其の627:3部作遂に完結「虐殺器官」

 ・・・1か月、間が空きました(涙)。仕事に加え、個人的重要雑事が加わり・・・ようやく時間が出来た次第(今年は本当に暦が悪い)。そこでスコセッシの「沈黙」以来、劇場で観たのがアニメ映画「虐殺器官」!伊藤計劃原作3部作の最終章がようやく公開!!ネタバレしないようにサクッと書きます♪


 近未来ー。アメリカを始めとする先進諸国は厳格な個人情報管理でテロの脅威に対抗する一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が横行するようになっていた。アメリカ情報軍所属のクラヴィス・シェパード大尉は後進国各地で虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポールの暗殺指令を受ける。相棒のウィリアムズら特殊検索群i分遣隊と共にジョン・ポールが最後に目撃されたチェコプラハに潜入、彼と交際関係にあった語学教師ルツィア・シュクロウポヴァに接近する。だがクラヴィスは次第に彼女に好意を抱くようになる。ある日、クラヴィスはルツィアにクラブに誘われ、そこで政府の情報管理から外れた生活を送るクラブのオーナー・ルーシャスと出会う。その帰り道、クラヴィスは謎の集団に拘束されて・・・!?


 原作者・伊藤計劃については以前の作品公開時に書いたので省略しますが、原作出版当時、書店で平積みにされていた「虐殺器官」というタイトルの凄さにギョッとして「“機関”ならなんとなく意味は分かるけど・・・“器官”って何?!」と考えた事を思い出した(笑)。勿論、この映画観ればその意味は分かります^^。10年以上前に書かれた小説なのに、いま現在の世界情勢を彷彿させる描写が多々あって・・・観ていてドキッ!伊藤計劃といい、筒井康隆といい、優れた作家は数々の未来を幻視するのだ、と感心しきり。

 ハナから劇場用作品として製作&日本製アニメにつき、映像のクオリティは高い。脚本・監督を担当した村瀬修攻(←アニメーター時代にはサンライズの「サムライトルーパー」や映画の「ガンダムF91」他に参加されていた)は、あの原作をよくまとめたなぁと思う。主人公のトラウマとなっている母親のエピソードは丸ごとカットした辺りは賛否両論あるかもしれんが。

 上記あらすじにも書いた通り一見「SFミリタリーもの」・・・と思いきや、「007」ほかスパイ映画を彷彿させるストーリーライン。そんな娯楽映画の王道の展開の中、“人類が存在する限り逃れられない切実な問題”をも提起する深〜い内容(こんな掘り下げた内容を短期間で一気に書き上げたというのも・・・つくづく伊藤さんは凄い人だ)。少々、歴史や文学について知らないと意味不明な台詞もあるので、その辺りはご注意(分からなかった人は自分で調べましょう^^)。先に公開された「ハーモニー」とつながる話なので、今作の後に未見の人は「ハーモニー」を観るのがいいと思う。


 <3部作>という事で考えると「屍者の帝国」が一番娯楽として面白かったけど、こういう観客が考えさせられる作品がないといけない。同じ<劇場用アニメ>という事で今作も「君の名は。」や「この世界の片隅で」ぐらいヒットして欲しいと思うが・・・内容がハードだから無理だろうなぁ(ゴア描写もあるし)。ただ、今作は当初製作していたスタジオが倒産しちゃって一時はどうなることかと思ったから、無事公開にこぎ着けて良かった良かった^^



 <どうでもいい追記>今年もいろんな映画が公開される予定で、愉しみにしている作品もあるけれど・・・前にも書いたと思いますが、洋画はアメコミ、邦画は少女向けコミックの実写映画化が多すぎる気が・・・。「ヒットしてるから」と言われりゃそれまでだが(資本主義国家だし)そればっかりもなぁ・・・(悩)。