其の584:壮絶!ご近所バトル「ロリ・マドンナ戦争」

 いよいよ11月になってしまいました!今年も残り早2か月・・・早っ、て毎年書いてる気がしないでもない(苦笑)。

 前々回で書いた“ハットフィールド家&マッコイ家”の争いーをモデルに書かれた小説「ロリ・マドンナ戦争」。1973年に映画化されました。脚本(共同)を務めたのは原作者でもある女流作家スー・グラフトン。「バニシング・ポイント」(’71)のリチャード・C・サラフィアンが監督した“ニューシネマ”です。野沢尚脚本の映画「Vマドンナ大戦争」は、今作からタイトルを拝借したと考えるのは・・・筆者の気のせいか(笑)。


 現代のアメリカ(※映画公開当時)、テネシーの高原地帯でー。レイバン・フェザー(=ロッド・スタイガー)が君臨するフェザー家とパップ・ガットシャル(=ロバート・ライアン)を家長とするガットシャル家は、両家の間にまたがる牧草地の所有をめぐって長年対立していた。そんなある日、フェザー家の長男スラッシュ(=スコット・ウィルソン)と三男ホーク(=エド・ローター)は1人の少女(=シーズン・ヒューブリー)をバス停から誘拐してくる。彼女の名前はルーニー・ジル。ルーニーは旅の途中のただの通りすがり。しかしフェザー家の人々は、ルーニーをガットシャル家の次男ルーディー(=キール・マーティン)の結婚相手“ロリ・マドンナ”だと信じて疑わず、そのまま彼女を監禁してしまう。・・・実はこれ、ルーディーが考えた<計画>!“ロリ・マドンナ”という<存在しない女性>をでっち上げ、「ルーディーとの結婚で、バスで8時半に着くわ。ロリ・マドンナXXX(注:Xはキスの意)」との旨を書いた<ニセ葉書>を郵便受けに入れておく。フェザー家はガットシャル家を監視しているので郵便受けからその葉書を盗み出し、“ロリ・マドンナ”の存在を認識。ガットシャル家を困らせてやろうと彼女を誘拐すべくバス停に向かう。その隙をついて取られた豚を奪い返し、さらには彼らが作った密造酒製造場を荒らしてやろうーというもの。計画は成功したものの、全くの偶然ながら何の関係もない少女が監禁される事態に!そんな中、ガットシャル家の末娘シスター・E(=ジョーン・グッドフェロー)がスラッシュとホークにレイプされてしまう。怒ったパップは牧草地に“ここは我が家の私有地である”ことを書いた立札を立てた為、ここに両家の全面戦争への火蓋が切って落とされたー!!


 “ハットフィールド家&マッコイ家の史実”を大分捻りましたな!原作も映画もジャンルとしてはバイオレンス・アクションの部類に入ると思うんだけど、両家にはまるで関係のない人物を創作して客観的な視点(=読者)を加えたアイデアは素晴らしいと思う^^。

 今作は日本でソフトにはなっていないんだけど(メーカーさん、頼みますよホンマに)タイトルは「The Lolly Madonnna War」の筈が海外版DVDのジャケットも本編のタイトルクレジットも“Lolly Madonnna XXX”・・・。これ、キスの意味の「X」が3つになると“トリプルエックス”、いわゆる“成人指定”と間違われたため改題されたのだそうだ(ややこしい)。タイトルで超エロい内容をイメージするとまるで違うので注意して下さいね(笑)。

 「ハットフィールド&マッコイ」もそうだけど・・・意見の相違から憎しみあい、果ては復讐&暴力の連鎖・・・当時はアメリカン・ニューシネマの全盛期だし、まだベトナム戦争やっていたから、その“暗喩”も作品には込められたそうだが・・・映画を観る上ではそこまではあまり感じなかったけど、人間の愚かさや悲しさがはたと見て取れる作品になっている。

 2時間弱の上映時間で登場人物は総勢14人(両家それぞれ大家族だから)!原作は拉致られて自分は“ロリ・マドンナ”ではないことを切実に訴える場面から始まり(映画は両家のモノクロ写真からスタート)、原作には彼女がいない<対決シーン>にも映画では加わったり、ちょいちょい状況設定を変えてヒロインを“立つ”ようにしているし、ロケ地や両家の家の建物も原作のイメージをよく再現したりしているんだけど・・・生憎、映画は評判悪し(残念)。当時の一部評論家は「“ロリ・マドンナ”が機能していない」旨を指摘したそうだが・・・筆者もそう思った。展開に彼女の存在が関係ないのよ!元々争っていて、娘をレイプされただけでもバトルの開始には十分でしょう。長編小説を映画化する場合はキャラクターの心理描写をとばすしかなく、それが14人もいたら、相当な尺がないと描ききれない。もう少しキャラクターを整理した方が良かったのではないか・・・と思った次第。当のスー・グラフトン女史も完成した映画を観てショックを受け「小説と映画の脚本の違いがわかってなかった」と後年コメントしたそうな。ちなみに小説は邦訳されてるので、ご興味ある方は是非読んでみて下さい❤

 粗筋には一部漏れたけど・・・出演俳優陣は凄い顔ぶれ。ロッド・スタイガーロバート・ライアンを筆頭に若き日のジェフ・ブリッジスやゲイリー・ビジーも出てる!ジェフ・ブリッジスは昔からいい役やってたんだね(笑)!こういうのも昔の映画をいま観る楽しみのひとつ♪タイトルロールの“ロリ・マドンナ”を演じたシーズン・ヒューブリーはこれが映画デビュー作。彼女はいま余り語られる女優ではないけれど・・・今作ではパンツ見せて頑張ってます(笑)。

 苦言も書いたけど、ニューシネマとしてはそれほど無残な出来じゃあないですよ。脚色を誤ってダダスベりしている映画を筆者は過去に山ほど観てるし(笑)。日本のメーカーさんに今作のソフトの発売を促す為にも当ブログにて書かせて頂きました^^。にしても映画の舞台になっている高原地帯に住む貧しい白人たちの事を<ヒルビリー>と呼ぶそうだが・・・21世紀の現在もあんなボロボロの家に住んで、密造酒作ったりして暮らしているのかしらん?!気になるわ〜!!