其の592:冷戦秘話「ブリッジ・オブ・スパイ」

 昨日は大雪で大変でしたね・・・。気象庁さん、“暖冬”ちゃうんかい!?

 「リンカーン」(’12)以来のスティーヴン・スピルバーグ監督作「ブリッジ・オブ・スパイ」を観てきました。筆者は“スピルバーグ世代”ですからねぇ・・・アカデミーにもノミネートされてますが大して話題にならなくても、内容が地味(実話)でも彼の監督作は観る(笑)!!平日の昼間観たおかげで客はお年寄りばっかりでしたけどね(苦笑)。


 東西冷戦まっただ中の1957年、アメリカ。ソ連のスパイとしてルドルフ・アベル(=マーク・ライランス)がFBIに逮捕された。一切の協力を拒否した彼に、弁護士ジェームズ・ドノヴァン(=トム・ハンクス)は政府の依頼を受けて、一度は断ったものの弁護を担当することに。“敵であるソ連のスパイを弁護する男”として、世間から嫌がらせを受けながらも彼は死刑と思われたルドルフを30年の禁固刑に減刑することを成功させたー。1960年、ソ連領内でアメリカの偵察機U−2が撃墜され、操縦していたフランシス・ゲーリーパワーズが拘束。禁固10年の刑が宣告される。その2年後、ドノヴァンはCIAからパワーズとルドルフの<スパイ交換>の交渉を任命される。政府の公式支援なしで敵地・東ベルリンで行われる危険なミッション。現地を訪れた彼は、米国人留学生がスパイ容疑で東ドイツに拘束されている事実を知る。ドノヴァンはCIAの意向を無視してルドルフとパワーズ及び留学生2人の交換を考えるが・・・!?


 イギリスの劇作家マット・チャーマンが書いたシナリオを気に入ったスピルバーグトム・ハンクスを自らキャスティングしての映画化(スピルバーグとハンクスのコンビは今回で4度目)。さらに脚本のリライトに、かのコーエン兄弟を雇い入れた超豪華スタッフ!ちなみに題名の「ブリッジ・オブ・スパイ」とはスパイ交換が行われた独・グリーニッケ橋の事。丁度東西にかかる場所とあって、ここではちょいちょい諜報活動のやりとりが行われていたそうな。

 絶賛公開中につき、あまり詳しくは書きませんけど・・・まず画面から冷戦時代独特の“空気感”がよく出ているな〜と感心した。天才撮影監督ヤヌス・カミンスキーの抑えた色調に加え、「美術」の拘りぶりは相変わらずのスピルバーグ印。当時の風景を求めて舞台となるドイツのほか、ポーランドとかでもロケしたそうで。「シンドラーのリスト」や「プライベート・ライアン」同様、<歴史マニア>スピルバーグの拘りがよく出ているなぁと。「ベルリンの壁」が建造されるところも再現されているし、サスペンス映画としてだけでなく、観ていて近現代史の勉強にもなる(笑)。あと、恐ろしい時代であったとも改めて・・・。

 主人公を演じたトム・ハンクスは・・・実際のジェームズ・ドノヴァンにはまるで似てないけど(苦笑)、「トム・ハンクスアメリカの良心」ということで安心して観れますね^^。東ドイツに行った主人公が風邪ひいたり、少しだけドイツ語しゃべるのはドノヴァンの著作を読んで書かれていたことをハンクスが現場で足したそうで。さすがスピルバーグと同じく歴史マニア(笑)。一方、ソ連のスパイを演じたマーク・ライランスの木訥とした抑えた演技がとてもいい。ほとんど会話劇といってもいい今作だが、この2人の演技+スピルバーグの演出あってこそ、2時間半近い長尺を飽きさせずに見せ切る。余談だがマーク・ライランスは実際の彼と激似!!本人の写真みてビックリしたわ。

 まぁ、内容自体は“地味”かもしれないけど、“いい映画”ですよ!面白いというよりは、いい映画^^。こういう知られざる出来事を世界的に知らしめるのは、やはり映画というメディアあってこそ。まだまだ一般の人が知らないお話は沢山あると思うので、興行成績いかんにかかわらず映画製作者の方々には埋もれた歴史秘話を作り続けて欲しいと思います。 

 今回、一番筆者が驚いたのは・・・今作の音楽担当がジョン・ウィリアムズではなく、トーマス・ニューマンだったこと(「ショーシャンクの空に」や「007 スカイフォール」他)!!・・・どうやらオファーした時は彼はご病気だったそうで・・・(残念)。でも、今作の音楽も映像とマッチしていたから良かったけどね。幸いスピの次回作ではウィリアムズ復帰ということで良かった良かった!!


 新年早々、スタローン出演作にスピルバーグの新作が観られたし、まもなくリドリー・スコット監督作「オデッセイ」とタランティーノの新作「ヘイトフル・エイト」が日本公開!世の中的には新年早々、事件・事故いろいろある2016年ですが、映画的にはいい年になりそうだ❤