其の544:松本零士先生のお気に「わが青春のマリアンヌ」

 秋らしくなってきたなぁ・・・と思ったら10月になっちゃいました(焦)!2014年もまた仕事以外に特になにもない1年で終わりそうです・・・。

 いまCMやってる「TSUTAYA発掘良品」中の1本、「わが青春のマリアンヌ」(’55仏・独)を鑑賞。これをDVD化したのは敬愛する町山智浩さんの著書「トラウマ映画館」(集英社刊)の影響だとは思いますけど(喜)。筆者的には今作が学生時代、大ファンだった松本零士先生偏愛の1作にして、主演女優が松本女性キャラクターのルーツということもあって長らく観たかった映画の内の1本でした♪



 深い森と霧が立ちこめる湖の中にひっそりとそびえる古城。ここを<寄宿学校>として18歳のマンフレートをリーダーとする訳ありの少年達が暮らしていた。そんなある日、アルゼンチンから来たというヴィンセントがやってくる。彼は動物たちと心を通わすことができる不思議な能力を持っていた。
 そんなある日、素行不良のグループはヴィンセントを連れだって“幽霊屋敷”と噂される湖の対岸にある古い館へと出かけた。一行は無事、ボートで向う岸に到着したものの、館の従者とドーベルマン(犬)に見つかり放々の体で逃げ帰るが、ヴィンセントは取り残されてしまう。銃をつきつけられ屋敷の中に入れられた彼は美しいマリアンヌ(=マリアンヌ・ホルト)と出会うが・・・!?



 監督はベタな名作映画紹介本には必ず入る「望郷」のジュリアン・デュヴィヴィエ(フランス人)。ドイツの作家、ペーター・ド・メンデルスゾーンの「痛ましきアルカディア」の映画化で(←余談だが松本作品に「わが青春のアルカディア」というタイトルの作品あり)、脚色と台詞もデュヴィヴィエ自身で担当しとります。デュヴィヴィエはその昔、日本で大変人気があった監督だが(筆者は世代的に違うけど)・・・今じゃあんまり語られなくなったナ。マンフレートのナレーションでやたらヴィンセントのことを「君、君」言うからゲイの要素入ってるのかと思ったら・・・そうではなかった(笑)。

 全編に溢れる昭和30〜40年代の少女漫画に出てきそうな“ゴシック風且つ幻想的な雰囲気”を出す為、マリアンヌの住む館はオーストリア・フッシェル湖畔の旧家で、少年たちが暮らす城は、バヴァリア地方に残っている、かの大作曲家ワーグナー(!)に関係のある館を選んでロケ。たまに屋外シーンながらバレバレなスタジオセットも散見(苦笑)。

 さて若き日の松本先生を虜にした女優マリアンヌ・ホルトですが(今作では中盤頃ようやく登場する)・・・さすがに森雪やメーテルには似てない。でも美人でエレガント!!きっとこの人のポスターとか見ながら、先生は彼女の似顔絵描くのに励んだと思われる(←あくまで筆者の推測)^^

 今作は<フランス語版>と<ドイツ語版>が平行して作られ、2組の配役のもと、同じ場面の撮影が2度ずつ行われたそうだ。筆者が観たのは<フランス語版>の方なんだけど、<ドイツ語版>の方はマリアンヌ役のマリアンヌ・ホルトとヴィンセントを好きな女子:イサベル・ピア(乳出しあり)の2人は両国語版とも出演しているものの、ボーイズ達のキャストはガラリと変ってるんだって!両方観た人の話ではカット割りもまんまだったそうだから、アフレコで済んだ気がしないでもないが・・・終戦からまだ10年の当時のドイツの状況では色々あったんだろうね。

 西洋の森のシーンには欠かせない(?)鹿ほかの森の動物たちー。「鹿の爆走シーン」もあるんで、当然のことながら“調教された”動物たちなんだろうけど・・・当時、「動物プロダクション」があったかどうかは定かではないが、あそこまで数集めるのは大変だったに違いない。あと撮影の方も(動物はなかなか言うこと聞かないからね〜:→筆者の経験デス)。


 いつものようにオチは書きませんが・・・40代半ばで観た筆者にとっては“トラウマ”にはならないけど、このちょいホラーテイスト入った青春映画は思春期の時に見たら「キュン❤」とするかも(学生時代に見た松本先生は「キュン」としたひとり^^)。一目惚れとまでいかなくても、こういう経験は・・・男子なら少なからずあるしネ。先述の「トラウマ映画館」では町山さんはまたまた男子が大人になる“通過儀礼”と論じているけど(町山さんは他の作品でもそのパターン多いのよ)、この作品に関しては筆者も素直に同意!!ついでに要望を書けば、近年、女子をキュンとさせる映画が多いけど・・・男子をキュンとさせてくれる映画も作ってほしいものだ。最近、筆者は映画観て「キュン❤」としてないから(笑)。