其の629:<番外編>「シン・ゴジラ」受賞をうけて少々感じたこと

 先日、日本アカデミー賞において「シン・ゴジラ」が「作品賞」ほかを受賞しました。「シン・ゴジラ」はその他多くの映画賞においても作品賞ほかを受賞していますが「怪獣映画」、「特撮映画」が日本アカデミー賞においても「作品賞」まで受賞するとは・・・!長いこと特撮映画を観てきた筆者も超ビックリ!これは“快挙”というしかないでしょう。そんな歴史を目の当たりにしたので、今回は“ちょっとだけ”記録としても書いておこうと思った次第・・・です。

 長いこと日本映画は「特撮映画」、「アニメーション」は庶民の人気を集め、ヒットもしていたけど・・・長い間大勢の評論家筋から黙殺され、低い評価に甘んじてきました。そんな中「アニメ」の方は宮崎駿監督作(いわゆる「宮崎アニメ」、「ジブリ作品」)が評価され、今では世界的にも有名になったのは皆さんもご存じでしょう。そんな中、21世紀にもなって「特撮映画」、「怪獣映画」が公に評価される日がようやく来たのです。

 話は少しそれますが・・・その昔、米・アカデミー賞でサイコ・サスペンス「羊たちの沈黙」が「作品賞」を受賞した時、筆者は驚くと同時に「あの世でヒッチコックが喜んでるだろうなぁ〜」と思いました。「サスペンス映画」がアカデミー作品賞を受賞する等、その当時は全く考えられなかったからです。ヒッチコック本人が存命中からこぼしていた事ですが、当時からヨーロッパとは異なり、アメリカでは庶民に人気はあったものの「サスペンス映画」、「スリラー映画」は一段低く見られていたからです。その為、ヒッチコックがイギリスからハリウッドに移った後、「海外特派員」を監督しようとした時、オファーした某メジャー俳優が出演を断ったという有名なエピソードが。もっとも完成した映画を観たその俳優は、出演しなかった事を後悔したそうですが・・・。アメリカの「サスペンス映画」を日本の「特撮映画」にあてはめると、全く同じ図式な訳。

 そういった意味では日本映画はようやく「特撮映画」も評価するようになった・・・との感慨も感じつつ(今作と「君の名は。」の2作品が大ヒットしたから無視できなかった事情もあろう)、まだまだ「喜劇(コメディー)映画」の地位は低いなぁ・・・と。なんせ日本人は“浪花節”が好きだからね〜。「笑い」より「泣ける」が上。作り手側としては、泣かせることより笑わせる事の方が難しいんだけど・・・。昨今の少女漫画の実写化が多いのは、一時期はやった「難病もの」の代わりになっている気がしなくもない。

 一部報道では東宝さんは「シン・ゴジラ2」を考えてはいるようですが(やっぱり)、「シン・ゴジラ」の成功にはCG技術の発展、緻密な脚本や演出の他、ゴジラを「3.11」ほか地震津波等の<震災、自然の驚異の象徴>として描いた事、「劇場版エヴァ」が長いこと製作されていないため庵野ファンがその渇きを求めて劇場に押し掛けた事、「怪獣映画」という事で親子連れも多かった事・・・等々が考えられる。東宝がこれらの要素を検証して、相当慎重に次をやらないと(おそらく庵野さんは次は受けないでしょ)せっかくの勢いが停滞する。「アニメ」は「君の名は。」と「この世界の片隅で」がヒット&高く評価されてるので・・・次に続く“志の高い”「特撮映画」を期待したい。


 ・・・こう考えていくと日本では「サスペンス映画」、「スリラー映画」もまだまだ評価低し。先日観た黒沢清監督の「クリーピー 偽りの隣人」は、筋に“ひねり”はないんだけど面白い映画だった。香川照之のあの怪演は・・・受賞は別としても助演男優賞にノミネートぐらいはされても良かったと思うなぁ!