其の585:「ハーモニー」を観てみんなで考えよう

 2週連チャンで地方に出張行くはめになり・・・すっかり間が空いてしまいました(汗)。前にも書きましたが、よく「いろんな所に行けていいですね」とか業界外の人からは言われますが、どちらもスケジュールの関係で日帰り&「最寄り駅」と「現場」しか寄ってないから(苦笑:予算と時間がある番組はよろしいのでしょうが・・・)。ホント、地方と海外は仕事で行くものではないと改めて痛感した日々でありました。


 そんな出張地獄に嵌る直前、アニメ映画「ハーモニー」を鑑賞。伊藤計劃の長編SF小説のアニメ映画化第2弾。先に公開された「屍者の帝国」は“共著(=といっても書いたのはほとんど円城塔)”だったから、こちらがストレートな伊藤原作作品と言えるでしょう^^。小説は第40回星雲賞(日本長編部門)及び第30回日本SF大賞受賞(凄っ)。


 全世界で戦争と未知のウィルスが蔓延した<大災禍(ザ・メイルストロム)>によって従来の政府が崩壊。新たな統治機構「生府」の下で高度な医療経済社会が築かれ、そこに参加する人々自身が公共のリソースとされた未来社会ー。「WHO螺旋監察事務局」の上級監察官・霧慧(きりえ)トァンはニジェールの戦場で「生府」が禁止する飲酒・喫煙を行っていたことが発覚し日本に送還されることになる。日本に戻ったトァンは空港に迎えにきた学生時代の友人・零下堂(れいかどう)キアンと再会する。2人は学生時代、「生府」の掲げる健康・幸福社会を憎悪する友人・御冷(みひえ)ミァハに共感、ミァハに誘われるまま自殺を試みるも、ミァハだけが死んでしまった過去があった。昼食を共にするトァンとキアン。だが、その最中キアンが「ごめんね、ミァハ」という言葉を残しナイフで喉をついて自殺する。調査の結果、その同時刻に世界中で数千人の人々が一斉に自殺を図っていた事が判明、「WHO螺旋監察事務局」が捜査に当たることになった。トァンは事件に死んだはずのミァハが関係していると考え、当時ミァハの遺体を引き取った冴紀ケイタを訪ねる。トァンは冴紀から父親である霧慧ヌァザが人間の意志を操作する研究を行っていたことを聞かされ、父の研究仲間がいるバグダッドへ一路向かうのだが・・・!?


 原作未読の筆者が今作のジャンルをあえて一言で書くならば、<ディストピアもの+百合族映画(笑:でもホント。ミァハにトァンがチューされたり、胸さわられたりしとる)>。これ万が一、実写でやったら生々しいから・・・アニメで良かった^^!

 監督はマイケル・アリアスなかむらたかしの2人。最初にマイケルの方へ監督依頼が来たそうだが、アニメの監督としてはまだマイケルは経験値が低いので(「鉄コツ筋クリート」のみ)、途中から“早熟の天才アニメーター”として知られ(「幻魔大戦」や「AKIRA」にも参加)、いまでは監督も務めるなかむらも召集されW監督体制となった。

 <公開中>なので、さくっとしか書けないけど・・・元々、劇場用作品として作られているので絵のクオリティーは高く、中でも一風変わった未来社会を描いた<美術>には是非注目して観て欲しい^^。さすがは<日本製アニメ>!!内容も少子高齢化が進み、医療費の増大が予測される日本人にとっては考えさせられる・・・深〜いテーマ。ちなみにタイトルの「ハーモニー」の意味をここまで説明していないのは・・・ネタバレになってしまうから!!どんな意味で、どのようなラストがくるのかはー自分の目で確かめてね❤

 ・・・とここまでは誉めたのですが・・・内容は非常に良いのだけれど、脚本を今作のチーフプロデューサーが兼任していて・・・長編だけに脚色は大変だったと思うけど、約2時間の上映時間中、台詞とモノローグがぎっしり!!画と劇伴だけで見せるシーンがほとんどない異例の状態に!!長い台詞を埋めるため、アニメながら人物の周りをカメラがドリーしまくったりして(ヒッチコックか)頑張ってはいるんだけど・・・ちょっとこれは観ていて疲れるよね。映像作品なんだから、もうちょっと画のみで理解させるところも作らないと。何故、脚本家を雇わなかったのかは不明だが、プロとアマの差が出た感じ(素人は“省略”を知らない)。

 個人的にはエンターテイメントの「屍者の帝国」の方が好みだけど、今作はソフトになった際にはもう1回観直したい。闘病中の伊藤計劃が高度医療化社会を題材に執筆した事を考えると・・・再度「ハーモニー」を観て、より深く命の重さについて考えてみようと思う。・・・筆者もアラフィフ、段々自分の死を意識する年代になりました。


 <どうでもいい追記>“長編小説の脚色”ということで→→→先日、「ソロモンの偽証」前・後編を一気観しました(DVDざんす)。宮部みゆき大先生の原作は文庫で6冊もある・・・(長っ)!マジ、脚本家は苦心したろうなぁ(苦笑)。こちらも「ハーモニー」同様、原作未読で鑑賞したのですが「前編」が壮大な前ふり、で「後編」が解答編と。“オチ”は途中わかっちゃったし(近年の宮部先生自身、特に犯人隠さずに書いてるとコメントしてる)、一部「これはどうなの?!」という部分もあったけど、中学生たちが頑張って演じていたから印象自体は悪くない。つられて自身の中学生時代も思い出し・・・良かった思い出も悪かった思い出も・・・若干のノスタルジーに浸った筆者でありました。ホント・・・我ながら年食ったなぁ・・・(遠い目で苦笑い)。