<其の751>アナログ時代の懐かしき社会派サスペンス「ジャッカルの日」

 齢50も過ぎたら・・・小中学校時代の夢を見る事が以前と比べて遥かに多くなったような気がする。何年も忘れていた同級生とかが出てきたり(笑)。人は年をとると精神的に退行していくという説は本当かもしれない(実感)。それ故か、新作映画も観るけれど、その昔に見たー古い映画を観直す事も増えたわけ(ノスタルジー??)。

 そこで今回取り上げる作品は→→→「ジャッカルの日」(’73 )!!フレデリック・フォーサイスのベストセラー小説の映画化にして、名作で申し訳ないが・・・中高年以上の方々は懐かしいでしょ?!大して映画に詳しくない若い方々は知らないと思う(苦笑)。監督のフレッド・ジンネマンは「真昼の決闘」、「地上より永遠に」や「わが命つきるとも」他、世界映画史に残る作品を数々演出した人なのに、最近語られないから、ここで書いて残す事にも意味はあるだろう♪

 

 1960年代のフランスー。アルジェリアの独立を認めた事で恨みを買ったシャルル・ド・ゴール大統領。一部の軍人やアルジェへ入植したフランス人の末裔たちは秘密軍事組織(=OAS)を結成、彼の暗殺を企てるも、ことごとく失敗に終わっていた。そこで国外逃亡し、オーストリアに潜伏していたOASの幹部達は組織外で、プロの殺し屋を雇う事を決める。その結果、選ばれたのが“ジャッカル(=エドワード・フォックス)”と呼ばれる一人の男。

 OASがジャッカルに支払う高額な暗殺依頼料を工面する為、フランス各地で銀行を襲撃したり、イタリア・ローマへ移動して以来、全く動きをみせないOAS幹部達を怪しんだフランス当局は彼らがジャッカルと呼ばれる殺し屋を雇い、ド・ゴール大統領暗殺を計画している事実を突き止める。そこで内務大臣以下、各治安組織のトップ達は捜査をパリ地域圏司法警察局のルベル警視(=ミシェル・ロンスダール)へ一任。ジャッカルとルベルら警察との頭脳戦が開始されたー!!

 

 どう、面白そうでしょ??歴史的背景は本当だし、ド・ゴールは生涯に30回以上暗殺未遂事件があったというからリアリティー満点な設定!そんな中で超一流スナイパー(←あえて「ゴルゴ13」風に書いてます^^)と頭脳明晰な警視との死闘が繰り広げられる。

 何といっても映画の見所は着々とプランを練って準備するジャッカルの描写。名を変え、髪の色を変え、自らデザインした仕込銃を作り、木に吊るしたスイカを撃って銃の微調整をしたり・・・セミ・ドキュメントタッチの演出。でも、ドンパチ的なアクションシーンは大してないので過剰な期待はしないように❤。偽造パスポートをその筋のプロに発注する下りは・・・少年時代、映画でこんなシーンは山ほど観たなー(懐かしい)^^。出てくるフランス人もイタリア人も全員英語を話しているのは、ちょっと残念だったが(笑:映画あるある)。

 イタリアとフランスをまたにかけて徐々にド・ゴールへの距離を詰めていくジャッカルとそんな彼を追うルベル達。観ているこちら側はただただ双方を見つめるのみ(お話も「ん?この展開は何で??」と思ったら、ちゃんと先への伏線になってるとか、想像していた程ストレートな流れでもない)。ちょっと歴史を知っていればオチは最初から分かってるんだけど・・・それでもハラハラするのが、今作の素晴らしさ(笑)♪

 ジャッカル役のエドワード・フォックスは「ゴルゴ13」程のオーラはない、一見優男なんだけど(笑)、段々<プロ中のプロ>に見えてくる(彼はこれが出世作)。対するミシェル・ロンスダールも野暮ったい見た目に反してメチャ優秀というルベル警視役でいい味出してる。

 街のそこら中に監視カメラがつけられたデジタル社会の現代では、劇中よりもっと早くジャッカルは捕捉されるとは思うけど(苦笑:最終的なオチは書かないので自分の目でお確かめ下さい)、このアナログさがその当時を知る筆者には懐かしいし、愛おしいんだよね。今ならジャッカルがパソコン駆使して、宮殿内に侵入した上で、隠しておいた小型銃をスマホ操作して撃つとか映画の中では出来そうじゃない。それはそれでありだけど、まだそんな便利じゃない時代で行われたドラマの方がサスペンスフルで・・・筆者は好きかな~^^。

 

 余談。後年作られたマイケル・ケイトン・ジョーンズ監督作「ジャッカル」(’97)は、時代設定変更&大幅スケールアップにド・ゴールも関係なしというリメイク的作品。暗殺者役がブルース・ウィリスで、彼をリチャード・ギアが追うのだけれど・・・劇中、ブルース・ウィリスが何回か変装するんだけど、それが毎回バレバレの変装で映画館で笑いが起きた事を今でも覚えている。これを観直す予定は・・・ない!