其の657:「ハードコア」!「絞殺魔」!!

 今年の桜の開花は早いでんな!4月になってないのに、もう満開(苦笑)。今年も道に咲く桜を移動中に眺めるだけで終わりそう・・・(虚)。

 “桜”といえば先日、吉永小百合様主演「北の桜守」を鑑賞。何故観たかと申しますと・・・筆者にも色々<大人の事情>があるからですよ(笑)。小百合様映画だけに、まぁ、いい映画・・・だよね。面白い映画ではなくて、“いい映画”。あと笑福亭鶴瓶師匠と阿部寛は、小百合様映画の完全にレギュラーだって事はよく分かった^^!

 
 筆者も一応、映像業界の片隅に身を置く立場なので、映像に関する新しい事は勉強しなければならないのですが・・・SFアクション映画「ハードコア」(’15・露、米。“ハードコア”っていっても、ポルノ映画のジャンルの方ではないので、ご注意)は<全編一人称視点>で作られた初の映画!!
 どうゆう事かと言うと、主役やる人(顔出しなし)の頭にゴープロ(小さいカメラ)着けてアクションさせると、観客が主人公目線でガンガンアクションした気分になれるというVR(ヴァーチャル・リアリティー)映画です。

 そんな複雑なストーリーではないので、あえて割愛しますけど・・・筆者も以前、15分ぐらいのVR映画は観た事あるのだけれど(軽い恋愛ものだった)、これが長編でアクションになるとね・・・アラフィフのせいかもしれないけど、視神経が追い付けず、観ていて途中具合が悪くなってきた(苦笑)。で、VRという事で安いイメージ抱くかもしれないけど、これがお金かかってんのよ!車はバンバン破壊するわ、バイオレンス描写も超ハード!!撮影した素材まんま使用ではなく、きちんとCG処理してるし。ゲーム好きな方にはお薦め!

 その昔でいえばCG駆使した「トロン」や、登場人物がカメラ回した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、時間軸逆につないだ「メメント」に再度3Dを流行させた「アバター」・・・と、技術の進化と共に映画も深化と新しい表現を模索してきた訳で、今作もそんな作品の内の1本になった。特にこういう<アイデア一発勝負>の映画は先にやった者の勝ち!監督・脚本を手掛けたイリヤ・ナイシュラーはこれで世界映画史にその名を残した・・・筈。こうなると次に続くVR映画は何やるんでしょうねぇ??インド映画並に大勢の中でダンスとかやったりしたら面白いと思うけど^^。


 “新しいこと”と言えば・・・映画も撮影のみならず“編集”する際、様々な技法を発展させてきましたが(ワイプとかオーバーラップとか)・・・画面のマルチ(分割)って、どの作品が最初にやったんでしょうね??その辺りは詳しい方の著書かサイトを読んで欲しいのですが・・・「絞殺魔」(’68・米)はそのマルチを全編において多用した作品。現在の作品でもデ・パルマとかないことはないけど、ここまで全編に渡って使っている映画もそう多くはない。その代表として今作を挙げます。


 アメリカ・ボストン。1962年6月、一人暮らしの老女が絞殺されて発見された。市警察のディナターレ刑事(=ジョージ・ケネディ)らが捜査に当たるも手掛かりはなく、更には同じ手口で老女の絞殺事件が続発する事態に。検事総長補佐のボトムリー(=「荒野の決闘」、「ウエスタン」のヘンリー・フォンダ)が捜査本部長に任命されたものの犯人は分からない。おまけに老女から今度は若い女性ばかりが絞殺されるように犯行が変化していった。一方、ボイラー工のアルバート・デサルボ(=「スパルタカス」、「お熱いのがお好き」のトニー・カーティス)は、テレビで故ケネディ大統領の葬儀を見ていたものの、妻と子供たちを置いて自宅を出て、女性を物色し始める・・・。


 1962年から64年にかけて13人の女性が殺害された「ボストン絞殺魔事件」の映画化。なんせ事件が終焉を迎えて僅か4年後に公開されているから(この年に「2001年宇宙の旅」も公開)まだ犯人や関係者も存命中という事で、めっちゃ早い企画といえるでしょう。これぞ東映も真っ青の映画屋さん的発想(笑)。

 監督はリチャード・フライシャー。ディズニー映画「海底二万哩」や「ミクロの決死圏」あたりが有名だけれど、このブログでも以前書いている「マンディンゴ」も演出している、単なる職人監督ではないお方(黒澤明が監督降板した「トラ・トラ・トラ!」のアメリカ側監督もこの人)。映画の前半はスプリット・スクリーンを駆使してセミ・ドキュメンタリータッチで進行していくのだけれど、これはフライシャーがキャリアの始めにドキュメンタリーやニュースフィルムを手掛けていた事と無縁ではないだろう。で、後半は逮捕されて尋問される犯人の内面を描く展開に推移していく。あえて死体をハッキリ見せない演出は巧いし、劇伴(音楽)を使わない点も映画のリアリティーを増していてグー!

 俳優陣に目を向けると、自ら犯人役を志願したトニー・カーティスは偉いっ!出番は映画の半分しかないし(上映1時間経って、ようやく登場)、そもそもイケメン俳優で売っててイメージダウンのリスクもあっただろうに、こういう難しい役に進んで挑戦する俳優さんを筆者はリスペクトする。晩年、自伝でマリリン・モンローと不倫してたと書いたのははいかがなものかと思うけど(笑)。ジョージ・ケネディヘンリー・フォンダはどんな映画にでも出る印象あるけど(笑)、ベテランだけに、安定した芝居で好演。

 実話だけに、事件の顛末とその後は・・・気になる方は各自で調べて下さい。これも勉強ですよ、勉強(笑)。調べる前に観るか、調べてから観るかは・・・貴方次第という事で。昔の角川映画のコピーか(ひとりツッコミ)。


<どうでもいい追記>M・ナイト・シャマラン監督作「スプリット」(’16・米)は「絞殺魔」と設定に共通している部分があるんだけど、シャマラン映画の代名詞の“オチ”がアレっていうのは・・・(絶句:ネタバレするから書かないけど)!自分の過去の作品を観ていなければ分からないというのは、あまりフェアではないと思うのだが・・・加えて、これの続編製作決定って、マジか!!