其の333:フリーセックスじゃないスウェーデン製復讐劇

 先日、タランティーノの新作「イングロリアス・バスターズ」のアメリカ本国版予告編を観る機会があった(マスコミにいると、こういう利点もあるのだよ♪ちなみに日本公開は10月予定)。第2次大戦もので主演はブラッド・ピット!予告ではブラピ演じる将校が部下たちに向かって「ナチをぶち殺せ!」とシャウトしてた(笑)。初上映されたカンヌでの評判は芳しくなかったようだが(加えて上映時間2時間50分!!)またまたコアなオタクぶりが観られそうなので楽しみに待ちましょう^^
 それで、ふと唐突に思い出したのが彼が「キル・ビル」2部作で引用したスウェーデン映画「ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ〜血まみれの天使〜」(’74)。主演は日本映画(中島貞夫鈴木則文監督!!)にも出演したクリスティーナ・リンドバーグ!「キル・ビル」でダリル・ハンナ(「スプラッシュ」、「ブレードランナー」)が演じた隻眼の女殺し屋エル・ドライヴァーの元ネタです。現在では日本でもDVDで観られますが<18禁>なので未成年の読者はご注意!!

 お話は幼い時にレイプされ、ショックで口が聞けなくなったものの美しく成長した田舎娘フリッガ(=もちクリスティーナよん)が、ひょんなことから行きずりの伊達男トニーにナンパされて、そのまま監禁状態に。ヘロイン漬けにされた挙句、トニーが経営する組織の売春婦にさせられる。ところが最初の客に粗相したため、罰としてトニーに左目を潰されてしまう!!おまけにフリッガが家出したと思った両親は自殺!地獄のどん底に落とされた彼女は<復讐>を決意する・・・!!

 まぁ、復讐ものの典型的パターンではあるものの悲惨極まりない酷い話ですわ。人間のダークサイドが容赦なく描かれる石井隆orマルキ・ド・サドの世界(苦笑)。アクションもあるものの、この映画・・・一応<ハードコア(=本番シーンのあるポルノ)>なんだよね。ゆえに<18禁>!さすが70年代のスウェーデン^^日本は暴力描写の規制は緩いけどエロは厳しいんで(勿論、日本版DVDは全てボカシがかかっている事は言うまでもない)。タランティーノは「キル・ビル」クランクイン前、まんま映ってる「アメリカ版」をダリル・ハンナに見せたところ、ハードコアを初めて観た彼女はえらくショックを受けたという。これについて後日、タラは「タクシードライバーの主人公のような事をしてしまったよ」と反省したそうだ(爆笑:見せる前に考えろよ)。

 正直、この映画、傑作ではない(キッパリ)。脚本はご都合主義だし、つっこみ所満載(書いていくときりがないので割愛)!主人公は復讐のため、貯めた金で「空手」に「射撃(=先生はなんと軍人!あちらでは金払うと雇えるのか?)」、「車の運転」まで習うのだが・・・どうみてもレース用高等テク!!リベンジには関係ない気が(苦笑)。

 なんでも監督(どうせ誰も知らないので割愛)は自費を投じたデビュー作がコケた為、その借金を返すため「低予算で手っ取り早く稼げる映画」として今作を発案したそうだ(製作、脚本もこの人)。残酷描写&女の裸にアクション!本も演出も下手だが男性客を取り込む要素は心得ていたようだ(笑)。そんなアクション場面だが・・・ヒロインがショットガンで自分を買った客を次々と射殺して回るものの(低予算ゆえ客3人)、何故か必ずスローモーションになる(笑:ペキンパーか^^)!あと後半のカーアクションも・・・全く意味なし(で当然、爆発)。単なる尺伸ばしとちゃうんか(苦笑)。勿論、最後はトニーとのバトルとなるわけだが、マカロニウエスタンの「ガンマン大連合」あるいは北野武の「BROTHER」を思い出したがセルジオ・コルブッチもたけしも絶対観てないだろう。

 「演出は緩慢だけど話は超ハード」な作品ながらクリスティーナ・リンドバーグは現場で相当頑張ったそうだ(余談ながら今作は日本映画に出た翌年の製作)。ヘロ中のため、自分でヘロインを注射するシーンでは本当に針を腕に刺したし(中味は食塩水)、ショットガンを撃つ練習を屋外でしていたため逮捕される事態にも(笑:でも「本番シーン」は他作品からの流用だって。夢壊してすまん)。この彼女のしているアイパッチ(=心理状況に合わせて色を変えている。ルーク・スカイウォーカーの衣装の変化と同じ)がタラのつぼだったようで。ダリル・ハンナのアイパッチも勿論コロコロ変化します^^

 つらつら欠点を多々書いたけど<小道具(アイパッチ)の使い方>をはじめ、いい所も色々あり。ラストの音楽の使い方は印象的だし、中でもトニーがフリッガの目をメスで刺すところは知り合いの医者に頼んで本物の少女の遺体を使用したと言われている。本編では微妙に処理されているものの「DVD特典」にはマジで切るシーンが入ってた(げげっ:そのテのマニアの方はどうぞお楽しみに)!!この監督の本物志向は素晴らしい・・・って、今更フォローしても遅いか(笑)。


 タランティーノが新作で、どんなマニアックな映画を引用してくるのか(タイトルはイタリア映画ー邦題「地獄のバスターズ」から)心待ちにする筆者であった(あとサントラね♪)。・・・やっと文章がフリとつながった^^
お後がよろしいようで。