<其の768>某大ヒット映画のルーツ「恐怖の足跡」

 予告していた通り・・・やっぱり間が空いてしまいました(苦笑)。それにしてもオミクロン株、凄すぎ!!

 

 今回は「傑作!」というよりは<映画史を振り返る>という観点でアメリカ映画「恐怖の足跡」(’61)を紹介します。映画1本1本をそれぞれ<点>として観るのもいいのだけれど、その点と点をつないで<線>として観ると、より面白いと思うので^^。今作はメジャーではないけれど、その衝撃的なオチや登場人物のビジュアルで後世の作品に多大な影響を与えた<カルト映画>です。

 

 あるアメリカの田舎町ー。若い男性2人が乗る車と、若い女性3人の車がスピード競争をする事になった。ところが狭い橋の上で女性達の車がハンドル操作を誤り、川に転落してしまう。数時間後、助手席にいたメアリーは泥まみれで砂州に現れた・・・。

 奇跡の生還から程なく、彼女は町を出て、ユタ州ソルトレイクシティーで教会のオルガン奏者として新しい生活を開始する。ところが彼女の前に時折、青白い顔をした怪紳士が姿を見せるようになって・・・!?

 ※メジャーな方は出ていないので、俳優名は割愛!

 

 製作・監督・出演(怪紳士役!)を務めたのはハーク・ハーヴェイ。なんでもこの方、俳優経験もありつつ、主に教育映画や産業映画を演出していた御方。劇中に出てくる「ソルトエアー」(=ソルトレイクシティーにあるロシア風の建物の娯楽施設)の廃墟を見た際、ここを使って劇映画を撮りたいと思った事が企画の始まり。そこからストーリーを練りつつ、資金を集め(勿論、低予算)、超短期間(休日&本職の仕事を終えた後の時間)で撮影したという。勿論、事前に「ソルトエアー」で撮影出来る許可なり確認なりを取った上で製作を進めたと思うけど、もし許可が出なかったら、どうするつもりだったんだろう・・・と一瞬、筆者は考えてしまった(苦笑:職業病だな)。

 生憎、映画は<21世紀の現在視点>で観ると、ストーリーにつっこみどころは多いし、恐怖演出もベタなので「いま観ても面白い!」とは筆者は書かないけど、タイトルバックの文字の出し方や「ソルトエアー」でロケした部分の自然光の使い方には感心したわ。

 タイトルに「某大ヒット映画のルーツ」と掲げましたが(当時、その衝撃的な最後が世界中で話題になった)同じオチの映画、筆者も3、4本は軽く思い出せるんだけど、タイトル書いただけでネタバレ!!・・・なので書きません。それだけ今作が後の数々の作品に影響を与えた証拠ともいえそう。ジョージ・A・ロメロは「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を演出する際、今作の怪紳士達の“メーク”を真似て“ゾンビメイク”を作り上げたそうだが、個人的には「バットマン」の「ジョーカー」にも似ている気が・・・(筆者だけ?)。はたまた、これも今作の影響か!?(笑)

 

 当時、完成披露試写を行ったものの、観客のリアクション鈍い&権利を買った会社がすぐ倒産して、ほとんど上映されずに終わった不幸な作品だったようだが(ハーヴェイ唯一の長編劇映画らしい)、こうして世界映画史に作品名を残す事となった。「どんでん返し」好きな方、「ゾンビ映画」のファンの方、そして興味の湧いた方は是非ご覧下さい♪