其の655:野郎だけのニューシネマ「真夜中のパーティー」

 花粉症にとってキツい時期に入りました。ただでさえ3月忙しいのに・・・!

 
 筆者が“アメリカン・ニューシネマ”のファンである事はちょいちょい書いておりますが・・・1970年のアメリカ映画「真夜中のパーティー」(「真夜中のパーティ」表記もあり)は、誕生日パーティーに集まったゲイの方々の一晩の出来事を描いた異色作!日本でも、一時期作られるようになりましたけど、今作はハリウッドのメジャー系(20世紀FOX)が同性愛者を主題とした映画を初めて配給した事で映画史に記録されている(それ以前はブルーフィルムみたいな形で作られていたのだろう)。このブログは映画紹介と同時に<世界映画史>も記録する事も目的としているので、のっかってみた次第^^。


 真夏のニューヨーク。マイケル(=ケネス・ネルソン)は友人のハロルド(=レオナルド・フレイ)の為に誕生パーティーを開く事になっており、その準備に追われていた。すると彼の“ステディ”のドナルド(=フレデリック・コムズ)が早々にやって来る。パーティーの時間が近づいた夜、突然、マイケルの大学時代の友人アラン(=ピーター・ホワイト)が電話をかけてきた。深い悩みがありそうだったが“ストレート(ノンケ)”の彼をゲイ・パーティーに呼ぶわけにはいかず、翌日会う事にする。そうこうしている間に参加メンバーが次々とやって来た。オネエ言葉を使うエモリー(=クリフ・ゴーマン)に教師のハンク(=ローレンス・ラッキンビル)。その恋人でカメラマンのラリー(=キース・プレンティス)に、黒人のバーナード(=ルーベン・グリーン)の面々。主役のハロルドは未だ来ていないものの、会が少し盛り上がってきた頃、突然アランがやって来る。男だけの奇妙なパーティーの様子を見たアランを別室に連れていくマイケル。するとエモリーからハロルドへの<プレゼント>として、一晩金で買われた若い男娼(=ロバート・ラ・トゥールノウ)がやって来る。アランもパーティーに残ったものの、ホモ・セクシュアルな感覚を理解できない事を冷やかすエモリーを殴りつけてしまい・・・!?


 1968年に初演され話題をよんだオフ・ブロードウェイ舞台劇の映画化。原作者のマート・クロウリーが製作・脚本も担当している(映画用に脚本も一部アレンジ)。なんでも舞台の台本はヒッチコックの「ロープ」(’48)を参考に執筆したという。部屋の中でお話が進行していくのがホンを書く際のイメージとしてあったのだろうね。
 特筆すべきは→→→今作の監督はなんとウィリアム・フリードキン(驚)!!テレビ局でドキュメンタリーを手掛けた後、この当時には既に映画監督デビューはしていたものの大して知名度はないこの時、マート・クロウリーが彼の作品を観ていた事からオファーしたという。今作はアカデミーに輝いた「フレンチ・コネクション」やあの大ヒット作「エクソシスト」を撮る前のもの。後に同じゲイを主題にした「クルージング」も撮るフリードキンだけにファンは必見だろう。
 上映時間が120分あるんだけど、冒頭のメンバー紹介パート(→オール男!しかも舞台の初演のメンバー大集合で、ノンケのアラン役の人も本当はゲイだったそうな)以外はすべてマイケルのアパートの室内で展開(広いベランダを含む)。これをフリードキンは映像的に飽きさせないよう、様々なアングルを駆使して一同を狙う。これは結構大変な事で・・・筆者は感心した。ヒッチコックの「ロープ」はカットを割っていないように映画を創る事に苦心した一作だが、今作は個人的には「ロープ」よりも川島雄三の「しとやかな獣」(’62)を思い起こさせた。「しとやかな獣」も基本、団地の部屋からカメラが出ない・・・さすがにこの映画では“便器からの視点”はなかったけど(笑)。あとニューシネマだけど、今作は“誰も死なない”ことも書いておきましょう(笑)。

 21世紀のいまでこそ、一般的になってきたお話だけど、この当時にゲイの方々・・・中には黒人やユダヤ人も含む・・・のお話を映画にするのは、舞台がヒットして有名だったとはいえ相当リスクもあったのではなかろうか。そんな題材に果敢に挑戦したフリードキンは偉いと思うし、これで注目されて「フレンチ・コネクション」につながっていくわけだから、彼の挑戦は大成功だったと言えるだろう。

 
 <久々のどうでもいい追記>先日のアカデミー賞ギレルモ・デル・トロの「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞や監督賞をゲット!おめでとうございます^^。デル・トロさんには「パシフィック・リム:アップライジング」の監督もやってくれていればもっと嬉しかったけど。さて“オタクつながり”でティム・バートンがアカデミー獲るのは・・・いつの日になるのかしら?
 タランティーノの新作にレオナルド・ディカプリオブラッド・ピットが出演との報道。ハリウッドの「セクハラ問題」でセクハラを放置したとして揺れるタラさんだが・・・なんとか無事にクランクインする事を願うばかり!!