其の550:バートンのルーツ「ビートルジュース」

 先日、「ティム・バートンの世界」展を観に行きました。連休中だったので、すっごい人でしたわ(苦笑)!先日、彼が来日した影響も多少はあるのかもしれません。
 展示はざっくり書くと「絵画・イラスト」、「造形物」、「映像」の3本立て構成。「映像」以外はほぼ流して観れたけど・・・小ブースで上映してた初期短編作「ヴィンセント」は、出来れば観たかったなぁ!そんな少々の後悔はあるものの、バートンが各作品時に必ず書くイメージ画やデザイン画が多数あったから、まぁまぁ満足できました^^。そんなバートン作品の<原点>といえば、やっぱり長編2作目のコメディ「ビートルジュース」(’88)でしょう。雇われ仕事ながら、彼がやりたいことやってるのがハッキリわかるバートン印最初の映画。


 
 コネティカット州にある、のどかな田舎町。新婚のアダム(=アレック・ボールドウィン)とバーバラ(=ジーナ・デイビス)は買い物の帰りに犬を避けようとして車ごと橋から転落してしまう。帰宅した2人だが・・・なにやら様子が違う。家の外に出れば怪物に襲われ、屋恨裏部屋には『新しく死者になった者へのガイドブック』本が置かれていた。そう、2人は死んで幽霊になっていたのだ。
 ほどなく2人の家は競売にかけられ、ニューヨークからある一家が越してくる。お金に目がないチャールズ、妙な彫刻を作っているデリアの夫妻と、チャールズと前妻との娘・リディア(=ウィノナ・ライダー)の3人だ。アダムとバーバラは彼らを追い出そうと脅かすものの、生者は死者が見えないため、まるで効果なし。そこで2人は最後の手段として霊界からビートルジュース(=マイケル・キートン)を呼び出すのだが・・・彼は霊界の<トラブルメーカー>として知られる存在だった!!


 
 上記に書いたようにジャンルとしてはコメディですよ。タイトルロールのビートルジュース(「カブトムシの汁」の意)や新婚カップからして、あの世の“異形の者”ですから(余談だが、バートンが書いた「ビートルジュース」関連のイラストも先の展示会にありました)。出てくるモンスターから、家のデザインやあの世の廊下(ドイツ表現主義的なデザイン)まで・・・ホント、誰がなに言おうともろバートン(笑)。

 今作がスマッシュ・ヒットをとばして次作「バットマン」でその地位を不動のものにするバートンですが・・・彼は気に入った俳優陣を何度も繰り返しキャスティングする傾向にある(今作にはジョニー・デップはまだ出てない)。コメディアン、マイケル・キートン(←今作では特殊メイクで怪演を披露)は「バットマン」の主役だし、ゴス系娘・リディア(当初の脚本では小さな役だったものの、バートンがふくらませた)を演じたウィノナ・ライダーは「シザーハンズ」のヒロインに(で、これでジョニーと知り合って婚約したものの、後に破局。万引きの疑いで逮捕されて低迷したところ、バートンは「フランケンウィニー」で声優としてキャスティング。ええ話や)。チャールズ役のジェフリー・ジョーンズは「エド・ウッド」、「スリーピー・ホロウ」でも使ってる。アレックとジーナがこれきりというのは・・・なんか現場であったんだろうね。2人に文句言われたとか(笑)。

 同様にスタッフも・・・多少の変化はあるものの、今作は後の“バートン組”となる面々が集う。バートンのイメージを具現化する美術のボー・ウェルチ(以後「シザーハンズ」、「バットマン リターンズ」)に、音楽は勿論、盟友ダニー・エルフマン^^。勇壮なタッチで知られるエルフマンだが、今作はバーナード・ハーマンの影響が感じられる。一部は「サイコ」のアレンジか、という部分もあるし。但し、これは冒頭のカメラワークが“ヒッチコック風”なので、エルフマン的にはあえてバートンの意を汲んで意識したのかもしれない(ファンなので一応フォロー^^)。

 
 一部でカルト映画扱いされてるみたいだけど・・・ぶっちゃけ、ギャグが昔のアメリカ製アニメみたいな場面もあり(バートンが元ディズニーのアニメーターだったせいかもしれん)結構ベタだから、ハマる人はハマるんだろうけど、筆者はそんなに笑えなかったから「傑作!」とは申しません。ただティム・バートンのファンは押さえておかなければならない1本であることは確実。彼は自分の趣味を商業作品でやってあてているという映画業界において稀有な存在であるし、ヒッチコックほかの監督作品同様、公開順に彼の作品を観ていくと、より彼の資質が明確になっていくのも分かるし。

 「アリス・イン・ワンダーランド」と「ダーク・シャドウ」はスベったバートンだが、来年公開される新作「ビッグ・アイズ」(実話の映画化)の出来は果たして・・・!?ファンゆえにあえて書く。頼むぞ、バートン!!期待してるから!!