其の606:暴走の果てになにが見えたのか「バニシング・ポイント」

 ・・・またまた忙殺されている間に、まもなく6月も終わり・・・(今年は芸能人のゲス不倫といけないクスリの使用多過ぎ!たのんますわ・・・)。今年も半分終わっちゃうよ(早)!

 
 さて、今回紹介するのは「バニシング・ポイント」(’71・米)です。監督は以前紹介した「ロリ・マドンナ戦争」のリチャード・C・サラフィアン。筆者の大好きな<アメリカン・ニューシネマ>であり、カーアクション映画であり、ロードムービー、一種の麻薬トリップムービー・・・にして“カルト映画”でもある。いまの若い人にはタランティーノの作品「デス・プルーフ in グラインドハウス」の後半に出てくる白いクルマ(70年型ダッジ・チャレンジャー)で“引用”された映画・・・といった方が分かりやすいかも!?!?


 いまとなっては“70年代のアメリカ”ー。新車の陸送屋をしているコワルスキー(→演じるはバリー・ニューマン)はひと仕事を終え、続けざまに“白の1970年型ダッジ・チャレンジャー”の陸送を依頼された。休憩も取らずクルマに乗った彼はすぐさま覚せい剤を購入すると、その知人の売人に自ら「明日の午後3時までの15時間でここデンバーコロラド州)からサンフランシスコ(カリフォルニア州)にクルマを到着させる」と宣言、賭けをする。猛スピードでクルマを走らせるコワルスキーは途中、当然の如くスピード違反で警察に追いかけられるものの、見事な操縦で振り切った。これが地方ラジオ局の黒人DJ・スーパー・ソウルに取り上げられて話題に。追跡してくる警察を蹴散らし、車を爆走させる彼に対して、スーパー・ソウルら共感する市民たちの輪が広がっていく。事態を重くみた警察は、その威信にかけて執拗にコワルスキーを止めようと行動する・・・!


 タイトルのバニシング・ポイントは“消失点”という意味。主人公・コワルスキーが何故無謀な賭けをしたのか説明はないが、タイトルそのまんま“自身の消失点”に向かうかの様に行動しているとしか思えない。でも、その姿がかっこいいのよ!

 <21世紀視点>では上記の粗筋だけでは無茶苦茶な男にしか見えないと思うけど(デンバーからサンフランシスコまで、その距離およそ2000キロ!そりゃ暴走するっきゃない)劇中、“合間合間の回想シーン”として、コワルスキーは「海兵隊員」としてベトナム戦争に従軍(で心に深いを負った)、レースドライバーとしても活躍(だからやたらクルマの運転が上手い)。警官として働いたこともあったが、上司が捕まえた少女をレイプしようとしたところ、彼女を助けたことでクビ。更には愛する女性をも亡くし、現在はひとり、陸送屋の仕事・・・。「泥沼のベトナム戦争」、「学生運動の終焉」、「社会への閉塞感」、「未来への不安」・・・70年代の世相・当時を生きる人々の心情を反映させたキャラクターが彼だったのだ。最後どうなるのかは・・・書かないから、御自分の目でご確認を^^

 砂漠でヒッピーたちが集まって行っている新興宗教の集会とか、真っ裸でバイク乗ってるお姉さんとか(昔の永井豪の漫画みたい:笑)60年代末から70年代当時の風俗描写も満載な今作。爆走する1970年型ダッジ・チャレンジャーの走りは凄いよ〜!なんといってもCG一切なしの全部実写だから!!どんだけスタントマンがいて、どれだけのクルマが撮影でぶっ壊れたのかは生憎詳細は不明だが、やっぱり<生のスタント>に勝るものなし!当時の映画屋さん達の技術と労力に改めて敬意を表する次第。

 今作の上映時間は99分と記載されていますが・・・どうやらこれは<不完全版>。一説では、当時現行より8分長いバージョンがあって以下の2か所がカットされてるそうな。
①「ヒッチハイカー(→演じるのは「愛の嵐」のシャーロット・ランプリング!)を拾って、性的関わりを持つ場面」
②「ベトナムで従軍中、負傷した仲間を運ぶ道程で自身も負傷する回想シーン」
 確かに劇中、コワルスキーの彼女が彼の身体の傷について話をする回想シーンがあって、イマイチ中途半端な描写に感じられたので②はあった方がいいなと思うけど・・・①は特にいらんかな。警察の妨害で途中、大分時間をロスしているので、さらに女性拾ってエロいことしてたら「そんな時間ないだろっ!」とツッコみたくなるし(笑)。

 
 これまた<21世紀視点>で観れば・・・主演のバリー・ニューマンさん他、俳優さんたちは語られないメンバーだし(失礼!)、リチャード・C・サラフィアン監督は今作が頂点(本人によればオチはスタジオ側の提案だったそうだが・・・)。でも「バニシング・ポイント」によって彼らの名は映画史に永遠に刻まれた。「快作」です!


 さて来月は・・・<地球破壊王>ことローランド・エメリッヒによる20年ぶりの「インデペンデンス・デイ」の続編(バカ映画であることは百も承知)と、自衛隊の構図がまんま「エヴァ」の庵野秀明総監督の「シン・ゴジラ」でも観に行って、浮世の憂さでも晴らしますかな^^