<其の785>ドゥニ・ヴィルヌーヴのセンスが光る「ボーダーライン」

 ついに2022年も残り1か月(早ぇ~)!!今年は国内外ともに近現代史に記録されるバッドな1年になったね・・・。これでコロナ第8波とインフルがダブルで来たらたまらんわ!!

 そんな中・・・日本代表には深夜のスペイン戦、頑張って欲しいと祈るのみ!

 

 本題。来年公開予定の「DUNE╱デューン 砂の惑星」の後編も楽しみなドゥニ・ヴィルヌーヴ監督ですが、、、個人的には、ドゥニさんは当たり、外れがさほど大きくない監督だと思ってる。「灼熱の魂」や「プリズナーズ」はマジで大傑作!そんな彼の2015年度作品がアクション&サスペンス作品「ボーダーライン」(原題はスペイン語で「殺し屋」の意)。作風が淡々としてるので大アクションやらせると、さほどこちらが燃えない感じになっちゃうんだけど(笑)、これはハマってた^^!続編あるけどドゥニさんが関与してないので割愛。

 

 アメリカ・アリゾナ州ー。FBI捜査官ケイト(=エミリー・ブラント)らのチームは誘拐事件の容疑者宅に奇襲捜査を敢行。容疑者の1人を射殺し、家中の壁の中から無数の被害者達の遺体を発見する。程なく、彼女は国防総省のマット(=ジョシュ・ブローリン)のチームに加わり、誘拐事件の主犯と思われる麻薬カルテルの親玉マニュエル・ディアスの捜査に参加する。エルパソへ移動した一行に、マットのパートナーながら正体不明の男・アレハンドロ(=ベニシオ・デル・トロ)が合流。デルタフォースも加えたチームはメキシコのシウダー・フアレス市に行き、現地警察から麻薬カルテルの幹部でディアスとは兄弟のギレルモの身柄を引き取る。チームは彼をアメリカ本土へ移送すべく国境を目指すがー!?

 

 正直<国家権力VS麻薬組織>のハリウッド・アクションは、これまでにも多々あった設定で目新しさはない。だが今作は主人公(エミリー・ブラント)目線=観客目線で進行するミステリー要素(?)があって、これまでのパターンとは一線を画す。あんまり書くとネタバレするんで、これ以上は言及しないけど(めんご)!

 さっきの粗筋は<起承転結>の<承>の部分のちょいぐらいまで。この後、予想通りのアクションシーンが展開されるんだけど(笑)、引き渡されたギレルモを車に乗せて移動するシーンは、リドリー・スコットの「ブラックホーク・ダウン」を彷彿させる、この先なにが起こるかわからない不穏な“ジワジワ感”があって興奮させられる^^。

 今作でドゥニさんは、いつもの静謐な映像&淡々としたテンポで作品を進めながらも、見せるところと、見せないところ(粗筋以降に出てくる拷問シーンや銃撃戦等)をハッキリと描きわけてて、そこが巧いなぁと感心した(タランティーノの「レザボア・ドッグス」の宝石強盗シーンや北野武ソナチネ」のクライマックスの銃撃シーンと同様の手法)。これがマカロニウエスタンだったら、拷問シーンやドンパチが売りだから観客にこれでもかというぐらい見せまくるけどね(笑)。

 物語の肝となる謎の男・アレハンドロの正体&真の目的は・・・<驚愕の真相>なんてレベルまでには至ってないけど(笑)、エンタメ作品ではありながら、社会的な問題をも考えさせられる作品になってる。最後の締め方もグッド!ドゥニ・ヴィルヌーヴの作風が題材とうまくマッチした彼の代表作の1本。

 

 考えるに・・・ドゥニさんは作品に<外れ作品が少ない>という点では小津安二郎監督と共通し、<多ジャンルをこなす&淡々とした引いた視点の作風>においてはスタンリー・キューブリック監督とも共通していると思う。世界的巨匠2人(小津とキューブリック、どちらも自らの美学を徹底して画面設計していた)と共通点があるドゥニ・ヴィルヌーヴは近い将来・・・さらに大化けするんじゃないかしら!?あくまで個人的見解ですけど、誰も書いてないんで、あえて書いてみました(笑)!

 

 <どうでもいい追記>先日、ハインラインの原作を何故か日本で映画化した「夏への扉」を鑑賞。原作小説はSFファン(中でも日本人)が高く評価する名作なので(筆者も勿論読んでる)、スタッフ・キャストには大変申し訳ないんだけど・・・ある意味、冷や冷やしながら観たら・・・想像以上によく出来ててホッとした(注:あくまで筆者の想像以上ね)。本当なら、せっかく日本が映画化権を買ったのなら、あえて翻案にしないで、アニメで原作まんまやって欲しかったけどさ。まっ・・・いっか(笑)。

 

 あと年内2回はなんとか更新して・・・無事、平和な新年を迎えたいっす。