其の628:これぞバートン「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」

 ・・・多忙だった時間を埋めるべく(もう2月も終わっちゃう!)「虐殺器官」に続いて鑑賞したのが「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」。「ビッグ・アイズ」以来のティム・バートン最新作です。何故かあまり話題になっていない気もするけど(苦笑)絶賛公開中につき、ネタばれせぬよう書いていきますわ♪


 時は現代、アメリカのフロリダー。ジェイク(=「ヒューゴの不思議な発明」のエイサ・バターフィールド)は周囲になじめない孤独な高校生。ある日、慕っている祖父のエイブ(=「テオレマ」、「コレクター」のテレンス・スタンプ)が切迫した状況にある事を知り、慌てて彼の家に向かうと、そこで両目が失くなっているエイブを発見する。彼は「ケインホルム島へ行き、1943年9月3日の<ループ>へ行け。そうすれば鳥が全てを教えてくれる」とジェイクに告げて亡くなる。ジェイクは自分がまだ幼い頃、エイブから繰り返し聞かされていた話を思い出した・・・。それは彼が子供だった時、モンスターと戦い、第二次大戦の間、ウェールズの屋敷で女主人アルマ・ペレグリン(=「ダーク・シャドウ」のエヴァ・グリーン)や奇妙な子どもたちと暮らしていた、というもの。
 ミス・ペレグリンからエイブの誕生日に送られた手紙があった事や、精神科医からの薦めもあって、ジェイクと父親のフランクはケインホルム島を訪れる。そこでジェイクはエイブたちが暮らしていた当時の屋敷が1943年9月3日にドイツ軍の空襲によって破壊されている事を知る。翌日、ジェイクが再度廃墟と化した屋敷内を廻っていると、そこに子どもたちが現れて・・・!?


 ランサム・リグズによる全米ベストセラー小説「ハヤブサが守る家(邦訳タイトル)」の映画化。厳格なミス・ペレグリン(勿論、彼女にもある能力がある)を筆頭に身体が空気よりも軽い美少女や透明人間の男の子、手から高熱を出す少女、怪力の幼女その他<異形の人々>がわんさか出てくる。まさにバートンが監督するのに超ぴったりのダーク・ファンタジー(映画化に際してチョイチョイ脚色されてはいるけれど)^^。逆説的に言えば、バートン以外、今作の監督は無理だとも言える。

 詳細な内容は書きませんが(→粗筋で書いた<ワープ>の意味、その他は映画を観てネ)・・・ストーリー自体は、もう王道中の王道!!サミュエル・L・ジャクソンらが悪役で出てきて、一同(もちジェイクも参加)が自らの身を守る為に各々の能力を駆使して戦うーという“世界を守る為に戦う”スーパーヒーローものになっていないのがいいネ❤そのテのハリウッド映画は毎年何本も公開されてるんで(笑)。

 特筆すべきは、やっぱりクライマックスのモンスター(なんと透明!)との大バトル!人形その他、生命の無いものに命をふき込める少年によって、骸骨たちがモンスターと戦う場面は誰がどう見ても「アルゴ探検隊の大冒険」!レイ・ハリーハウゼンの人形コマ撮りシーンを最新CGを駆使して再現してるのだが・・・バートンがめっちゃ喜んでいる姿が筆者には見えた(笑)。ちなみに「300」の続編でめちゃワル役だった(乳も出してた)エヴァ・グリーンは、今回はいい人です(笑)。


 「マジか!」という部分も少々あるものの(←一応“伏線”はあるので回収してるとも言える)、作品全体のムードといい、キャラクターといい、「アリス・イン・ワンダーランド」、「ダーク・シャドウ」でスベったバートンが実話作「ビッグ・アイズ」を挟んではいたものの、ダーク・ファンタジーの復帰に若干の心配もしてたんだけど今作は良かった^^。ラスト、ロマンティックなシーンもあるので、女の子漫画の映画化作品に飽きつつある女子に是非お薦めしたい。


 さて、海の向こうで行われていた「アカデミー賞授賞式」。黒人少年の成長と葛藤を描いた「ムーンライト」が「作品賞」に!!大本命と目されたミュージカル「ラ・ラ・ランド」が同賞を逃す大ドンデン返し(?)が起こったそうで。物事は最後の最後まで何が起こるか分かりませんな^^