<其の723>スラッシャー映画「13金」のルーツ!「血みどろの入江」ほか

 8月も下旬になりましたが・・・オフの日は極力、家にいる今日この頃・・・。夏らしい事は・・・一切何もしていない(哀)。

 

 お熱い夏の夜に観るにはピッタリなのが・・・マリオ・バーヴァの一連のホラー作品ではなかろうか(半ば強引なこじつけ^^)。筆者は今年、ハードボイルド映画と共にマリ・バー映画(←勝手に略してます)もちょいちょい観た。彼は世界各国の監督たちに多大な影響を与えただけでなく(バートンや大林宣彦監督ほか多数)、<イタリア映画史>的にも<世界映画史>においても重要な監督のひとり(理由は後程)。彼の代表作「血ぬられた墓標」と「白い肌に狂う鞭」については既に当ブログで更新しているので、それ以外の重要作を短めに書いていこうと思います。マジで暑すぎて・・・そんなに長々書いてられへん(苦笑)。

 

 まずは「呪いの館」(’66)。邦題でもわかるように<ゴシックホラー>である。

 イタリアの片田舎にある閉鎖的な村。毬を持つ少女が現れては起こる連続怪死事件。だが、その少女は既に亡くなっていた・・・!

 設定としては古い作品だけに・・・もうベタもベタ(笑)。展開的に少々わかりにくい部分もあるものの、それをおどろおどろしい映像で補って余りある。毬を持つ不気味な少女は、かのフェリーニが「世にも怪奇な物語」(’67)中の「悪魔の首飾り」に引用した事は有名な話。筆者的には少女を演じたのが、実は女装させた<男の子>だった・・・というのが一番ビックリしたエピソード(笑)。これって、あの某Jホラーの人気キャラの元ネタ・・・じゃないよね?!

 

 続いては「知りすぎた少女」(’63)。アメリカからローマに来たヒロインが女性が刺殺される場面を目撃!そこからミステリ・ファンという事もあって自ら真相を探り始める・・・というミステリー映画。邦題がヒッチコック作品にタイトルよせてるし、劇中のヒロインは煙草を吸う20歳の女性(成人)なんで“少女”ではないけど(笑)。

 今作が重要なのはジャッロ(ジャーロとも)の先駆作とか原点と言われている事にある。ジャッロの特徴は殺人場面が超ハードなミステリーという点にあるが・・・さすがに今作ではそんなゴアなシーンはなし!マリ・バーに続く監督、ダリオ・アルジェントの「サスペリアPART2」の殺人シーンに比べたら、もう全然(笑)。でも「今作がなければジャッロ自体の存在もなかったかもしれない」・・・と考えると、本当に重要な一作!笑える部分もあるし、恋話要素もあって、しかも主人公は女子・・・いまの日本の若いコが観てもウケそう(笑)。

 

 トリは「血みどろの入江」(’71)。タイトルだけでも「血ぬられた墓標」と「白い肌に狂う鞭」に匹敵(笑)!マリ・バー本人が「唯一お気に入りと公言」とブルーレイのパッケージに書いてあるけど・・・ホントかよ!?

 ある湖のそばに立つ豪邸。そこに住む老女主人が冒頭、いきなり殺される!ところが、その犯人も犯行直後に謎の人物に刺殺される!!・・・それを皮切りに起こる謎の連続殺害の顛末とは・・・!?

 マリ・バーの過去作から順に観てくると、今作はカメラをズームしたり、パンしまくったりして、少々映像に落ち着きがない印象を個人的には受けた。以前ならキチンと移動撮影していたけど・・・どうやら、これには低予算という事もあったらしい。悪くはないけど、ちょっと残念な気もした。その分(?)、ナイフで刺す、ナタで首チョンパ、槍で刺すー他、バリエーション豊かな殺人方法で我々の目を愉しませてくれる(フォローになってるか?!)。

  今作の「湖の周りで次々と人がハードに殺される」・・・という展開が、後にハリウッド映画「13日の金曜日」(’80)製作のヒントとなった。そう、「血みどろの入江」は現在、スラッシャー映画のルーツとして認識されている。ホッケーマスクを被った怪人は出てこないけど(笑)、<若い男女がHな事してると殺される>というスラッシャー映画のお約束のひとつは既に今作で描かれている^^。

 <誰が何の為に人々を殺して回るのか?>という映画の肝についての具体的な言及はあえて避けるが・・・ラストの誰も予想できぬ唐突な展開と能天気な音楽には爆笑した!流石にギャグではないと思うけど・・・この驚天動地のオチこそが先述のマリ・バー自身の「お気に入り」とコメントした部分かもしれない(そんな訳ないか^^)。

 ジャッロ、そしてスラッシャーという2大ジャンルの創始者マリオ・バーヴァ。2つものジャンルを1人で生み出した映画監督は・・・考えてみてもすぐには思いうかばない。映画史を知れば、決して無視できない凄い監督なのである。

 

 天気予報によれば、9月も例年よりは暑いとの事なので、是非マリオ・バーヴァの一連のホラー作品(←勿論、他のジャンルも撮ってるのよ)で涼んで頂ければ、と。それに加えてー特に若い人に伝えたいのだけれど、CGの発展とデジタルカメラ撮影でほぼ失われてしまった“フィルムの感触”も感じて頂けると幸いだ。