<其の807>「探偵<スルース>」再見&伝説のカルト映画「追悼のざわめき」初見

 ウクライナの戦争も終わらないのに、今度はイスラエルでも・・・(悲)。

ガンダム」じゃないけど・・・“人類はいつ戦いを止めることが出来るのか?”

 

 前にも書きましたけどミステリーファンとして「探偵<スルース>」(’72)のDVDが発売されていない我が国のソフト事情は・・・嘆かわしい限り。筆者は大昔に一度観たきりなので、改めて見直したい(細かいシチュエーションを忘れてる)・・・と考えていたところ、ようやく先日再見が叶いました❤内容が内容なので、ネタバレせぬよう書いていきます^^。

 

 イギリス・ロンドン郊外ー。著名なミステリー作家ワイク(=ローレンス・オリヴィエ)の大邸宅に呼びつけられた美容師のティンドル(=マイケル・ケイン)。ワイクはティンドルに自分の妻と不倫している事実をぶつける。正直に答えるティンドル。するとワイクは浪費家の妻に愛想が尽きた事、自分にも若い愛人がいる事を告白した上で、ティンドルに自宅金庫の宝石を盗んでいくよう提案してきた。宝石には保険が掛けてあるのでお互いに利益があり、盗品でも安全に売る方法まで紹介するとの事。不倫相手との今後の生活を考えたティンドルは了承し、ワイクに言われるまま宝石を盗む事にしたのだがー!?

 

 お~っと書けるのはここまで!これ以上は今後観る人の為にも書きません^^。ちなみにリメイク版(マイケル・ケインがワイク役演ってる!)は筆者未見。

 今作が名作として語り継がれている要素の1つ目が<脚本>。今作はアンソニーシェーファー(←この方、ヒッチコックの「フレンジー」の脚本も書いてる)の大ヒット舞台劇の映画化なんだけど、彼はこの映画版でも脚本を担当。お話は二転三転するんで乞うご期待^^!

 監督のジョゼフ・F・マンキーウィッツは以前、エリザベス・テイラーの「クレオパトラ」で破格の製作費を投じたものの大コケして、映画史上最大の大赤字を出した事でも知られているが(笑)、今作ではうま~く舞台を映画に“移植”。映像ならではの面白さを引き出している(今作が彼の「遺作」)。

 要素の2つ目が<出演俳優>。ローレンス・オリヴィエマイケル・ケイン、2大名優がバッチバチの演技合戦を繰り広げる!!元が舞台劇だけに台詞の量もハンパないんけど、2人の演技力がもの凄いので目が離せない。

 そして、最後3つ目が<美術>!担当したのは「007」シリーズで知られるケン・アダム。ど頭から出てくる<迷路の庭>に始まり、真っ白のジグソーパズル(どないやんねん)や大量のからくり人形、そして「アメリカ探偵作家クラブ賞」のエドガー・アラン・ポーの像(本物!?複製!?どっちなん?)他、遊び心に溢れたグッズが満載❤もっと細かくワイクの部屋が観たかった(笑)。

 

 21世紀の映画観客目線で観ると、、、もうちょいカットできたり、ちょっと長いな~と感じる部分もあるけれど(今の映画はテンポ早いからさ)、70年代の映画のムード、当時のイギリスの館の雰囲気も感じられる。ミステリーファン、どんでん返し映画好きには一度は観て欲しい作品。日本でも早くDVDかブルーレイ、出してくれ!!

 

 一方・・・タイトルは初公開当時から知ってはいたものの、良くも悪くもアブない空気を感じ、筆者の琴線には触れなかったのが日本映画「追悼のざわめき」(’88)。でももういいオッサンなので(笑)、若い時のようなショックは受けないだろうと思ってレンタルDVDで観賞しました(デジタル・リマスター版)。宣伝スチールに10代のカップルの場面がよく使われていたので、てっきり彼らが主人公かと思っていたらー観たら違ってた(笑)。

 

 大阪の廃墟ビルの屋上でマネキン人形と暮らす殺人犯の男をメインに小人症の兄妹、街を彷徨う10代の兄妹、女性の下半身そっくりの材木を引いて歩くホームレスが織りなすファンタジーといえばファンタジー、群像劇といえば群像劇、ストーリーもあるような、ないような、ないようであるような・・・(笑)。猟奇殺人、近親相姦に加えカニバリズム・・・テーマは愛(エッチ含む)、あるいは人間の生って事になると思うのだけれど、映画の要素を文字にするとアブない内容てんこ盛りの2時間30分!!石井輝男とはベクトルが異なる大カルト映画!でも映像はモノクロだし、予想よりグロくもエロくもなかったのでホッとした^^。でもダメな人には全くダメだと思う。

 監督・脚本は松井良彦(彼の映画の師は寺山修司)。制作に数年間要したそうだが、この映画の発想自体が凄い。昔のデヴィッド・リンチやクローネンバーグ以上!無名俳優がほとんどで、手持ちカメラのシーンやゲリラ撮影シーンが随所にあって、いかにも低予算のインディーズ映画だけど「たとえ何と言われようとも、この作品を最後まで創る!」という監督の執念が筆者には感じられた(もし違ってたらすいません)。

 こんなこと書くと関係者や作品のファンに怒られるかもしれないけど、またまた21世紀の映画観客目線で観ると、、、幻想的なシーンが多くて、ゴダールの映画より難解である事は事実。長回しほどでないにしろ、1カットが長~いところもあるので、もう少々編集で切ってもよかったかも。まぁ、でもこの長さは監督が求めたもの・・・。自分で脚本書いてビデオカメラで自ら撮影していた学生時代の気持ちが少し甦ってきたわ(苦笑)。

 

 筆者が観たデジタル・リマスター版は初公開時の16ミリフィルムと違って、映像のざらざら感はなかったし、音楽も版権の問題で差し替えられているので、公開当時に映画館で観た人とは似て非なるものかもしれないけど、、、個人的にはおぞましくも美しい、見てはいけないものをつい覗き見てしまったような・・・心が少しざわざわするような心持ちになる作品。ひたすらクリーンさを追求する令和のニッポンでは二度と作れない映画でしょう。決して筆者の好みの作品ではないけど、監督の創作姿勢には共感した次第(←筆者の予想が当たっていた場合)。興味のある方のみ、どうぞご覧下さい(但し、責任は一切取りません^^)。