其の588:極悪少女コンビの日々「小さな悪の華」

 いよいよ2015年も残り僅か!あと年内2回書けるかなぁ〜・・・。これでも筆者も忙しいのよ(笑)。

 さて、前回「エスター」を紹介しましたが、<恐るべき少女>つながりで今回は「小さな悪の華」(’70)を取り上げます。このブログ、久々のおフランスの映画にして、しかもカルト(笑)!劇中、主人公がボードレールの「悪の華」とか読んだりしていて、そこんとこは押見修造の漫画「悪の華」と共通していますが、この映画とは直接関係ないんで御注意下さい^^


 カトリック教系の寄宿学校に通う15歳の少女、黒髪のアンヌ(=ジャンヌ・グーピル)とブロンドのロール(=カトリーヌ・ヴァジュネール)。2人は悪魔を崇拝し、悪の道を突き進む事を誓う。学校が夏休みに入ると2人は親の目を盗んでは窃盗や放火、庭番の小鳥を殺す等、行動をエスカレートさせる。そんなバカンスも終わりに近づいたある日、2人は自らの行動によって思いもかけない事態を引き起こすことになる・・・!!


 なんとも恐ろしい2人の少女を描いているのだが(→同じ事したら即、捕まるので良い子は真似しないでね❤)実は今作、1954年にニュージーランドで実際に起った「パーカー、ハルム殺人事件」をヒントに作られたもの(実際の事件は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソンが’94年に「乙女の祈り」という作品で映画化してる。これについてはまたいつか^^)。こちらはあくまで相当脚色してるので<実話の映画化>ではありません。

 地方ながら金持ちのブルジョア娘で、日々の生活を修道女や司祭、無関心な親たちに支配されるのが嫌で嫌で、しかも15歳(中坊)という多感な時期(厄介な“思春期”というやつです)・・・性やスピリチュアルなものへの興味(彼女たちの場合は「サタン」)、反権威・反体制への気持ちは筆者もかつては“思春期”があったから分からないでもないが(仏版「太陽族」か?)悪魔崇拝儀式をオリジナルで行うまで見せられると・・・もう大人になったこちらとしては空恐ろしくなるばかり。キリスト教圏の本国フランスで当時、上映禁止になったのも分かる気がする。もっとも我が国・日本では1972年に何の問題もなく公開されているが(苦笑)。

 監督・脚本はジョエル・セリア(1936年生まれ:もちフランス人)。この御仁、決してメジャーではないので(←大半が日本未公開!タイトルだけ観ると、今作以降は「野獣の罠」とか「虐殺コネクション」ほかB級アクションやサスペンス映画が大半みたい)詳しいプロフィールがよく分からんのだけど・・・以下、ご本人のコメントによると、今作の少女たちのように田舎町に生まれた後、子供時代は寄宿学校に預けられ、あちこち転々とさせられたそうな。親とも折り合いが悪く、17歳の時に単身パリに出て、俳優となる。ところが怪我をして、俳優業を断念。そこで業界に残る方法として、ものを書くことが好きな事もあって映画の製作方面を志す。

 企画を練っていたセリアは、ふとその昔読んで衝撃を受けた先述の「パーカー、ハルム殺人事件」の新聞記事を思い出す。これをヒントに<自分たちだけの世界に入り込んだ2人の少女>という事実は生かしつつ、自身の田舎暮らしの体験や主人公同様、自身も影響を受けたボードレールロートレアモン伯爵らのアブない著作(→「悪徳の栄え」のサドといい、フランスの文学者は退廃的な思想がお好きなのかしら??)を織り交ぜ、少年時代の想いもぶち込んで脚本を書き上げた・・・ものの、あえなく“検閲”にひっかかって大手での映画製作は不可能に。そのため、仲間たちと会社を立ち上げて低予算でスタートしたのが今作・・・とのこと。

 “低予算”ということもあったかもしれないが、アンヌを演じたジャンヌ・グーピルは、当時ズブの素人(学生だったらしいが、当時いくつだったのかしら)!ただ彼女的にはジャンヌをすぐさま理解できたそうで、初演技とは思えぬ堂々とした悪女ぶり。・・・超個人的な話だが、筆者は女性の“腋毛”が苦手なので、彼女の腋毛がのぞくシーンはちと引いたが(ヨーロッパの女性はアメリカと違って剃る習慣がないそうだ。21世紀のいまはどうだか知らんが)。一方、相方のロール役、カトリーヌ・ヴァジュネールは既にプロの女優さんだったそうで、アンヌに身も心も依存しているロールを巧演している。加えて“プロ”だけに、アマチュアのジャンヌの代わりにひとりで乳出し担当したりして頑張ったのも偉い(笑)!
 
 印象に残るシーンが多い映画なんだけど(&幾度も繰り返し流れる、いかにも当時のフランス映画らしいリリカルな劇伴!!)・・・毒飲まされて死ぬ小鳥の断末魔の様子や、少女2人が自転車に乗って青春してる場面、ちょっと誘惑するとすぐ襲ってくる大人の男たちとか(笑)いろいろあるんだけど・・・やっぱり一番は“ラスト”だよね!ネタバレするんで書けないけど「こう来たか!!」ってな感じ(当時観てトラウマになった人もいたそうで)。観た後、自分の思春期の頃を思い出したり、性善説性悪説、どちらが正しいのかとか色々考えてしまった。アラフィフの筆者としては、繰り返しになるけれど、今作を観て真似をしない少年少女が出てこないことを切に願います!!



 さて今年は・・・せめて「007」の新作と「クリード」(←「スター・ウォーズ」同様、この年になってまだ「ロッキー」の続きを観る事になろうとは!)あたりは観て新しい年を迎えたいところ(時間がそんなにないんだけどなぁ)。「スター・ウォーズ」はどうせ混むから来年でいいんだけど、新年早々スピルバーグの新作「ブリッジ・オブ・スパイ」が公開されてしまう・・・!う〜ん、まいったまいった・・・(悩)!!