<其の745>非「007」リーマンスパイ「国際諜報局」

 今年の梅雨入りは例年より大分早いようで・・・。あ~、憂鬱だわ(雨嫌いの身としては)。

 

  さて、今回紹介するのは東映任侠ヤクザ映画「博奕打ち・総長賭博」(’68)です・・・って、冗談です!任侠映画なのに任侠道を否定する名作・・・このブログで書くのはちょっと気が引ける(苦笑)。

 では本当の本題。個人的な事で恐縮ですが、小学生の頃は「007」や「ルパン三世」のような大人に憧れたものだ。「THE自由人」って感じで(笑:その「007」も「ルパン」も現在まで製作され続けてるのが凄い)^^。コロナ渦で延期された「007」の新作も今年10月に公開予定だが・・・大丈夫か??その「007」(最初のボンドは勿論、ショーン・コネリーよ)のヒット&シリーズ化によって、便乗した亜流作品やパロディー作品が山ほど製作されましたが、イギリス映画「国際諜報局」(’64)は「寒い国から帰ったスパイ」(米・’65)と並ぶアンチ「007」の渋~い&リアルなスパイスリラー映画。書くまでもなく筆者は「スパイ映画」も好きなの❤本家「007」シリーズやトムさんの「ミッション・インポッシブル」シリーズのような派手なアクションやセクシー場面はありません^^

 

 東西冷戦下のイギリス・ロンドンー。国内の著名な科学者・ラドクリフ博士が何者かに誘拐され、護衛の諜報員が殺害された。この事態を受けて陸軍軍曹ハリー・パーマー(=マイケル・ケイン)はロス大佐の指示で、ダルビー少佐率いる情報部に派遣される。どうやら事件には国際的営利誘拐組織が絡んでいるらしい。そこでパーマーらは黒幕と思われる男と接触を図る事にするのだが・・・。捜査の中で浮上した「イプクレス(Ipcress)」なる言葉の意味とは?!

 

 原作はレン・デイトンの小説「イプクレス・ファイル(映画の原題も同じ)」。主人公はぶっとい黒眼鏡かけてるんだけど、これは「オースティン・パワーズ」シリーズのネタにされている(笑)。なんといっても今作の凄いところは初期「007」のプロデューサーのひとり、ハリー・サルツマンが「007」やりながら、アンチ「007」として書かれた小説を気に入って今作も手掛けている事(しかも音楽担当はこれまた「007」やってるジョン・バリーを起用してる)!本家の「007」やってる彼の立場では普通、こういう事は・・・しないよね(笑)。こうして今作は派手なアクションなし、秘密兵器なし、過剰なお色気なしとなった。

 加えて驚くべき事:原作小説にはー主人公の名前がない!!ハリー・パーマーという名前は映画のスタッフが考えたんですね~。近年はあまり語られないけど、このメジャーな名前が映画発信だったとは・・・知る人は知ってるトリビア

 主演はマイケル・ケイン(当時はまだ売り出し中:若いっ)!ジョーク好きで、グルメ(自らスーパーで買い物)でクラシック音楽好き(モーツァルトのファン)のリア充に重きをおきつつ飄々としててヒーローっぽくない主人公にピッタリ!マイケルさんはサスペンス、スリラー系の映画に多く出演。このジャンルが好きとみた^^。ちなみに彼の「自炊シーン」は顔のうつらないカットは、料理が得意な原作者レン・デイトンがやってるんだって。すげー協力的な人だ(笑)。

 監督はシドニー・J・ヒューリー。当時売り出し中・・・って、ハリー・サルツマンプロデューサーは、どんだけ売り出し中の人にオファーしとるんや^^。主人公の殴り合いとかのシーンもあえて車の運転席越しに撮るとか非「007」、アンチ・ボンドを意識した画作りをしている。ネタバレするので詳細は書けないけど、主人公が敵に洗脳されるシーンは、いま観るとどれだけ効果があるのかよく分からないけど、ユニークな映像で面白かった。今作が注目されるきっかけとなった訳ですが・・・個人的には彼の「アイアン・イーグル」(’85)が好き。「スーパーマン4/最強の敵」(’87)の出来については・・・ノーコメント(苦笑)。

 

 今作のヒットでこちらもシリーズ化された訳ですが(映画3本、テレビムービー2本の計5作。ハリー・パーマー役はずっとマイケル・ケイン)・・・映画3作目となる「10億ドルの頭脳」(’67)の監督は、なんとケン・ラッセル!!その後に演出した作品を考えると・・・ホントにホントに「人に歴史あり」だ^^。