<其の717>1940年代の犯罪映画「裸の町」&「夜歩く男」短評

 ついに関東も梅雨入り。そして東京アラートも解除されましたが・・・新型コロナウイルス第2波が怖い今日この頃・・・(溜息)。

 

 さて先月、またひとつ年をくってしまったのですが・・・誕生日過ぎ、最初に観た映画は「裸の町」(’48・米)でした。よくベタな映画紹介本に“ドキュメンタリースタイルの犯罪映画”と書かれている・・・俗にいう「名作」ですわ!そんな作品をこのブログで書かなくてもいい気はするのですが(汗)、監督のジュールス・ダッシン(彼の「トプカピ」は以前紹介済)の名が近年あまり語られない様だし、今作が「フレンチ・コネクション」ほかポリス系アクション(かつバディもの)のはしりともとれるので、映画史を語る上でも外せないので書く事にしました。「名作」なんで、短めにします!

 

 ニューヨークのアパートの一室で女性の溺死体が発見された。捜査の結果、事故にみせかけた殺人事件である事が判明。マスコミが<バスタブ殺人>と大々的に報道する中、殺人課の刑事達は地道に捜査を続ける・・・。

 

 タイトルの「裸の町」とは、捜査の過程で随所に描かれる、生のニューヨークの姿を指す。この当時は基本、スタジオ内にセットを組んで撮影する事がほとんどだったんだけど、今作では俳優とカメラを実際の町に出して、そのリアルな様子をフィルムにおさめている。ポリスアクションのみならず、70年代のニューシネマのルーツともいえそうだ。

 今作がユニークなのは・・・なんと冒頭から全編に渡り、ちょいちょい入ってくるナレーションを映画のプロデューサー自身が担当していること(驚)!なんでも隠し撮りが多かったので、同録出来ない外ロケ部分・・・音声的には無音・・・をナレーションで埋める意味合いもあったらしい。もっともナレーションでは「全編ロケ撮影」みたいなこと言ってたけど・・・どう観ても警察署内とか刑事の家の室内シーンはスタジオでのセットだと思うけどな~(違ってたらゴメンね^^)。

 ドキュメンタリースタイルの殺人事件の捜査(なんでも実際にあった少女惨殺事件をヒントに作られたそうな)と書くと、超シリアスな作風・・・かと思いきや、ベテラン警部補と部下の新人刑事をメインにユーモアもあるし、クライマックスにはアクションシーンもある。で、ラストのあのナレーション・・・(このブログはネタバレ禁止をモットーにしているので、詳細は秘密ということで)。

 素直に面白い映画です。後に同タイトルでテレビシリーズ化されたのも納得。「古い映画」、「モノクロ作品」だからといって観ないのは勿体ない一作。ミステリー・サスペンス映画ファン、ポリスアクションムービーファンは是非^^!

 

 さて、もう1本・・・知る人ぞ知る映画「夜歩く男」は→→→

①:「裸の町」と同じ年の公開

②:実話がモデル(名前は変えてあるけど)

③:ドキュメンタリータッチのサスペンス

 ・・・と幾つかの共通点あり!そんな流れでの紹介(笑)。

 

 ロサンゼルスで、職務質問をした警官が銃殺される事件が発生。だが、証拠が少なくロス市警の捜査は難航する。そんなある日、ひとりの容疑者が浮かび上がり・・・!?

 

 “ドキュメンタリータッチ”といっても、「裸の町」よりは外ロケ度合いが少ないし、こちらの方が遥かにシリアスなタッチ!ハナから観客には犯人が明かされているので、犯人サイドと警察サイド、双方の様子が描かれていく。

 見どころは何といってもロス市内の地下に埋設されている<地下水道>の場面(←巨大な迷路状態)。なんで地下水道が出てくるのかはネタバレになるので書けないのだけれど(あしからず)、これはセットじゃなくて実際の地下水道で撮影したそうだ。なんでも撮影当時、ロスの地下水道取水制限してた時期だったので管内は当然干上がっていた。そこでトラックで海水を運んで流し入れる事で再現したという。・・・例え1秒であったとしても、映像を撮るのって・・・本当に大変(笑)!この一連のシーンはオーソン・ウェルズ主演・監督による“大名作”「市民ケーン」(’41)を筆者に想起させた(と同時に「映画は光と影の芸術」という名言も思い出したよ)。

 今作で興味深いのは・・・監督としてアルフレッド・ワーカーの名前がクレジットされているのだけれど、一説には「ウィンチェスター銃’73」(’50)ほかで知られるアンソニー・マン監督が主要部分を演出した説もあるそうで。このテの話はハリウッドでは今も昔もよくあることですけど・・・こういう裏の話も含めて、映画って本当に奥が深くて面白いメディアだと思う^^。

 

 家にいる時間が長かった分、「替え玉殺人事件」(’51)という犯罪映画も観た。主演はロバート・ミッチャムとジェーン・ラッセル。そんな超メジャー、レジェンド・ハリウッド・スターの2人が出ているにもかかわらず、日本では劇場未公開!何故!?

 内容もサスペンスにアクション、当然ラブもある当時のハリウッドらし~い娯楽映画の佳作。でも、この邦題は・・・内容と照らし合わせると、ちょっと違うな。どうせ日本未公開だったんだから、もう少し考えたタイトルにして欲しかったわ。

 

  しばらく昔の犯罪映画とハードボイルドを書き続けてもいいけれど・・・当ブログを読まれる方も、かくいう筆者も同じ事していると飽きるので(笑)、次はジャンルを変えてかこうかな!?・・・こう書きつつ、また昔の犯罪映画書いたらゴメンなさいね。