其の477:新作邦画2本寸評

 多忙を極め、間が空きました・・・(疲)。そんな中、なけなしの睡眠時間を削って観た邦画の新作2本の寸評を。上映中につき、いつものようにネタバレしないように書きマス^^



 まず1本目は「のぼうの城」。タイトルからも分かるように<時代劇>です。先の震災によって劇中の“城の水攻めシーン”が問題となって、公開が延期された“いわくつき”の一作でもある。



 戦国時代末期ー。天下統一目前の豊臣秀吉(=市村正親)は、関東最大勢力・北条氏の小田原城を落城させるべく進軍。対する北条氏は関東各地の支城城主に篭城に参加するよう通達を出す。そんな支城のひとつー周囲を湖に囲まれ“浮城”とも呼ばれる「忍城(読み:おしじょう)」。領主・成田氏一門の成田長親(=野村萬斎)は、<でくのぼう>を略して<のぼう様>と呼ばれる武勇も智謀もない男ながら、領民からは非常に慕われていた。そんな忍城石田三成(=上地雄輔)率いる軍勢が迫る。だが城主の氏長(=西村雅彦)は、北条に従うように見せつつ、裏で豊臣側に降伏を内通。豊臣の軍が来たら戦わず開城するよう伝えていた。ところが三成の使者・長束正家(=平岳大)の傲慢な振る舞いに総大将・長親は戦うことを選択!事前に降伏を知らされていた重臣たち(=佐藤浩市山口智充成宮寛貴)は混乱するものの、やがて覚悟を決める。こうして2万超の軍勢相手に、武士500人、農民らを含めても約3千強の無謀な戦いが幕を開けたー!!


 原作は・・・ちょっとややこしいんだけど、まず和田竜が史実を元に書いた第29回城戸賞(’03年)受賞脚本「忍ぶの城」。城戸賞は基本<映画化前提>なんだけど、予算やロケ地ほかの問題から企画が遅々として進まず、そこで自ら「のぼうの城」と改題、小説として発表する。それがベストセラーになったことで、ようやく映画企画が本格スタートしたわけ。よくある<ヒット小説の映画化>ではないのダ。それを犬童一心樋口真嗣の2人が共同で監督してる。

 今作も今時の例に漏れず、テレビ局(TBS)が絡んでいるんだけど、合戦シーンでは首チョンパや兵士が火だるまになる場面もあり^^。おそらくTV放送の時にはカットされるんだろうな〜(苦笑)。その分、残念ながら水攻めのシーンは大幅に修正したそうな(残念)。リメイク版「日本沈没」も担当した樋口真嗣が描く“水攻め”・・・観たいっ!是非、DVDの特典映像には入れておくなまし。

 <2万対500のバトル>というだけでも男子としては燃えるけど(笑)、なんといっても今作は主役を演じた野村萬斎!まさに「萬斎による萬斎のための映画」(笑)。実際の成田長親は敵の前で田楽踊ったりはしてないだろうけど、あのシーンは・・・彼にしかできなかっただろうし。全てを彼が持っていったね^^。対する石田三成を演じた上地雄輔も好演。世間的には“おバカキャラ”の上地が智将・三成を演じると聞いた時には正直不安だったが(ファンの方、失礼。悪意はありません)、敵にも人間味を見せる“いい人”三成を上手く演じていたと思う。映画のあと味がそんなに悪くなかったのも、彼が演じた三成ゆえだと思う。

 出来の賛否両論はあろうが・・・筆者は好きだな、これ^^。歴史に埋もれていた意外な実話を世に広めただけでも、映画を作った価値は十分あったと思うのだが。






 続いて2本目は「北のカナリアたち」。ちょっと色々あって鑑賞するに至った訳なのだが・・・まさか筆者が吉永小百合様の主演作を劇場に観に行くことになろうとは!ちなみに劇場は・・・サユリストと思しき世代の方々が大半を占めておりました(苦笑)。



 かつて北海道・最北端の離島に夫(=柴田恭兵)と共に訪れ、小学校教師を務めていた川島はる(=小百合さま)。現在はひとり東京で働く彼女の前に警察が訪れ、当時の生徒6人の内のひとり、鈴木信人(=森山未來)が殺人事件の重要容疑者として目下、居所を捜していることを告げられる。彼女は教師時代、教え子たちに歌の才能がある事を発見、合唱を指導して交流を深めていた。ところがある夏の日、生徒たちと行ったバーベキューで<事故>が起き、彼女はひとり島を去った過去があった。はるは真偽を確かめるべく、20年間ぶりに島を訪れ、教え子ひとりひとりを訪ねて歩くのだが・・・。


 吉永小百合里見浩太朗柴田恭兵仲村トオルのほか森山未來満島ひかり勝地涼宮崎あおい小池栄子松田龍平・・・と新旧の人気スターを集めて製作された小百合さま、実に116本目(!)の出演作品。この年齢で主役をやられるのは・・・日本では小百合さまと高倉健さんだけ(凄)。「告白」の作者・湊かなえの短編集「往復書簡」中の「二十年後の宿題」が原案。監督は「どついたるねん」、「亡国のイージス」の阪本順治

 筆者は原作未読なのだが・・・様々な登場人物がかつて自分の見たことを“告白”することで、徐々に真相が明らかになるのは「告白」同様の“湊流”。主人公があちこち人を訪ねて歩く設定は、いやでも小津の「東京物語」を連想させる(→過去と現在をクロスさせているので、まんまではないけれど)。教え子6人中、5人が未だ北海道にいるのは・・・ちと出来過ぎだとは思うが(苦笑)。

 先の「のぼうの城」は<野村萬斎による萬斎の映画>と書いたが、今作もそれと同様・・・やっぱり<吉永小百合映画>だよな。いまも昔も小百合さまはお美しい^^!でも、単にそれだけではなく、キャラひとりひとりにそれぞれ抱えた苦悩があり、年月を重ねた現在も皆がそれぞれ問題を抱えているーミステリー仕立てではあるけれど、ちゃんとした<ヒューマンドラマ>になっている。それに加えて、ラストは・・・展開としてはミエミエなんだけど、ちと泣かせるよ。筆者も危うく涙しかけた(苦笑)。「面白い」というより「いい映画」としか、言いようがないな〜。

 名カメラマン・木村大作による北海道ロケの風景も綺麗だよ〜。冬なんかめっちゃ寒そうで、筆者は行きたくないけど(笑)。全体的には誉めるけど、阪本監督には少々注文を。かなりの数入れてる<海の映像>は人物の感情表現・・・っていうのはひと昔前のベタベタな演出だし(分かりやす過ぎ)、<過去>と<現在>の変わる時にもう一工夫あれば、もう少し変化が分かりやすくなった気もした。「いい映画」なだけに、その辺りの編集が残念かな。


 
 「のぼうの城」が“判官贔屓”なら、今作は“浪花節”。日本人が感動しないわけがない(笑)!来年の日本アカデミー賞、共に作品賞ノミネートは確実だろう(どちらも大手製作だし)。どちらが受賞するかどうかまでは知らんけどネ(笑)。



 <どうでもいい追記>大ファンだったミステリードラマ「名探偵モンク」シリーズをファイナルまで全て観てしまった!あ〜・・・次、何観ようかなぁ?一部で話題の某TVアニメとかにしようかな?