其の656:リンチ作品のルーツ?「裸のキッス」

 ようやく少〜し、春めいてきた今日この頃。その分、花粉症でキツい・・・!

 
 さて、今回紹介するのは・・・またしても、知っている人は知っているカルト映画「裸のキッス」(64・米)!ジャンル的には<サスペンス>です(どうも今年は年頭から最新作&正統派映画を書いてしまったので、その反動が脳内に来ている:苦笑)。以前ここで書いてる「ショック集団」や「ストリート・オブ・ノー・リターン」のサミュエル・フラーが製作・監督・脚本を兼任しております。ちょい邦題似てるロバート・アルドリッチ監督「キッスで殺せ!」(’55・米)ではないのでご注意あれ。


 娼婦のケリー(=コンスタンス・タワーズ)は金をピンハネする売春宿の元締めを殴り倒し、自らの取り分を奪って立ち去った・・・。
 2年後、彼女はグラントヴィルという小さな町にやって来る。シャンペンのセールス嬢をやっている、というケリーに魅かれた警部のグリフ(=アンソニー・B・アイスリー)は彼女と一夜を共にした後、町を去るように忠告する。ところが彼女は部屋を借り、町の身障児施設の看護婦として働き始める。怪しんだグリフがケリーに詰め寄ると自分は更生したいから、過去については黙っていて欲しいと懇願される。ある日、町の創設者の子孫で富豪のグラント(=マイケル・ダンテ)からプロポーズされるケリー。過去は気にしない、という彼の申し込みに考えた結果、ケリーは結婚を承諾する。結婚の準備に追われていた時、彼女はグラントの思わぬ秘密を知ってしまう・・・!!

 
 いや〜、書けるのはここまでですな!後半の方が面白いんだけどネ。続きが気になる方は是非ご自分の目でお確かめを^^。「モノクロ映画」なので若い人たちは嫌厭しそうだけど、ストーリーだけではなく、いかにもサスペンス映画らしい映像(特にライティング。照明よ^^)にもご注目頂きたい。
 映画のド頭、いきなりヒロインがカメラ目線で男を殴りまくる!で、その直後、彼女のかつらが取れてスキンヘッドの頭部がむき出しになって超驚いた(←売春宿の主人が女が逃げないように髪を刈ったのだ)!!これで観客の“つかみはOK”(笑)!映画にぐいぐい引き込まれてゆく。
 監督のフラーについては以前書いている(筈)なので詳細は省きますが(監督作品の大半が異色作といえるだろう)、前作の「ショック集団」に続き、“人間の暗部(ダークサイド)”を描く本作。どこにでもありそうな小さな平和な町、そこに住む大人しそうな人々。だが、そこには恐るべき闇が広がっていた・・・という内容は、デヴィッド・リンチの「ブルーベルベッド」や「ツインピークス」(先日、続きがありましたな)につながる内容。よって、フラー・・・いや今作「裸のキッス」は、リンチ作品のルーツ的存在・・・?って、誰も書いていないから書いておこう(笑)。リンチがフラーのファンとか、今作に影響受けているのか否かは筆者は読んだ覚えはないので、単なる個人的推測です^^。
 タイトル<裸のキッス>の意味を書いてしまうとネタバレするんで書けないけれど・・・現在でもなかなか衝撃的な内容。公開当時の60年代はーもっとだっただろう(ラストは別のバージョンも撮ったものの、観客の心情を考えて、いま観られるラストを選んだそうな)。そのせいかどうかは知らんが・・・今作はあまり当たらなかったらしい。残念の一言(これ以降、フラーの制作ペースは極端に落ちた。製作費調達が難しくなったからか?)。

 
 どんなジャンルにしろ、時代の先を行き過ぎたり、危ないとこ攻め過ぎると大衆の反感を買って潰されるのが・・・遺憾ながら、人の世の常なのかもしれない。で、大分経ってから評価される・・・今作も現在ではバッチリ評価されている1本。サミュエル・フラーの努力は無駄じゃなかった^^!!
 もっともヒロインのケリーは美人だけど馬鹿ではないし、キチンと自分の考えを持っている人物なのに何故娼婦に身を落としたのか、とかその辺りの背景が知りたい・・・と思ったのは筆者だけか??