其の625:イーストウッド初監督作「恐怖のメロディ」

 ・・・明けましておめでとう御座います(遅い)。仕事納めと仕事始めのスパンが余りにも短くて、大して頭が切り替わぬまま現在に至ります(トホホ)。

 そんな2017年の一発目ですが→→→米・FOX局が企画していたマイケル・ダグラスグレン・クローズ共演作「危険な情事」(’87)のテレビシリーズ化が見送られたとの報道が。この「危険な情事」の元ネタといわれているのがサスペンス映画「恐怖のメロディ」(’71)です。監督・主演はかのクリント・イーストウッド!しかもこれが初監督作品!!名匠のルーツを語る上でも外せない一作です^^(でも、これメジャー作だよね・・・)


 アメリカの海岸沿いにある小さな田舎町ー。デイブ(=クリント・イーストウッド)はレコードの合い間に詩を読んだりしながら電話によるリクエストを受けつける深夜ラジオのディスク・ジョッキー。ここしばらく彼の放送が始まると、決まって「“ミスティ”をかけて」とリクエストする謎の女性からの電話が続いていた。そんなある夜、デイブがいきつけのバーに顔を出すと女のひとり客・イブリン(=ジェシカ・ウォルター)がいた。彼女と首尾よく知り合う事に成功したデイブは女性のアパートを訪れる。実は“ミスティ”をリクエストしてくるのは彼女だった!イブリンから「あとくされのない一夜だけの関係」と誘われてデイブはベッドを共にする。だが、翌日からイブリンは勝手に彼の家に押しかけてくる様になる。仕事相手といてもお構いなしの上、姿を消していた恋人・トビー(=ドナ・ミルズ)も戻ってきた為、イブリンを拒絶し続けるデイブ。すると次第に彼女は常軌を逸した行動を取るようになる・・・!!


 ホント、粗筋書いていくと「危険な情事」とほとんど同じやね(笑)。この「きょうメロ」の時も「きけじょー」の時もまだ“ストーカー”なんて言葉はなかった。そういう意味でも先進的な作品。ちなみに“ミスティ”は、ジャズ・ピアニストのエロール・ガーナーが1954年に作曲したバラード曲(サスペンスなので邦題は「恐怖のメロディ」になってるけど、原題は「PLAY MISTY FOR ME」)。

 この前に出演した「白い肌の異常な夜」と「恐怖のメロディ」と併せて「イーストウッドはマゾなのか?」といった批評がよくありますが・・・筆者も少々そんな気がする(笑:「白い肌〜」は昨年書いたので、そちら拙文もご参照下さい)。よく「処女作にはその監督の全てが出る」なんて事が良く言われますが、それは本当にその言葉通りで・・・<現在視点>で見てみるとイーストウッドは既に趣味のジャズを今作でも取り上げているし(劇中出てくる「ジャズ祭」は実際の会場でバンバンカメラ回したそうな。後に「バード」なんて作品も監督)、「超大作は作らず、予算の範囲でいい作品を作る」事も一貫している(今作はスタジオから「監督してもいいけど、お金は出さないよ」と言われた為、低予算)。「白い肌の異常な夜」と「恐怖のメロディ」の役も結構女性にルーズなんだけど・・・その辺りも彼のプライベートを少々連想させるし。

 後の作品と若干違うのは・・・今作では割と「空撮」が多いことかな?初めての映画演出という事で映像文法のセオリー「場所紹介」に加えて“映画的スケール”を出したかったのかもしれない(冒頭、空撮から入る映画は現在でもいっぱいある^^)。ジェシカ・ウォルターもめっちゃ怖いし、とても主演やりながらの初監督とは思えない仕上がり。この後、イーストウッドがアクションや西部劇、ミステリーに実話もの・・・と様々なジャンルを手掛け、アカデミー賞監督にまで登りつめていくのは皆さんご承知の通り^^

 ちなみにこの年、ドン・シーゲル監督による大傑作「ダーティハリー」に主演。俳優としてもマネーメイキングスターに。「恐怖のメロディ」にバーテンダー役で出演したシーゲルが「ダーティハリー」の劇中、映画館の看板に今作のタイトルを使ったのは、いいお話である^^。


 「新年」という事で(ちょっと遠慮して)ついメジャー作を取り上げてしまいましたが・・・今年もドンドン、カルト映画やマイナー映画も書いていくぞー!!

 ・・・ふと考えると、いま漫画原作の実写化がすげー多いけど筆者が学生時代に観た漫画原作ものって、あまり(というか、ほとんど)ソフト化されていない(あえてタイトルは挙げませんけど)。いまでは「あの人が出てる!?」なんてものも沢山あるので、邦画各社の方々、その辺りの発掘も是非お願い致します!