其の631:いまいち忘れられた80年代劇場アニメ2作

 ・・・怒涛の繁忙期3月が終わりまして、すっかり間があきました。いや〜、、、マジで疲れたなぁ(苦笑)。

 愚痴は程々にして、今回は“知っている人は知ってるけど、知らない人は全く知らない”劇場用アニメ映画2本を後世に<記録>しておこうかと思います(勿論、完全に黙殺されている訳でないのですが)。

 まず1本目は「夏への扉」(’81)!松田聖子の似たようなタイトルの歌やハインラインのSF小説ではありません。BLの開祖(?)竹宮惠子大先生の同名短編漫画が原作です。原作が短いのもあってか、映画自体も59分の中編(見やすい^^)!

 
 夏休み直前のあるフランスの男子校ー。容姿端麗・成績優秀にして少年らしからぬ雰囲気を持つマリオン(声・水島裕)はジャック(声・古谷徹)やリンド(声・古川登志夫)、クロード(声・三ツ矢雄二)と共に「合理党」というグループを結成し、そのリーダーとして一目置かれる存在だった。だが女性に対しては屈折した想いを抱いてもいる。そんなある日、カフェに立ち寄ったメンバーは、男子生徒の憧れの的・レダニア(声・潘恵子)を巡る上級生2人の喧嘩に遭遇する。仲裁に入ったマリオンは、揉め事の張本人と<線路に立って、やってくる汽車に対してどこまで耐えられるか>という度胸試しの決闘を行う事にする。衆人環視の中、早々に逃げ出した相手に対し、ギリギリまで踏み止まり勝負に勝ったマリオン。すると緊急停車した汽車から降りて来た妖艶な美女サラ(声・武藤礼子)に声をかけられる。彼女は突然、マリオンの唇を奪い「屋敷に遊びにきて」と伝えて去って行く。これをきっかけにマリオン達の運命の歯車が大きく狂いだす・・・!


 脚本は大家・辻真先を筆頭に演出に真崎守、作画監督が富沢和雄&音楽・羽田健太郎と超豪華スタッフ!中でも筆者的には画面設定を担当した川尻善昭に注目!なんでも真崎守の書いた絵コンテ(真崎は漫画家でもある)は絵が“男っぽい”ので、竹宮先生(=「少女漫画」)の絵に似せるように努力したという。また川尻氏本人はレイアウトと共にラフ原画も書いて、絵コンテもガンガン直して好きにやったそうな(笑)。ネタばれになるんで詳しく書けないけど、映画冒頭とクライマックスにくる銃を使った決闘シーンの画面分割はご本人もうまくいったと思っているそうなので、そこら辺りにも注目して頂きたい。作品自体は竹宮先生らしい・・・筋立てはいま観ると、少々古いけど、いまのアニメにはない“耽美”な作風(観ていない人、想像して❤)。
 スタッフ同様、声優陣も人気声優ばかりの超豪華メンバーだが(ナレーション担当は「キャプテン・ハーロック」や「ルパン」の五エ門役・井上真樹夫だぜ〜!)、ちなみにいまご活躍している人気声優・潘めぐみレダニア役の潘恵子の娘!時の流れを感じるわ(苦笑)。更に書くと同性愛で悩む少年クロードの声が三ツ矢雄二というのも・・・いま視点で観ると意味深で面白い(でも当時からアニメファンは分かってたけどね^^)!
 今作は当時、その辺にある普通の劇場とかではなく、オフ・シアター方式(公共ホールとか)で上映されたのだが・・・これ観せられた当時の少年少女の戸惑いは想像に難くない(笑)。でも21世紀のアニメは萌え系ばっかりで、こういう作品がなくなったのは大きな損失ではあるまいか・・・と思う今日この頃である。


 そしてもう1本が「まことちゃん」(’80)。いわずとしれた楳図かずお大先生の傑作ギャグ漫画のアニメ映画化(こちらの尺は85分)。同時上映(←昔は映画は2本立てだったのよ)は薬師丸ひろ子主演の「翔んだカップル」(笑:どんな組み合わせやねん)。ついでに告白すると、昔、筆者は薬師丸さんのファンだったので、「まことちゃん」と「翔んだカップル」の2作が1冊になってるパンフレット(!)を現在でも持ってるw


 映画は5話からなるオムニバス。原作漫画同様、劇中顔を出す楳図かずお先生も当然のことながらアニメキャラとして出演(声も)、主題歌も披露してます(ホント)!!また当時の漫才ブームを代表してツービートも<特別出演>の体(てい)で本人役で出演!昔は、アニメでも旬な人を出すというのは良くあったのさ♪・・・あ、いまでもあるか(笑)。

 長年ソフト化されていなくて、先日久方ぶりに観直したんですけどね・・・当時、筆者は「まことちゃん」全話読んだわけではないけど・・・アニメになった5つのお話は漫画で読んだ記憶あり。当時真似した「サバラ!」「グワシ!」の他、「マッチョメマン」は懐かしかったな^^

 監督は芝山努、キャラクターデザイン・作画監督小林治。いま・・・ふと思うと芝山努は、昭和の映画版「ドラえもん」の監督をずーっとやっていらっしゃった方。盟友・小林治と共に「元祖天才バカボン」もやってるし、小林は「新ど根性ガエル」も担当してる。その視点で観ると、全話ではないけどキャラはなんとなく「新ど根性ガエル」っぽいし、背景は「元祖天才バカボン」を彷彿させるテイストが多々見受けられた(なんでも漫画の背景をモノクロコピーしたものを、アニメ撮影用の背景の素材の一部流用したそうな)。子供から大人まで万人が観られる「ドラえもん」の監督が、下ネタ・エロネタで有名な「まことちゃん」をやってたというのも・・・人に歴史あり、か(笑)。

 また制作当時は声優のキャスティングが大変だったそうで。台本を読んで「こんな下品な台詞は読めません」と断ってきた人も少なからずいたそうだ。だが、そんな状況でありながらも杉山佳寿子吉田理保子小原乃梨子肝付兼太ほかメジャーどころ多数出演!まことちゃん演った杉山佳寿子は、あの「ハイジ」だから!!いくら仕事とはいえ、このオファーを受けた杉山さんは偉いとしか言いようがない。中でも小原乃梨子のび太)、肝付兼太スネ夫)あたりは芝山努が「ドラえもん人脈」でお願いしたのではないかと筆者は邪推している(笑)。

 大勢の人が分業で作業するアニメだからある程度仕方がないけれど・・・劇画の絵でギャグをやる革命的なことをやったのが山上たつひこ楳図かずお両巨頭。ところが今作は先述した通り、「新ど根性ガエル」っぽい、アニメとして書きやすい絵柄に改変・・・後年、楳図先生も「若干、ニュアンスが違うかなと感じました」とコメントしてる。その意味でいうと、ちと残念な出来といえようか。今じゃ、そんなにギャグも笑えないし。ただ、あれこれうるさい21世紀の今では、ほぼ出来ないようなネタを大金かけて劇場用アニメとしてやった事には(筆者の記憶ではテレビ放送していないと思う)敬意を表する!


 <どうでもいい追記>
①:アニメ版劇場用「ゴジラ」が・・・3部作ですと〜!?アラフィフにもなって、アニメのゴジラで3本も観に行けないよ〜!1本にまとめて欲しかったわ!!
②:「ゴジラ」といえば→→次の次の映画でキングコングと戦う訳でしょ(製作決定してるし)。アメコミ系は出版社違いで「アベンジャーズ系」とスーパーマンバットマンほかの「ジャスティス・リーグ系」の2ルートに集約化されつつあるし。このままドンドンいったら、著作権諸々クリアーしちゃって、「アベンジャーズジャスティス・リーグ」のヒーロー軍団対ゴジラキングコングほかの怪獣軍団の一大バトル映画まで発展しそう。まさにこれぞ映画の最終局面、ヨハネの黙示録!神々の黄昏!!
 ・・・もし、そこまでいったらハリウッドも終わりだな(てかゆーか、ない。多分)
③:アニメ映画「はいからさんが通る」2部作の1本目が11月公開決定!ラストまで初のアニメ化ということで(昔やったTVアニメは打ち切られた)これは観なければ(・・・女子か:笑)。
マジンガーZ」も劇場版が作られるが・・・いつの公開かしら??