツがジャンゴに銃の手ほどきをするのは「怒りの荒野」、雪山でのシチュエーションは「殺しが静かにやって来る」から。黒人奴隷の酷い扱いは「マンディンゴ」にヤコペッティの「残酷大陸」、妻の名前はワーグナーのオペラ「ニーベルングの指環」、ジャンゴたちを襲う白人グループの描写はグリフィスの「國民の創生」・・・細かいこと書いてたらキリがない!!超アバウトに書けば“ブラックスプロイテーション(=「シャフト」や「ダイナマイト諜報機関」シリーズ他)”とマカロニウエスタン諸作(中でもセルジオ・コルブッチ監督作)+「マンディンゴ」の融合という感じ。派手な血の飛ばし方はサム・ペキンパーの「戦争のはらわた」を連想したのは・・・筆者だけか?!

 そんなジャンル映画の集合体ながら、タランティーノ作品だけに出演者はいつものことながら超豪華!「Ray/レイ」でアカデミー主演男優賞を受賞したジェイミー・フォックス(タラは当初、ウィル・スミスを希望していた)に、あのレオナルド・ディカプリオが極悪白人を怪演(本人曰く「見たこともない悪役」)!途中、レオ様の手が血まみれになりますが、あれは本物の血です(誤って手を負傷した)。タラの前作「イングロリアス・バスターズ」のナチス役でオスカーに輝いたクリストフ・ヴァルツは本作で“いいもんのドイツ人”を演じて2度目のオスカーをゲット。更にタラの盟友サミュエル・L・ジャクソンが老けメイクで久々に顔出し出演(ちなみにタラ本人もちょい役で出てる)。“元祖”ジャンゴことフランコ・ネロが出演しているのはマカロニファンとしては嬉しい凝り方だった^^。個人的にはネロを大スクリーンで観たのは「ダイ・ハード2」以来だわ(嬉)。

 詳細はネタばれするので書かないけど・・・上映時間2時間45分という長尺ながら(→タラの映画はあれこれネタぶちこむから基本長いよね。セルジオ・レオーネの真似ではないだろうが)西部劇の面白さを満喫させてくれる快作ですよ。ここ2、3作ハズしてて当時ファンとして厳しいことも書いたけど、久々今作は良かった^^。ただもっと切れるとこもあったし、サム・ライミの「クイック&デッド(これに若き日のディカプリオも出ている)」ぐらい、もう少しマカロニのけれん味があっても良かったとは思うけど。もう少し書くなら“お約束”の決闘とマカロニ機関銃が出れば更に評価は上がったけどネ(笑)。

 タランティーノ作品を書く上で元ネタ紹介に加え外せないのが<選曲>!今回は当然の如くマカロニウエスタン諸作・・・当然のことながらエンニオ・モリコーネ御大から大量に曲をチョイスしていてご機嫌な内容❤基本いつものように既成曲・・・ながら、なんと今回は1曲、モリコーネがオリジナル曲を提供!ファンはサントラ買わないとあきまへんで(筆者が持っていることは言うまでもない)♪

 
 諸外国のように日本でも大ヒットするかどうかは不明だが(→今作は「イングロ〜」を抜いてタランティーノ作品最大のヒットとなっている)下手な映画観るより断然お薦め!2013年必見の一作であることは間違いない。



 <悲しいお話>上記の文章書いてたらアニメ「ルパン三世」の銭形警部役:納谷悟朗さんが5日、慢性呼吸不全のため死去(享年83)の報道!ルパンファンとして悲しい、悲し過ぎる・・・。心よりご冥福をお祈り致します。