<其の772>東映実録路線への橋渡し「組織暴力」

 都内では桜も散って・・・ようやく春めいて参りました。世界が一刻も早く平和になるよう、ただ祈るのみ・・・。

 

 深作欣二監督の「仁義なき戦い」シリーズ(’73~)は「東映実録路線」を代表する大ヒットメジャー作品だが、東映の歴史を考えてみると・・・そもそもは<主力>だった「時代劇」が観客に呆れられ、そんな中「任侠映画」を製作したら大ヒット。いくつものシリーズが作られたが、そちらも当然長くなるとマンネリ化。またまた観客に飽きがきて・・・という流れの中、次に大当たりしたのが「実録路線」というのがザックリした流れになる訳ですが、実は「任侠映画」と「実録路線」の中間に位置する作品が1967年に公開された「組織暴力」!!東映東京撮影所で製作されていた「ギャング映画」の発展形として生まれた今作が、後の実録路線への橋渡し的意味合いを持つ作品になろうとはー当時、誰も想像していなかっただろう(笑)。東映のみならず日本映画史的にも重要と思われる作品をこのブログでも“記録”しておきます!

 

 東京・新宿ー。ここを縄張りとする「矢東組」と、関西のヤクザ組織をバックにつけた新興勢力の「赤松組」が一触即発状態に。そこで矢東組・若頭は抗争に備え、密輸拳銃を大量に仕入れようと画策中、何者かによって殺されてしまう。若頭の弟で組員の晋次(=千葉真一!!)は「赤松組」の犯行だと思い、復讐を誓う。関東ヤクザVS関西ヤクザの代理戦争の様相を帯び始める中、警視庁は浦上(=丹波哲郎!)を中心に組織壊滅を目指すのだが・・・!?

 

 2組のヤクザ組織に警視庁・・・と三つ巴の戦いが繰り広げられる今作。丹波が捜査で剛腕を揮う中、千葉ちゃんは復讐の鬼と化し、港町・横浜で密輸拳銃の元締めやってる渡辺文雄は完全なワルぶりを(他の東映作品同様)遺憾なく発揮!<特別出演>の鶴田浩二は「頭の方にちょっと出るだけなんだろうな~」と思って観てみると、これがまた・・・いいところでまたまた現れたりする訳よ(笑)!いや~・・・さすが“映画”だなぁ~(いい意味で:笑)。

 監督は佐藤純彌(公開当時の表記は「純弥」)。後年、「野性の証明」とか「敦煌」ほか大作映画で知られた御方(今回は某●●原人が出るトンデモ映画は見逃す)。この方も若い時分にはいろんな作品撮らされてます。「新幹線大爆破」とかも(笑)。映画は三者それぞれの様子と思惑をテンポよく活写。ズームレンズを駆使した乱闘シーンとか、後の実録映画のエッセンスが随所に見てとれる。

 後半、話はちょっと意外な展開になっていくところもGOOD!ラストは・・・書かないけど、ちょっと「アメリカン・ニューシネマ」の味わいも筆者には感じられた。個人的には千葉ちゃんと生前の兄貴との<兄弟2Sシーン>あたりがあれば、千葉ちゃんの復讐心が観客に感情移入できるようになったと思うし、捜査シーンでも警官とパトカーの数をもっと増やせば“大作感”が出たような気もするけど・・・撮影スケジュールと予算の関係があるから仕方ないか(笑)!

 ちなみに佐藤監督は同年「続 組織暴力」も作ってるけど、今作と直接つながっていない新たなお話なので割愛。更に3作目にして最終作「組織暴力 兄弟盃」(’69)は、ますます違うお話なのでこちらも割愛!

 

 どうでもいい話だけど・・・DVDのジャケットは当時のポスターを流用していると思うのだが(違ってたらメンゴ)、<特別出演>の鶴田浩二がメインの千葉真一丹波哲郎の写真よりデカくて、しかもセンターにある(笑)。

 そんな俳優陣をコラージュした写真の上には劇中出てくる<10大暴力事件>が箇条書きになっているのだが・・・最後の行「羽田空港拳銃密輸事件」とあるが、これは間違い!最後の舞台は「横浜港」であって「羽田空港」ではない!!・・・当初の脚本は羽田空港で、撮影の都合で急遽設定が変わったのかもしれないが、完成した本編を観ないでポスターを作成した事は明白。当時の宣伝スタッフのミスなのだろうか??(謎)