其の215:マカロニウエスタン再考<番外編>

 本来はここに三池崇史監督、超豪華オールスターキャストによる映画「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」を更新したかったのだが・・・残念な結果となりました(涙)。マカロニスタイルの「和製西部劇」という企画は良かったのだけれど、特に前半が状況設定や登場人物の説明(回想シーン)ばかりでドンパチなし(苦笑)。後半ハジけた分、なおのこと残念でした(構成と脚本の失敗)。良かったのは桃井かおりの「立ちション」か(笑:親交のある評論家先生は今作を観たあと「続 荒野の用心棒」、「殺しが静かにやって来る」、「ガンマン大連合」を観て心の平静を取り戻したそうだ)。

 
 ということで筆者も気をとり直してエンニオ・モリコーネのサントラ聴きつつシリーズ完結作<番外編>を執筆!最後は「メキシコ革命」を舞台にしたマカロニを紹介します。ちなみにマカロニでよく取り上げられた「南北戦争」は1861〜65年、「メキシコ革命」は20世紀初頭のことなので<年代>が違うことをどうぞお忘れなく^^この「メキシコ革命」を取り上げた監督たちは大勢いるのですが、まずは彼らを代表して「マカロニの立役者」セルジオ・レオーネの作品から。

 セルジオ・レオーネ監督作「夕陽のギャングたち」(’71)は、子沢山の山賊(ロッド・スタイガー)とアイルランドで革命に失敗し流れてきた爆弾使いの男(ジェームズ・コバーン)がコンビを組んで政府軍に戦いを挑むもの(当初、プロデュースに専念しようとしていたレオーネが結局自分でメガホンをとることになったいわくつきの作品でもある)。これ、マカロニファンの間では結構評判いいんだけど筆者はそれほど評価しない。「革命の混沌を描きたかった」とはレオーネの弁だが、それにしてはコバーンのセンチメンタルな回想シーンの挿入ばかりやんけ(この回想の度に流れるモリコーネの音楽は絶品)。ラストも爽快感まるでなし。レオーネ自身は(設定が20世紀初頭という事もあってか)今作をウエスタンだと思っていなかったそうだが・・・それにしても、ねぇ。


 三池の「ジャンゴ」の元ネタかつアメリカのフィルムセンターでも保存されている「続 荒野の用心棒」の監督が「第2のセルジオ」ことセルジオ・コルブッチ。先述の評論家先生が見直した3本は全てコルブッチの作品である。このコルブッチも通称<メキシコ革命三部作>として「豹/ジャガー」(’68)、「ガンマン大連合」(’70)、「進撃0号作戦」(’72)を監督している。中でも筆者イチオシの傑作は「豹〜」の姉妹編「ガンマン大連合」だ^^これはマジで面白い!

 貧しい農夫の主人公(トーマス・ミリアン)がひょんなことから革命軍のリーダーとなり、武器商人のスウェーデン人(「ジャンゴ」ことフランコ・ネロ!)らと共に大活躍するお話。「豹〜」と似てる話だから「ガンマン〜」は「姉妹編」とか「リメイク」だとか言われるけれど「豹〜」はラストがくどすぎ!筆者なら真っ先にケツをカットする(笑)!その点、「ガンマン〜」は映画の始まりからモリコーネによるノリノリの主題歌が流れ(作詞コルブッチ)一気にヒートアップ!途中、お約束のガトリング砲も出るし(笑)、ラストの終わり方もよし。「革命もの」はこうでないとあかん^^蛇足だがーいま筆者が聴いているサントラは「夕陽のギャングたち」と「ガンマン大連合」である(笑)。


 そして最後に「革命もの」の秀作をもう一本!レオーネがプロデュースした「ミスター・ノーボディ2」の監督ダミアーノ・ダミアーニによる「群盗荒野を裂く」だ。にしても映画オタクじゃないと作品名も監督名も知らないだろうなぁ〜(苦笑)。ナスターシャ・キンスキーの父親クラウス・キンスキーも珍しくいい人役で出てます。

 粗野だが人望のある群盗のリーダー(「夕陽のガンマン」のジャン・マリア・ヴォロンテ好演)とわけあり気なアメリカ人青年が友情を結びつつ、政府軍と戦い奪った武器を将軍様に売買してゆく日々が描かれてゆく。珍妙な武器や大胆すぎるガンプレイが売りのマカロニではあるが、今作はその意味でもかなり異色(一部では「社会派マカロニ」とも)。ストーリーも二転三転し(青年の意外な正体も判明)観ていて飽きることがない。ダミアーニ曰く「社会の底辺の人々に興味がある」との言葉通り、深いテーマもあるような気がする革命ドラマ。音楽は「イル・ポスティーノ」のルイス・エンリケス・バカロフ。監修には(またしても)エンニオ・モリコーネ!!70年代のスプラッター時代劇に三隅研次の影響があるように、マカロニウエスタンの音楽にはモリコーネの影響が絶大なのであった。


 最近、DVDながらエイドリアン・ブロディキーラ・ナイトレイ出演のサスペンス「ジャケット」とか、「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラック主演のコメディ「ナチョ・リブレ 覆面の神様」ほかを観ましたが・・・イマイチでした(展開がみえみえで)。冒頭の「ジャンゴ」同様、そうそう面白い映画ばかりじゃないって事ですわ(分かりきった事だけど)。