其の564:やっと観た!!「生きていた男」

 ・・・久しぶりに風邪を引いてしまい、高熱が出るも人がいないので休むことなく普通に仕事してました(苦笑)。ようやく平熱に戻って頭が回るようになってきたところです・・・。世の中、連休なのにねぇ(とほほ)。


 先日、間もなく公開されるウィル・スミス最新作「フォーカス」を試写会で観ました。ウィル演じる天才詐欺師の恋と“仕事ぶり”を描いた娯楽作です。俗にいう「スティング」(’73・米)他に連なる“コン・ゲーム(詐欺対決)”で、それなりに楽しめたんだけど(ネタばれになるんで詳しくは書けんが)・・・目玉となるラストの仕事に、ちょっと<命がけの大勝負>感がなくて・・・その点で観ているこちらのハラハラドキドキがちょいと欠けた気が筆者はした(残念)。「ミステリー・サスペンスを観に行く」ーというよりは、あくまでエンターテイメント作を楽しむ、という姿勢で鑑賞した方がいいと思います。デートムービーとしてはお薦め(ウィル主演だしね)!


 さて、先程「スティング」のタイトルを出しましたが・・・これ、<どんでん返し映画好き>マニアの間では“初めて見る人は幸せ映画ベスト3”の内の1本!ちなみに残り2本はビリー・ワイルダーの「情婦」(’57・米)と「生きていた男」(’58・英)なのですが・・・中でも「生きていた男」はリバイバル上映もなければ、ビデオにもならなかった「幻の傑作」と呼ばれたミステリーで、筆者はこの作品の存在を知ってから(それはインターネットなどない大学時代にまで遡る)、このブログでも過去に何度か<ソフト化熱望>を書いていたのですが・・・やっと!ついに!DVDになった(狂喜乱舞)!!!筆者が即購入したことは書くまでもないでしょう^^。おっさんになるまで待った甲斐があったわ(笑)。さて、長年鑑賞を熱望した映画の出来は・・・?!勿論、未見の方が多いと思いますのでネタばれしないように書きますワ♪



 スペインの豪華な別荘で暮らす富豪キンバリー・プレスコット(=「イヴの総て」、「私は告白する」のアン・バクスター)。そんなある夜、晩餐会後の庭園に1人の男が現れた。問いただすと1年前に自動車事故で亡くなった彼女の兄・ワード(=リチャード・トッド)だと名乗る。彼女はすぐさま警察に連絡、邸を訪れた署長が男を尋問すると、彼が持っていた身分証明書やパスポートは勿論、右手首にある錨の刺青もまさしく兄・ワードのものだった!!混乱するキンバリー。翌朝から男は素性の知れぬ家政婦や執事を雇い入れる。叔父のチャンドラーに会わせれば、この男が兄ではないと証明してくれると信じていたキンバリーだったが、なんと叔父は久しぶりに甥に会ったとして彼との再会を喜んだ!!果たして男は本当に兄・ワードなのだろうか・・・!?



 ね、めちゃめちゃ面白そうでしょ?2015年現在の目で見ると、他の作品にもあるっちゃある設定なんだけど(あえてタイトルは書かない)、この粗筋読んだら<ミステリー好き&どんでん返し好き>な人は見ない訳にはいかんでしょう^^

 公開されたのが1958年ということで、見る人が観れば当時現役バリバリで活躍していたヒッチコックの影響がもろに観られる。ヒッチ自身もすでに老婦人が列車内でいなくなったのに、ヒロイン以外は「そんな人見ていない」と証言する今作の“逆パターン”の「バルカン超特急」(’38・英)を作っているし、突然現れて主人公をビビらす正体不明の家政婦や執事の描写は「レベッカ」(’40・米)を彷彿させる。その家政婦が持ってくる怪しいミルクや切り立った崖沿いの道をクルマでメッチャ飛ばして走る描写は「断崖」(’41・米)からの引用か・・・って、あんまり書くとオリジナルで書いた2人の脚本家や監督に怒られちゃうか(笑)

 監督はマイケル・アンダーソン(1920〜)。イギリス人です。大叔母はアメリカで最初のシェイクスピア女優、両親とも俳優という芸能一家の生まれ。1938年、映画界に入り、俳優・助監督となるも第二次世界大戦のため英国軍に従軍。終戦後、映画界に復帰し、デイビィッド・リーンやキャロル・リードの編集を務めたのち、1949年、名優ピーター・ユスティノフとの共同監督で初演出。主な監督作として「暁の出撃」(’55)や後にリメイクもされたブレイク作「八十日間世界一周」(’56)、「2300年未来への旅」(’76)あたりがメジャーなところ。ミステリー・サスペンス作としては「六年目の疑惑 」(’61)や「007」に始まる“スパイ映画”ブームの中の一作で筆者の好きなセンタ・バーガーも出てる(誰も聞いてない)「さらばベルリンの灯」(’66)等もあり。筆者の“世代的”には「ジョーズ」の亜流作「オルカ」(’77)もこのお方が撮ってる(笑)。・・・まぁ、こう見るとあんまり監督作に一貫性はないものの、今作「生きていた男」ではヒッチコックのサスペンス演出を要所要所に取り入れ(オープニングもモノクロ映像特有の光と影を巧く使って印象的)スタイリッシュな演出を見せている。

 で、<肝心のオチ>ですけど・・・これは筆者も「こう来たか!!」と(驚)。さすがに古い作品だし、後に作られたもので似たような趣向のものもちょいちょいあるので(余談だが、ほとんど同じ趣向をフランスの作家ロベール・トマが「罠」という作品で用いているそうな。筆者はこの情報、昔から知っていたので「生きていた男」を観るまでは、この「罠」もリサーチしないようにしていた)公開当時観た人たち程の衝撃はなかったけど、それでも面白かった!!まぁ、でも厳密にいえばつっこみどころもいっぱいあるけどね〜^^。現実的かそうでないかと問われたら、決してリアルではないけど・・・ミステリー・サスペンスとしては上出来の部類ですよ。現代の早いカットバック編集になれちゃうと「テンポが遅い」とかいう人もいるかもしれないけど、そこは1950年代の映画だから、筆者は当時の街並みや服装、クルマ(さすがに古い)とかも全て併せて愉しんだ次第。ミステリー好きな方は是非死ぬ前に一度は観て欲しいものです❤映画の最後に「結末はしゃべらないでね」と顔出しで語るダグラス・フェアバンクスJr.もナイス(このパターンの最初は先述の「情婦」が最初)!


 こうして、長年観たかった「生きていた男」も無事鑑賞したし(勿論「スティング」、「情婦」はとっくに観てる)、観たいと思ってた「封印映画」も大半は観たしな〜。なにを楽しみにして余生を過ごそうかしら?とりあえず目先の目標として「極道大戦争」の公開を楽しみに待つか(笑:それでいいのか?)