<其の701>タラさん新作寸評「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

 残暑厳しい日々が続いております・・・(汗)。当ブログの"サブ"に当たるブログのリンクを貼っておきます。これないと・・・読めないので(メンド―)。

             https://eigaman.hateblo.jp/

 

 さてさて、先日、クエンティン・タランティーノの監督9作目となる映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観て来ました。1969年(日本に置き換えると昭和44年)のハリウッドを舞台にしたサスペンス(?!)映画。俳優陣には共にタランティーノ作品出演済のレオナルド・ディカプリオブラッド・ピットのW主演!!大物2人の初共演作ということもあってヒットしているそうですがー肝心の出来は!?絶賛公開中だけにサクッと書きマス🎵勿論、ネタバレなしで^^

 

 1969年2月、アメリカ・ハリウッド・・・。リック・ダルトン(=レオ様)は旬が過ぎた、落ち目の中堅テレビ俳優。そんなリックと行動を共にしているクリフ・ブース(=ブラピ)は彼のスタントマン兼付き人にして良き親友でもある。リックはエージェントのシュワーズ(=アル・パチーノ)からイタリアの監督、セルジオ・コルブッチのマカロニ・ウエスタンの出演を持ち掛けられ自分の凋落ぶりに落ち込んでいた。一方、クリフも以前「グリーン・ホーネット」の撮影現場でブルース・リーとトラブルを起こしてスタントの仕事を干され気味の状況にあった。リックの隣の家には「ローズマリーの赤ちゃん」で話題を呼んでいたロマン・ポランスキー監督とその妻、シャロン・テート(=「スーサイド・スクワッド」のマーゴット・ロビー)が引っ越してきていた。公私ともに幸せの絶頂にいる2人の姿を羨望の眼差しで見つめるリック・・・。

 翌日、ドライブをしていたクリフは、以前見かけたヒッチハイクのヒッピー少女を車に乗せ、仲間と共に住んでいるという元映画撮影所まで送る事に。だが、そこはチャールズ・マンソン率いる通称"マンソン・ファミリー"が占拠していた・・・。

 

 以上、書けるのはここまで!!まぁ、特にストーリーらしいストーリーはない(フェリーニか:苦笑)。このブログを長年読まれている聡明な読者の方なら、上記に書いたセルジオ・コルブッチ監督や「シャロン・テート事件」、「マンソン・ファミリー」については既にご存知の事と思う。特に今作の肝が「シャロン・テート事件」にあるので、もしご存知ない方は必ず<予習>してから映画を観に行くようにして下さい。タラさんも観客が知ってる前提で映画作ってるんで。そうじゃないと、オチを含めて「ポッカ―ン」となっちゃう(←映画館で筆者の横で並んで観ていた若いカップルはこうなってた)。

 タラさんが幼少時代に見たハリウッドの様子(←タラさんは1963年生まれ)を彼独自の発想と解釈で表現したのが今作。CGが嫌いだからって、ハリウッドの大通りを巨費を投じて1969年当時を再現(街並みから車、通行人の衣装含む)したのは凄い(街のあちこちに当時、実際に公開された映画の看板やポスターが貼ってあるのは観てて楽しかった^^)。

 あと<クライマックス>の演出には大笑いしたわ~!・・・書けないけど(笑)。生憎、映画館で爆笑していたのは筆者だけだったが(苦笑)。前作にして傑作「ヘイトフル・エイト」よりは落ちたけど、個人的にはなかなか楽しめた。書きすぎるとネタバレになるので、余計な(どうでもいい)話をメインに書いていこうと思う。

 

 筆者が鑑賞前、周りで既に観た人は「上映時間(2時間41分)が長すぎる」とか「もっと編集でカットできる」とかいう人がいて、いまいち評判悪いんだけど・・・まず、タラさんの映画って、どれも基本長いじゃない(笑)。彼の大好きな監督のひとり、セルジオ・レオーネのスタイルを真似してると思う(レオーネ映画も2時間半とか3時間ざら)。かつ台詞で済ませていいところも<再現シーン>や<想像(?)シーン>をご丁寧に入れてるから・・・こりゃ長くなるわ(笑)!

 今作のタイトルもレオーネの作品からとってるのは間違いないし・・・なんせレオーネの遺作のタイトルは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」だし、邦題「ウエスタン」の原題も「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」。「夕陽のギャングたち」も当初のタイトル案は「ワンス・アポン・ア~系」だったそうだし、盟友ロバート・ロドリゲスの"マリアッチ3部作"の最終作もタラさんの提案でタイトルが「ワンス・アポン・ア~系」になった過去あり!よって、彼が自身の監督作にも「ワンス・アポン・ア~系」にしたのも必然だと筆者は考える。

 その上、先述した実際の映画、テレビ番組、実在の人物と架空の映画やテレビ番組が混在しているし(筆者も7割ぐらいしか分からんかった)、加えてシャロン・テートの話を知らないと・・・つまらないと思う。よって万人受けはしない、お客を選ぶ作品ともいえそうだ。

 そもそもタランティーノ自体、ナイスな台詞回しと展開に加え、いろんな映画からの模倣や引用から作った映画で注目された人物でもあるのだが(褒めてます^^)、レオーネの最高傑作だと筆者は思っているー邦題「ウエスタン」自体、過去のハリウッド西部劇からあれこれ引用して作られた映画なんだよね。という事はレオーネはタランティーノの<引用、模倣の先輩筋>にあたる人・・・今作はタラさんとレオーネの共通点が白日の下にさらされた作品・・・というのが筆者の結論❤

 

 それにしても幾つかの情報番組の「映画コーナー」でストーリー紹介の時「1969年、ハリウッドの黄金時代・・・」なんてナレーションつけてるのを見たけど・・・違うから!!この時、ハリウッドはテレビの台頭や「ベトナム戦争」、「カウンターカルチャー」等の要因でスタジオ経営はヨレヨレ&「アメリカン・ニューシネマ」が出てきた<変革期>だったのよ。「俺たちに明日はない」や「卒業」が1967年、劇中登場したスティーヴ・マックィーンの「ブリット」は1968年。この年には、かのキューブリックの名作「2001年宇宙の旅」も公開されてる。

 ・・・まぁ、若いディレクターが大して調べもせず、上の人もろくに知らないのにチェックオッケーして放送したのがバレバレ!映画の宣伝会社の人&テレビの人、全てが映画に詳しい訳じゃあないのは先刻承知だが・・・必要最低限のレベルは調べてほしいものだ。