<其の702>ニヒリズム漂う異色ヤクザ映画「乾いた花」

 今頃、受賞の取材には散々行った「万引き家族」を観ました。あんまりヒット&高評価の映画はリアルタイムで観ると、こちらの感想も引っ張られそうだから・・・。おまけに、このタイトルなんとかならんのか、とずっと思ってたし(笑)。

 感想は率直に"いい映画"!"面白い映画"じゃなくて"いい映画"としか言いようがない。現代ニッポンの社会問題を交えつつ、これまでもテーマにしてきた<家族とは何か?>を描いた是枝監督の集大成的作品だなと思った。加えて、わび・さびの世界だなーと。一家の描写がもろ昭和、なのも良かった^^。俳優陣は樹木希林さんは言うまでもなく、安藤桃子リリー・フランキーの演技は秀逸!数々の受賞も素直に納得。子役の2人も良かった~!「生みの親より育ての親」を実感する。

 

 同じく大ヒット&高評価だった「ボヘミアン・ラプソディ」も良かったけど・・・筆者は周囲の人ほどは絶賛しない。個人的にはフレディ・マーキュリー役がもっと本人に似ていたら、更に良かった(ラミ・マレックのファンの方ごめんね)。

 

 さて、ようやく今回の本題・・・日本映画「乾いた花」(’64)である。ハリウッドの全盛期が1950年代であったように、日本映画も同じく黄金時代を過ぎて1960年から<松竹ヌーヴェル・ヴァーグ>が起こる等(でも、ほんの一瞬ね)、<変革期>にあった。篠田正浩監督もその<松竹ヌーヴェル・ヴァーグ>メンバーの1人!その篠田監督が石原慎太郎の同名短編小説を映像化(で、石原氏も今作を誉めた)。ちなみに篠田監督には「乾いた湖」(’60)という似たタイトルの映画があるので間違えないでネ🎵

 

 3年の刑期を終えてヤクザの村木(=池部良)は出所した。組事務所も、昔の女も何も変わっていなかったものの、彼にとっては退屈で仕方がない。しかも抗争の為に手を汚したにもかかわらず、既に手打ちになっていて、手柄にさえならなかった。そんなある夜。村木が組の賭場に顔を出した時、場にそぐわない雰囲気の若い女・冴子(=加賀まりこ)の姿を目にする。冴子は可愛らしい顔立ちながら堂々と勝負して、場をさらっていく。興味を抱いた村木が子分に尋ねたところ、彼女の素性も誰のツテなのかも分からない一切謎の女性だった。

 後日、賭場の後に立ち寄った屋台で村木は冴子と偶然顔を合わせる。より大きな賭けがしたいと望む冴子に懇願され、村木はよその組が取り仕切る賭場に彼女を連れて行く。高級スポーツカーに乗り、豊かな暮らしを思わせる彼女の心中にも、晴らすことの出来ない退屈と、生きることへの疑問が自分と似ていると思う村木だったが・・・。

 

 今作は配給する松竹が「中身が難解」だとして8か月公開を見送り&おまけに映倫が「反社会的」だとして「成人映画」に指定したいわくつき。ヌードとかないものの、花札賭博の一連を細かく映像化したところが引っ掛かったのかしら??

 「毎日が退屈だから悪いことやる」・・・という行動原理は若き石原慎太郎の数々の小説に描かれた事だが(生憎、原作小説は筆者未読)、この映画では既に退屈しのぎのワルを越えて生きる意味を見出せない<虚無感>に支配された男女がメインとなっている。ここまでニヒルなヤクザは珍しい(時代劇なら「大菩薩峠」の主人公とかいたけどさ)。大スター・池部良、堂々の演技!

 特筆すべきは正体不明の女性を演じた加賀まりこ。同年公開の「月曜日のユカ」同様、その小悪魔的キャラが魅力的(撮影当時二十歳前後)!そんな彼女ゆえに大分年上のヤクザ(池部)が妙に心惹かれたのも理解できる。他に若き竹脇無我がちょっと出てたり、アニソンの大御所・ささきいさおがチンピラ役で出演してる(驚)!!アニメファンの方はその辺りも要注目ということで❤

 モノクロながら陰影を誇張した映像にシャープな編集。主人公の夢のシーンでは、ソラリゼーションを使用する等、若き日の篠田正浩の才気が見て取れる。クライマックスの●●シーン(すまん、書くとネタバレしちゃう)では現実音を一切排して延々オペラだけで通したところも素晴らしい(この映画のフィルム持ってるフランシス・フォード・コッポラが「ゴッドファーザー」の3作目で、この演出を取り入れてるという説あり)。やや残念なのは・・・ちょいちょい舞台となる横浜のシーンが出てくるものの、横浜出身の筆者的には、あまり横浜の匂いが感じないのが惜しまれた。それも狙いなのかもしれんが^^。

 

 映画の締め方も(ネタバレになるから、これも書けない!)・・・観客に余韻を残すあの終わり方で良かったと思う。全部ハッキリさせていい映画と、そうじゃない映画があるからね~。

 

 <どうでもいい追記>劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」がパチンコ化!!早速、やったんだけど・・・なんとか3回大当たり引けた^^。出玉が少ないライトミドルだけに、なかなか大勝ちは難しそうだけど、映画を再構成した演出があれこれ見られて良かったよ。

 この「逆シャア」つながりで、来年から公開される「閃光のハサウェイ」もいずれパチンコになったりして!?