<其の724>知る人ぞ知る快作「地平線がぎらぎらっ」

 2020年も9月になりましたが・・・暑い日々が続いています(めっちゃ汗)。

 

 かつて大蔵貢ワンマン社長の下で“エログロ路線映画”を大量生産した「新東宝」ですが、勿論中には傑作、秀作、快作もあった訳でー大蔵退陣後の新東宝末期に作られたのが今回紹介する「地平線がぎらぎらっ」(’61)。ジェリー藤尾(懐っ)主演の犯罪映画の快作です。筆者も7、8年前ぐらいにその存在を知ったのだけど、既にDVDは廃版。先日、再発売されて、もうやく鑑賞出来た^^!長生きはするもんだ(笑)。

 

 都内にある刑務所。ここには様々な罪で逮捕された面々ー通称「カポネ」(=多々良純)、「教授」(=天知茂)、「色キチ」、「海坊主」に「バーテン」の5人が「27号室」に収監されていた。そんなある日、「マイト」と称する若者(=ジェリー藤尾)が6人目として同じ部屋に入ってくる。最年少でもお構いなく傍若無人に振る舞う「マイト」に堪忍袋の緒が切れた一同は自殺にみせかけて彼を殺そうとする。ところが「マイト」は殺した相手から奪った大量のダイヤモンドを隠している事が発覚。5人は彼からの“おこぼれ”にあずかろうと一計を案じる。「カポネ」は刑期満了で出所する「海坊主」に事の真相を確認させ、それが事実だと分かった為、ダイヤを手に入れるべく集団脱獄を計画するのだが・・・!?

 

 原作は藤原審爾。「秋津温泉」や「泥だらけの純情」、「赤い殺意」ほか・・・昭和の昔はこの先生の小説、よく映像化されてたな(懐)。監督の土居通芳と内田弘三が共同で脚色。タイトルは「マイト」がダイヤを埋めているポイントに由来する。内田氏は石井輝男監督の脚本も書いてた御方だ。

 まぁ、昔の映画だから現在視点でみれば、よくある話だけど・・・犯罪者たちを演じる昭和の俳優さんたちは皆、個性的でいいネ!平成生まれのつるっとした俳優さん達とは顔の造形が違って、どうみても悪人面(笑)。一同が「もし、何十億ものダイヤモンドを手にしたら・・・」と妄想するシーンではそれぞれの顔に、女や酒、高級車がベタに合成されて、ぎらぎらとした男性の欲望をストレートに表現してみせてくれる(今作はダイヤの輝きと人間の欲望を「ぎらぎら」という単語で表現してる訳よ)^^。

 決して大作ではないけれど、一同がそれぞれ何をして逮捕されたのかを描いた冒頭のテンポの良さ。集団脱獄の下りは市川崑岡本喜八ばりの編集でハラハラさせてくれる。そして脱獄後のダイヤを掘り出しに出かけた先で起こる展開の意外性ー。先程「現在視点でみれば、よくある話」と書いたけど、今作がその初期作である可能性もあり(誰か調べれくんろ)、いま観ても十分に楽しめる。・・・だから今回書いてるんだけどさ(笑)。

 主演のジェリー藤尾は、筆者世代だとタレントのイメージが強いけど(昔はよくご家族揃って番組に出ていたし)そもそもは歌手なので、劇中では主題歌も歌唱。「ぎらっぎら~🎵」のフレーズは、しばらくの間、筆者の脳内でリフレインされた(笑)。和太鼓も器用に叩き、当時のジェリーさんのファンサービスにもなっていた筈。さすがに昭和の映画なので、彼が語尾に「~だぜ!」とつけてまくしたてるのを懐かしく聞きましたわ^^。共演の天知茂は・・・ホント、当時はいろんな役演ってるね~!筆者の「土ワイ」の明智小五郎のイメージは大分薄れてきたな。多々良純は顔に傷があるから渾名が「カポネ」って・・・分かりやす過ぎ(笑)。男優のことばっかり書いたけど、万里昌代とか星輝美とか勿論、女優さんも出ている事を付記しておく。

 

 このブログの<お約束>なのでオチは書きませんから、気になる方は是非DVDで映画を観て下さい🎵今作公開後、半年を経ずして新東宝は倒産。でも作品が21世紀、令和のいまも残って観る事が出来るのは映画ファンとして幸せ。そうでなければ1961年には生まれてなかった筆者が観る事は出来なかったのだから。