<其の796>フランス映画「密告」、日本映画「ある脅迫」:殺人事件のないサスペンス映画

 遂にコロナ陽性になってしまいました。8波まで乗り切ったのに・・・(涙)。

 相変わらず、このブログ・・・時々入れない(怒)。でも、またまた今夜は“偶然”入る事が出来た!!理由は謎だけど・・・入れる時に書くしかないや(書きたい時に書けないなんて、めんどくさいブログになったな~)。

 

 ミステリー・サスペンス好きの筆者(映画も小説も^^)。今回大メジャーではないけれど、知る人ぞ知る作品を2本書いておこうかな、と。こうして少しでも“記録”しておかないと巨大な映画史の中に埋もれてしまいそうなので。

 

 1本目はおフランスの映画。「情婦マノン」(’48)や大傑作サスペンス「恐怖の報酬」(’53)。赤川次郎ではない、どんでん返しもの「悪魔のような女」(’54)等で知られるアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の初期作「密告」(’43)です。クルーゾーはヒッチコックと双璧をなす“サスペンス映画の巨匠”として知られ、今作はフランスがナチス・ドイツ占領下の中で手掛けた一作。

 

 フランスの小さな田舎町サン・ロバン。ここでは“カラス”と名乗る正体不明の人物が「医師ジェルマン(=ピエール・フレネー)は医長ヴォルゼ(=ピエール・ラルケ)の妻・ローラ(=ミシュリーヌ・フランセ)と不貞を働いている」という怪文書を町の住人に送り付けていた。人々の噂話に頭を悩ませるジェルマン。

 次第にカラスのターゲットはジェルマン以外にも拡大し、不治の病の男性にその病名を告げる文書が届いた時には、絶望した彼が自殺してしまう悲劇が起こる。これを契機に町の住民達は疑心暗鬼に陥り、犯人と疑われた女性へのバッシングが起こる。果たしてカラスとは誰なのか!?ジェルマンは犯人を突き止める為に行動を開始するー。

 

 この世で一番恐ろしい生き物は人間ーとはよく言われる事ですが、マイナス方向での集団心理・群集心理を描いたサスペンス作。ヒッチコック作品が<陽>だとしたら、明らかにクルーゾー作品は<陰>!クルーゾー作品の特徴のひとつ、ローキートーン(←モノクロ映像で明暗のコントラストをあまり強調せず、全体的に沈んだ重い感じの画調)は既に今作でも見られる。また、あらゆる撮影テクニックを駆使したヒッチコックと異なり、必要なアングルの画をカチッカチッと撮って、積み重ねていくのがクルーゾーだと個人的には思っている。同じサスペンスの大家ながら、正反対の2人だなぁ。

 今作でクルーゾーは監督と共同脚本を兼務。この作品が話題となって注目されたものの、その内容から激しく非難もされ、次作「犯罪河岸」(’47)までクルーゾーは映画を撮れなかったという。・・・やっぱり人間は怖いね!!「犯罪河岸」は殺人事件のあるミステリー作品でヴェネチア映画祭で監督賞を受賞してるけど、筆者的には今作の方がお薦め。人間という動物の恐ろしさに恐怖しつつ、犯人当てをしながら観るのがよろしいのではないかと^^。

 

 西洋の次は東洋・・・我が国・日本の作品。蔵原惟繕(くらはら・これよし)監督の日活映画「ある脅迫」(’60)です。上映時間66分という中篇だから、サクッと観られる点もGOOD!

 

 ある地方銀行直江津支店次長の滝田(=金子信雄)は本店に栄転する事が決まった。彼の妻は頭取の娘で、同じ銀行に勤める幼馴染の中池(=西村晃)の恋人だったが、それを奪い取る事で出世街道に乗ったのである。そんなある日、東京から来たヤクザ・熊木(=草薙幸次郎)が滝田の前に現れる。彼は滝田が過去に行った印鑑偽造の証拠を握っており、口止め料として300万円を要求。払えないのなら、勤めている支店に強盗に入って金を手に入れろと脅してきて・・・!?

 

 原作は多岐川恭直木賞を受賞した短編小説。それまで石原裕次郎小林旭の“日活アクション”を撮っていた蔵原惟繕初のサスペンス作品。筆者の世代的には蔵原監督作といえば「南極物語」(’83)になるんだけどさ(笑)。蔵原はあらゆるカメラアングル(真俯瞰もあり)とシャープな編集でサスペンスを盛り上げる。

 尺の短い映画なので、内容をどんどん書いていくとネタバレしていくから、なかなか難しいんだけど・・・短い分、ストーリーに無駄な部分がないから非常に密度の濃い内容。あっという展開もあるし、いろいろ書きたいけど・・・粗筋より先はネタバレするから書けない(めんご)!

 一方、俳優陣。金子信雄は本当にこういう役やると巧いよな~!金子自身がこういう人なんじゃないかと勘違いしてしまう程。実際は・・・知らんけど(笑)。西村晃も今作では気の弱~い、人のいい人物を好演。対照的な2人の演技合戦が愉しめます。映画は面白いのに、公開当時、3日で上映が打ち切られたのは・・・日活にしては、出演俳優が地味だったせいかも!?

 DVDのパッケージには「近年ハリウッドでのリメイクも検討された」と書かれてるけど・・・本当かよ!?「検討された」と過去形なのは、検討されたものの、ポシャったという事だと思うんだけど・・・いつ頃そんな話があったのか、妙に気になる・・・。