<其の769>スピルバーグ初のミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」感想

 2022年(コロナ渦3年目)、筆者が最初に劇場で観た映画は「ウエスト・サイド・ストーリー」になりました。もう書くまでもありませんが・・・ブロードウェイ・ミュージカルの映画化にして当時、大ヒットした超有名作「ウエスト・サイド物語」(’61)以来、2度目の映画化。しかも監督がミュージカル映画初となる、あのスティーヴン・スピルバーグ!!

 製作発表のニュースを聞いた時は、おそらく大半の人々が「あんなメジャーな古典的名作を今更??」「スピルバーグがミュージカルって・・・何故??」と思った事だろう(筆者もそう思った)。過去に「1941」や「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」の冒頭でもミュージカルっぽい事は一部やってはいたけれど・・・いくら前回の作品のファンだとしても、天下のスピルバーグでもハイリスクでしかない企画に彼のファンである筆者もハラハラしていたが・・・「レディ・プレイヤー1」以来の新作だから、当然、観るしかない訳で。勿論、<61年版>は以前観てるから、ついつい比較してしまいがちなんだけど・・・これが思いのほか良かったんですわ^^!!

 考えてみれば大してミュージカルに興味のない筆者が、わざわざ映画館にミュージカル映画を観に行ったのは・・・半世紀以上生きていて、これが初めて(笑)。映画は大ヒット上映中につき、ネタバレしないレベルで感想を少々書きマス。

 1950年代のニューヨークを舞台に「ロミオとジュリエット」ベースのお話が展開する話の大筋は同じ。<61年版>は周りのキャラが立ち過ぎてて、主人公トニーの影が一番薄いという不思議な映画でもあったのだけど(笑)、今回のトニーは新たな設定も付け加えられていて(それは観てのお愉しみ)、ちゃんとメインキャラとして機能してた(笑)。

 撮影監督のヤヌス・カミンスキーもコメントしてたんだけど、前回と一番の違いはカメラの動き!冒頭から街の一角を取り壊す工事の様子と不良グループの動きがクレーンカメラによって縦横無尽に映し出される(61年版当時より機材が遥かに軽量化した為)。街のセット含め<61年版>の雰囲気も残しつつ、肝心要の歌唱&ダンスシーンの構図や編集もこれまでのスピルバーグ映画風になってた・・・。やるじゃん、スピルバーグ

 <61年版>で取り上げられていた人種問題、移民問題の他、今作ではより現代的なテーマも追加。“ジェンダー”やアメリカ社会で大きな問題となっている“国民の間の分断”も描かれる(脚本に“人間の憎悪と暴力の連鎖”を描いた「ミュンヘン」のトニー・クシュナーを起用)。これらを提起する事がスピルバーグが一番やりたかった事なんだろうね。エンタメ映画の帝王だった彼が・・・ホント、世界的巨匠として成熟した・・・って、偉そうに書いてる筆者はスピさんより大分年下だが(笑)。

 <61年版>にも出てたリタ・モレノ(御年90!)もいい役で出てたし、筆者がストーリー知ってるせいでもあるんだけど・・・メインの2人(トニーとマリア)が可哀そうで終盤思わず泣いちゃったよ。これ以上はお話を知らない人の為に書かないけど、スピルバーグの映画観て泣いたのは「シンドラーのリスト」以来だわ(懐)。

 

 名誉も富も得てる世界的有名映画監督のスピルバーグが齢70過ぎても、新たなジャンルに挑戦してヒットさせた事は素晴らしいし、凄い事だし、ただただ尊敬するのみ。次回作も俄然楽しみに待つ(実在の戦場カメラマンを描くお話のようだ)!!

 

 余談ですが・・・近年、作品によってパンフレットが<通常版>と<豪華版>の2タイプ売ってたりして購入する際、大いに迷うのですが・・・今作はメイキングブック一択のみの販売でお値段、なんと2970円!!!すげー立派な本で、映画が良かったから買ったけどさ・・・普通のパンフレットも作って欲しかったわ~。この点だけは残念!