其の563:これから公開されるミステリー&サスペンス2本

 個人的に2015年公開の“心配映画”のひとつ(←ちなみに他は実写版「進撃の巨人」と「スター・ウォーズ」)、乾くるみ原作、松田翔太前田敦子主演、堤幸彦監督最新作「イニシエーション・ラブ」(5月公開予定)を試写で観ましたよ!原作小説は<青春ラブストーリーがラスト2行で驚愕のミステリーに変貌する>のが“ウリ”でしたが、映画は<最後の5分で全てが覆る>がキャッチコピー。映画化が決まる遥か以前に原作を読んでいた筆者最大の関心は、当然のことながら“如何にして、ラスト2行を映像化するか!?”ということ。ある程度考えていた予想を確かめに試写室へ行ったと言っても過言ではない(笑)。

 ここでこのブログのパターンとして、軽く<粗筋>を書きたいところですが・・・この作品に関しては極力なにも知らずに観た方がいいので割愛!お話自体は割と良くあるベタな恋愛もの。男子なら1度や2度、少なからずこういう経験はあるので、40代の筆者的には「青いな〜」と笑いながら観たけどね^^。

 そして肝心の<ラストの演出>ですが・・・「おお、こう来たか!」という感じ。ある“映像のお約束”を利用しつつ、原作にはなかった1シーンを最後プラスして、非常にわかりやす〜い“演出”でタネ明かし。この方法はめっちゃ分かりやすい分、それまでの雰囲気ブチ壊しで・・・賛否両論出そうだな。コピーに<あなたは必ず2回観る>とあるけれど、ここまで説明されたら1回観れば十分だろう^^。<ラストカット>の後の展開の方が気になる(笑)。

 80年代後半に思春期を過ごした筆者的には懐かしいアイテム(スタッフは探すのに大変苦労したそうな)に往年のヒット曲の数々が流れ(そこはほぼ原作の指定通り)少々当時を思い出しましたよ^^。松田翔太はドラマの「ライアーゲーム」の時から好きな俳優だし、あっちゃんもさすがAKB48の元センター、ブリブリのかわい子ちゃん(←死語)キャラでハマってたと思う。彼女が出てくると花が咲き乱れるのは笑った(堤監督、今作はちょっと本領発揮されましたな^^)。劇中出てくる「男女7人秋物語」のネタつながりで片岡鶴太郎手塚理美がキャスティングされてた遊びはーいまの若人には分からんだろうな〜(笑)。まぁ、個人的に<一番驚いた>のは、とんねるずの憲さんが出演してたことだけど(笑)!
 <余談>ですが、姉妹作と呼ばれる小説「セカンド・ラブ」も面白かったけど、今作程の衝撃はなかったと書いておこう。



 「イニシエーション〜(て、略すと「オウム」みたいで怖いな)」が“青春ミステリー”なら、筒井哲也による漫画の実写映画化作「予告犯」(6月公開予定)は“ミステリー”に加えて“サスペンス”のカテゴリーにも入る一作(勿論、これも試写会で観た)。


 新聞紙で作ったマスクを被り、ネット上で犯行を予告する男(=生田斗真)。彼は集団食中毒を起こしながら逆ギレ会見した食品会社に放火したり、レイプされた女子に「自業自得」と書き込み、ネット上で炎上した男に性的悪戯を行う等、現状の法律では裁かれない人々に次々と制裁を加えていく。警視庁サイバー犯罪対策課の捜査官・吉野(=戸田恵梨香)は、この謎の予告犯・通称“シンブンシ”の捜査に乗り出すが・・・!?


 先日捕まった「つま楊枝男」の投稿動画じゃないけれど、まさにSNS全盛のいまを感じさせる一作。ネット社会の功罪に加え「正規雇用・非正規雇用」、「ネットカフェ難民」、「下流社会」といった現代ニッポンが抱える闇がベースにあって・・・なかなか考えさせてくれる映画だった。

 監督は中村義洋。一時期、井坂幸太郎原作の御用達監督だった感がなきにしもあらずだったが、湊かなえ原作の「白ゆき姫殺人事件」でもネット社会の功罪を取り上げていた。その手法を更に今作で推し進めている。映像的には特に特徴のある監督さんではないけれど、今回も手堅い演出で飽きさせない。生田斗真演じる主人公の<過去>は・・・筆者も身につまされた。詳しく書けないけど、滝藤賢一演じるIT会社の社長はぶっとばしてやりたい(笑)。

 原作漫画を未読なので原作通りなのかどうか何とも言えないけど・・・ちょっと“シンブンシ”の最終目的が弱いかな!?ネット社会のいまなら・・・なんかうまいことしてリサーチ出来るような気がしなくもないし。あと邦画独特の“泣かせ”がね・・・。あそこまでベタにやらんでも、もっといい見せ方もあった気がしたけれど(その辺りはハリウッド映画は巧いから参考にして欲しかった)。

 
 「イニシエーション・ラブ」と「予告犯」、作風が違うので一概に比較はできませんが、あくまで筆者の個人的な好みとしては「予告犯」の方が好きかも。「あ〜、面白かった!」という純然たる大娯楽作も大好きだけど、考えさせるものがある作品って・・・後を引くよね。「予告犯」はそういう意味では「アメリカンニューシネマ」の遺伝子を引き継いでいるかもしれないな!