<其の798>これぞ王道中の王道!?でも当時は斬新な「女体桟橋」

 早6月も中旬となり、関東も梅雨入りしましたね。明けるまで雨嫌いの筆者としては憂鬱な日々が続きますわ・・・(悩)。

 

 ベストセラーとなったミステリー小説「イニシエーション・ラブ」(映画化もされた)で知られる乾くるみ先生に「嫉妬事件」という著作がある。ある大学ミステリー研究会の部室内に“あるもの”が置かれ、大騒ぎになる非殺人系ユーモア・ミステリーなんだけど(ゲラゲラ笑いながら読んだ^^)、“あるもの”を書いた時点でもうネタバレと思える内容(勿論、その先に推理はあるけどさ)。先日観たジョーダン・ピール監督の「NOPE/ノープ」(ロープでもソープでもないので御注意)も、人に伝える場合には「嫉妬事件」同様、超説明しにくい内容!主人公はハリウッドに撮影用の馬を貸し出す動物プロみたいな仕事をしているんだけど、彼の自宅兼牧場周辺で不思議な事件が発生。どうやら牧場の上空に怪異の原因がありそうなのだがーこれ以上はもうネタバレ(笑)。完全なミステリーだと思って観ると、大分予想と違う展開になるけど、これはこれでありだと思う面白い作品なので、シャマラン監督作とか好んで観る方にはお薦めかな^^。

 

 今回の本題:ある程度の年月、映画やテレビを観ていくとダンダンこちらも年をとる&経験値が上がって擦れてきて(笑)先の展開を予想しながら作品を観るようになりがち。「主人公が絶体絶命のピンチのとき、寸前で助けがくる」とか「主人公のマブダチが真犯人」とかは、その間に山ほど目にする展開(笑)。筆者も今では捻った設定やストーリー、新しい映像表現の作品をつい選びがちなんだけど・・・またも石井輝男作品で恐縮ですが1958年公開の新東宝映画「女体桟橋」(いつも通りすげータイトル)は昔の作品ゆえ、そんな王道の展開(言い換えればベタ)なのですが・・・逆に新鮮に感じられて面白かった^^!この後、スタートする「地帯(ライン)シリーズ」(当ブログにて紹介済)は今作の好評を受けて製作されたもの。

 

 東京・銀座ー。路駐している高級車に挟まれたコールガール紹介のカード。吉岡(=宇津井健)は、そのカードに書かれていた「ナイトクラブ・アリゾナ」へ赴いた。ルームキーを受け取ってホテルの部屋に入ると、そこには殺された女性の遺体が!実は吉岡は身分を偽った潜入捜査官。「アリゾナ」は海外に女性達を売り飛ばす秘密売春組織のアジトと目されていた。殺人事件の捜査班に合流した吉岡は、程なく女達をスカウトするモデル事務所や結婚相談所の存在を知る。その頃、「アリゾナ」を仕切る男の情婦・ルミ(=三原葉子)が香港から入国。店で彼女を見て驚く吉岡。ルミはかつて吉岡の恋人だったのだ・・・!!

 

 どうです?上の粗筋だけでも<ザ・王道>・・・って感じでしょ!?実は東京の銀座界隈が日本の暗黒街って・・・凄い発想だな(笑)!冒頭は夜の繁華街が次々と映し出されるセミ・ドキュメンタリータッチ。銀座の他、新宿、赤坂で隠し撮り的に撮影していったという。

 エログロで名をはせた新東宝らしく三原葉子のセクシーダンスもありつつ(売りのひとつ:笑)、捜査する一刑事の哀しいプライベートエピソードも挿入。クライマックスは「地帯シリーズ」同様、観客が期待するアクションシーンが繰り広げられる。

 で、結末は皆の予想通りに(笑)。現在ではベタベタ、セオリー中のセオリーともいうべき流れだけど<エンタメ作品のお手本、娯楽の見本>的な映画に仕上がってると思う。

 

 石井さんは共同脚本も兼任。プロデューサーが持ってきた企画ながら、大蔵貢社長にシナリオをいじられないよう苦心したそうで。それでも当初のタイトル「第五桟橋の決闘」を「女体桟橋」に強引に変えたのは大蔵(やっぱり:爆笑)!このタイトルの為、映倫は要注意とにらみ、題名変更を申し入れたものの製作側が押し通したという(笑)。大蔵社長時代の新東宝らしいお話^^。