其の570:<短期集中掲載3>「ヴィクセン」の名がつく作品群

 鬼才ラス・メイヤー監督の集中掲載も今回でラストです!早6月も下旬だし、次回からは別の映画書きますんで^^


 1978年、ラス・メイヤーセックス・ピストルズ主演作「 Who Killed Bambi?」の監督をオファーされ、撮影を開始するも、トラブルによって降板(←最初、予定されていた監督は「マイラ 〜」のマイケル・サーン!!最終的にはジュリアン・テンプルが担当してようやく完成した)。
 翌79年「ウルトラ・ヴィクセン」をこれまで同様、何役も兼任して世に送り出す。当時の邦題は「ウルトラ・ビクセン/大巨乳たち」!・・・1979年って、AVギャル・松坂季実子の登場で“巨乳”というワードがメジャーになる遥か以前だよ・・・当時、洋ピンに邦題つけてた宣伝会社の方々のネーミングセンスに改めて驚愕。ちなみに原題は「 Beneath The VALLEY OF THE Ultra VIXENS」という「ワイルド・パーティー」の原題とめちゃ似たもの^^


 アメリカの片田舎。廃品置き場で働くラマーは妻ラボニア(=おなじみキトゥン・ナティヴィダッド)との夜の生活の際、お尻でしかイケなくなっていた。夫をノーマルに戻すためにラボニアはストリッパーに扮したり、結婚相談と歯医者を兼任している変態医師の下にカウンセリングに行ったりするものの、一向に改善されない。そこでラマーは最後の手段として地元でラジオDJを行っている女・ループを訪ねるのだが・・・!?


 タイトルに“ウルトラ”がついているから・・・メイヤーとしても“究極最終作”だと最初から考えていたのかもしれない。巨乳女優陣も先述のキトゥンのほか(←彼女とメイヤーはしばらく同棲していたそうな)、これまた常連のウッシー・ディガードが「スーパー・ヴィクセン」と同じ役で出てきたり(笑)、白人から黒人女性まで盛りに盛っている(笑)。

 そんな今作だが・・・従来やってきたことを微妙に設定変えてやっているだけで(編集も選曲パターンもなにひとつ変わっていないにもかかわらず)・・・コメディながら作品がハジけてない。これまでの作品を観てきた観客としても(筆者含む)内容のマンネリ化が否めなかった。ラストにメイヤー自身が監督役で登場するメタフィクション構造もそれに拍手をかけた様な気もする。この当時、映画業界は77年公開の「スター・ウォーズ」による<SF映画全盛期>。かつポルノ映画もハードコアが主流となっていた。興行的にも苦戦したと思うし、なによりメイヤー自身も時代が変わったことを製作者としても感じたのではないか。こうして彼は長い<沈黙期間>に入った・・・。


 
 20余年を経た21世紀最初の年となる2001年、ラス・メイヤーは突如、新作「パンドラ・ピークス」を発表!「ウルトラ・ヴィクセン」発表からこの長きの間に、自伝的作品を発表する噂(→結局、頓挫した)や日本での再上映&評価(?)が彼に再び活力を与えたのかもしれない。

 「パンドラ・ピークス」とは主演している女優の名前そのものズバリ(・・・巨乳だけど、シリコン入れてるのバレバレ。当時のメイヤーの“新しいミューズ”だった)。そんな彼女のプロモーション的映像にメイヤーの近況や個人的意見が合間合間に挿入されてくる構成。

 筆者も当時、劇場で観たけど・・・ストーリーがない分、途中で飽きたのが正直な感想(早い編集は相変わらずだったが)。よほどのマニア以外は1度見れば十分(苦笑)。この年、ウィリアム・ウィンクラー監督が往年のメイヤー女優陣を集めて「ダブルD・アベンジャー」を作る等、“メイヤー再起動”を印象付けた年となった。「ダブル〜」もファンが1回観れば十分な出来だけど(苦笑)。


 3年後の2004年ー。ラス・メイヤーは肺炎に伴う合併症のため、ロサンゼルスの自宅で死去。享年82。結果「パンドラ・ピークス」が遺作となり、約半世紀に渡る監督人生を終えた。幾度かの結婚や離婚、大手スタジオからの契約解除等、いろいろあった彼だが、好きな巨乳映画(っていうジャンルはあるのか?)を作り続け、晩年にも年下のフィアンセがいたそうだから・・・いい人生だったのではなかろうか。巨乳映画のパイオニア且つ巨乳映画界の帝王として、今後も彼の名前は語り継がれてゆくだろう。・・・ごく一部で(笑)。


        <「ヴィクセン」の名がつく作品群:この項、完>