<其の763>エドガー・ライトの新境地「ラストナイト・イン・ソーホー」寸評

 2021(令和3)年も残り半月・・・。コロナ渦なのに、めっちゃ多忙です。

 

 そんな中、身体に鞭打って観に行ったのがイギリス映画「ラストナイト・イン・ソーホー」。「ショーン・オブ・ザ・デッド」(’04)、「ホットファズー俺たちスーパーポリスメン!ー」(’07)、「ベイビー・ドライバー」(’17)他で知られるエドガー・ライト監督最新作です。今作はパンフ作られていて良かった(笑)。筆者は彼の監督作はほとんどリアルタイムで観ているのだけれど・・・今回は特に面白かった^^!前作「ベイビー~」も面白かったけど、こちらの方が筆者の好みかも。絶賛上映中につき、これまで同様“さくっ”と書きマス。

 

 現代のイギリス。片田舎に住むファッション・デザイナー志望のエロイーズ(=「ジョジョ・ラビット」のトーマシン・マッケンジー)は「ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション」を受験して合格。夢を叶える為、ロンドンのソーホー地区にある学校の寮に入った。彼女には自殺した母親が鏡を通して“見える”能力があった。

 大人しいエロイーズは寮の仲間達と馴染めず、早々に孤立。そこで古い屋敷の一室に下宿する事に。その夜、ベッドに入った彼女は、60年代半ばのロンドンで歌手を夢見て人気クラブに自らを売り込むサンディ(=「スプリット」、「ミスター・ガラス」のアニャ・テイラー=ジョイ)の夢を見る。サンディに憧れるようになったエロイーズは毎晩彼女の夢を見るようになる。だが、彼女とサンディは徐々に現実世界でもシンクロしていくようになって・・・!?

 

 これまで男性を主人公にしてゾンビもの(「ショーン・オブ・ザ・デッド」)、ポリスアクション(「ホットファズー俺たちスーパーポリスメン!ー」)、映画&ゲーム(「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」)・・・と様々なジャンルを手掛けてきたエドガーさんが今回手掛けたのは女子を主人公(しかもWヒロイン)にしたサイコ・ホラー!!エドガーさんもタランティーノ同様、“映画オタク”なのは有名は話だけれど、今回もヒッチコックの「フレンジー」や「反撥」、英国製スリラー(「血を吸うカメラ」、「ダーリング」他)にダリオ・アルジェント他のジャッロ、はたまたデ・パルマ作品まで幅広く作品に投入!地方から大都会に憧れて上京するも“都会の罠”に捕らわれて転落していくZ世代女子の生き地獄を描き出す。

 冒頭、映画はミュージカル調でスタート。“ポップでカラフルな女の子映画”なのかしら・・・と思いきや、ナイト・クラブのシーンで煌びやかな映像(←大都会の歓楽街が持つ特有のゴージャスさとデンジャラスな雰囲気がムンムン)を見せた上で、そこが世にも恐ろしい場所へと変貌していく展開は・・・正直よくあるパターンだけど、華麗な映像美と絶妙な編集(ダンスをするサンディとエロイーズのカットバックの素晴らしさ)、そして「恋のダウンタウン」、「愛なき世界」ほか60年代ヒット曲の選曲の良さ(しかも、流れる曲にはそのシーンに合わせた歌詞の曲をチョイス)!映像が素晴らしくて、映画の肝である編集も適切。そして流れる音楽の良さ・・・<映画>として最高じゃない!俳優陣も若手女優2人の他、テレンス・スタンプやダイアナ・リグほか出演していて、しっかり脇を固めてるし♪

 そして後半は・・・ネタばれになるので詳しく書けないのが残念・・・観客の想像の上をいくストーリーに発展!!クライマックスなんて、デ・パルマ作品をも凌駕する凄すぎる演出にマスクをしていたけど思わず爆笑したよ!勿論、他のお客さんは誰も笑わず、固唾を飲んで見守っていたけれど(苦笑)。今作でエドガー・ライトは演出の幅を大きく広げたと思う。これからは時々、女性が主人公の作品もやってほしいね。彼の次回作はスパークスドキュメンタリー映画のようだけど、その次の作品に超期待!!

 

 ・・・コロナのせいで去年、今年は情けないぐらい本数観ていないんだけど、年の終わりにこういう面白い映画が観られて良かった^^!あと年内に無理矢理でも「マトリックス」観て、年の総括書いて・・・。年内の当ブログの流れが見えました(笑)。