<其の791>これぞヴァーホーベン!!!「ベネデッタ」短評

 松本零士先生が亡くなられた。「宇宙戦艦ヤマト」、「銀河鉄道999」、「宇宙海賊キャプテンハーロック」他・・・筆者の少年時代に多大な影響を与えた方のおひとり。「ヤマト」で日本のアニメブームを起こした功績は、永久に日本カルチャー史に記録される事だろう。本当に悲しい・・・。心より、ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 今年はいまのところ、月2回ペースで映画館に行けてます♪で、先日「氷の微笑」や「ロボコップ」他で知られるポール・ヴァーホーベン監督最新作「ベネデッタ」(’21:フランス=オランダ)を鑑賞。一昨年のカンヌ国際映画祭で上映されたのに日本公開が全然決まらなくって、マジで海外版ソフトを買おうかと考えてたところ、ようやく公開(嬉)!中世ヨーロッパで同性愛主義として裁判にかけられた実在の修道女の伝記映画(脚色あり)・・・って、流石、ヴァ―ホーベン!!映画は絶賛上映中につき、さくっと書きます^^。勿論、内容が内容だけに<18禁>よ(笑)。

 

 17世紀のイタリア・ペシアの町(現在のトスカーナ地方)。裕福な家の娘、ベネデッタ・カルリーニは6歳で両親に連れられテアティノ修道院に入る。

 18年後、成人したベネデッタ(=演じるのはベルギー出身のヴィルジニー・エフィラ)は、修道院に逃げてきた若い女性バルトロメアを助ける。彼女の影響で、次第に性の歓びに目覚めたベネデッタはバルトロメアと深い関係になっていく。そんなある夜、キリストの夢を見たベネデッタに聖痕が現れ、聖人として人々から崇められるように。司祭の前でも奇跡が起きたことから彼女は新たな修道院長に任命されるが、前修道院長(=シャーロット・ランプリング)の娘が彼女に反旗を翻す・・・!!

 

 歴史上初、女性同士の同性愛裁判記録を書籍化した「ルネサンス修道女物語ー聖と性のミクロストリア」を読んだヴァーホーベンが映画化を決意(彼らしい^^)。共同で脚本も担当している。いろんな意味で激しいヒロインが主人公なのは、いかにもヴァーホーベン印だし、彼が中世ヨーロッパを舞台にした作品は「グレート・ウォリアーズ/欲望の剣」(’85)以来。凶悪な騎士&ペストも今作と共通する要素。

 詳しくは書けないけど・・・ハードな主人公(マジで実在してたのが凄い)とキリスト教教会を舞台にタブー、エロ(百合)、バイオレンス(想像よりは少なめ)が混在する濃縮100%ヴァ―ホーベンの作品。80歳を越えても、こんな作品を作る彼にはもう尊敬しかない(笑)。前作の「エル ELLE」(’16)より、こちらの方が筆者は遥かに面白かった^^。

 <キリスト教教会>といえば→→→ハリウッド時代にシュワちゃん主演で十字軍の実態を暴く作品を企画したものの頓挫した過去を考えると、規模は大幅縮小ながらヴァ―ホーベン的にはその仇討ち的な作品・・・とも考えられる。本人がどう言うかはわからないけど(笑)。その昔は修道院に入るのに多額のお金が要求された事は知らなかったな~。神に仕えているとはいえ、人間が絡めば、やっぱり人助けより経営が優先されるのね。勉強になりました^^。

 中世の雰囲気を求めてイタリアやフランスでロケされているので、そんなに低予算ではなかったと思うけど、大半が修道院とその前の広場近辺しか映像に出てこないのが残念!ヴァ―ホーベン御大にもっともっと資金を与えてあげられれば、中世の街の様子が更に広範囲で描かれて、より作品に広がりが出て気もするけどね・・・致し方なし。エロエロなベネデッタさんがどういう運命を辿るのかは、映画を観てのお楽しみ❤

 

 筆者の心配は、今作がヴァーホーベンの遺作になってしまうこと!もっともっと作品を観たいので、ヨーロッパの映画関係者は一刻も早く彼が新作を撮れるよう援助して欲しいと思います。

 加えて都内の「ベネデッタ」上映館数が・・・少ないね~(嘆)!中には1日1回しか上映しないところも(泣)。せっかくのヴァーホーベン作品なのに・・・いくら18禁映画とはいえ、この事実はファンとして悲しかったわ。