其の569:<短期集中掲載2>「ヴィクセン」の名がつく作品群

 いよいよ関東も梅雨入り!憂鬱な季節となりました・・・。でも農作物の成長の為には致し方なし。「晴耕雨読」というスタイルで生活したいんだけどねぇ・・・人生はなかなかうまくいきませんネ。

 先日、ニール・ブロンカンプ監督作「チャッピー」を観ました。上映中なので詳しくは書きませんが、最新AI(人口知能)を搭載したロボットが主人公のコメディ&アクション映画。「第9地区」は大傑作ながら、前作「エリジウム」がイマイチだったので少々心配してたんだけど「チャッピー」はなかなか面白かった^^!もう少し長く<ロボットVSロボット>のバトルシーンがあったらもっと良かったんだけど・・・(敵役でヒュー・ジャックマンを起用したのは・・・「リアル・スティール」のパロディか?)。そんなブロンカンプの次作は何と「エイリアン5」(ちなみに「チャッピー」にシガニー・ウィーバー出てる)!!まだこのシリーズ引っ張るか・・・とも思うが、彼がどうアプローチするのか楽しみ❤


 さて、前置きはこのあたりにして“本題”へ(笑)。“巨乳映画の帝王”ラス・メイヤーは1975年、「スーパー・ヴィクセン」を世に放つ(監督・脚本・撮影ほか兼任)。前回も書いたけど、公開当時の邦題は・・・「淫獣アニマル」!!!

 
 ガソリンスタンドで働く青年クリントは、グラマーな彼女・スーパーエンジェルと同棲中。そんなある日、彼女のあまりの我がままぶりに激昂したクリントは彼女を暴行した容疑で逮捕されてしまう。一方、好き者のスーパーエンジェルはクリントを逮捕した警官・ハリーを部屋に引っ張り込んだものの、彼が勃たなかったため、ハリーに悪態をつく。その結果、逆上したハリーに惨殺されてしまった!!ハリーの策略でスーパーエンジェル殺害の容疑者にされたクリントは町から逃亡。ヒッチハイクで逃亡の旅を開始するのだが・・・!?


 ハードな暴力シーン(特に殺人シーンはホラー映画並)とギャグ、当然の如く登場する巨乳女優の数々とラストの大アクション・・・(何故?:笑)。続けて何作か見続けた身としては「この人らしいな〜!」という安定した仕上がり。「逃亡者」をメイヤー流喜劇にするとこうなるーといった感じですか(笑)。前回書いた「ワイルド・パーティー」で“Zマン”演じてたジョン・ラザールや、「ワイルド〜」の他、後年「ランボー/怒りの脱出」にも出演するチャールズ・ネイピアも出てます(←彼はメイヤー作品の常連)。

 複数の巨乳女優が出演しているが(なんせ原題は「Super VIXENS」と複数形。出番は少ないものの相変わらずハジも出てる^^)、今作の“筆頭巨乳”はウッシー・ディガード(牛デカいど・・・日本語として出来過ぎた名前)。あまり台詞はないのだが、その理由はメイヤーによればスイスから来たばかりで、あまり英語が出来なかったため・・・らしい(生まれはスウェーデンのようだが)。そんな彼女は酪農を営む年配の夫に嫁いだ若妻役で、名前は“ソウル”・・・!殺される“スーパーエンジェル”といい、ネーミングのセンスのなさ・・・いや、そのセンス、凄過ぎ(爆笑)!!そんなウッシーも“常連俳優”のひとり・・・そういった意味ではメイヤーは男女問わず旧知の俳優を大事にする監督だといえなくもない(かなり好意的に書いてます^^)。


 翌1976年。メイヤーは「UP!メガ・ヴィクセン」を監督(原題はただの「Up!」なので、厳密にはヴィクセンものではないけれど)。これまで同様、製作・撮影も兼任する。今作に先述のウッシー・ディガードがプロデューサーの一人として参加!どうもメイヤーが彼女とHするため手元に置いておくための措置だったそうな(公私混同も甚だしい:苦笑)。

 
 アメリカの片田舎。元ナチス党員でヒトラーそっくりの男・シュワルツは自身の城内で日々変態プレイに耽っていた。ところが入浴中、何者かによって放り込まれたピラニア(!)によって殺害されてしまう。程なくして、山中をジョギングしていた巨乳美女マーゴ(=レイヴン・デ・ラ・クロワ)は声をかけてきた男にレイプされそうになるものの、得意の空手で殺害。その様子を見ていた保安官・ホーマーは事件をもみ消す代わりに自分とつきあうようマーゴに迫り、2人は同棲するように。その後、アリスとポールの若夫婦が経営するダイナーでマーゴが働き始めると、その美貌に男の客が殺到するが・・・!?

 
 上に書いたように一応<殺人事件の犯人捜しをするミステリー>なんだけど・・・話が二転三転四転・・・と横道にそれにそれまくるので、観ていてヒトラー似の男が誰に殺されたのか、どうでもよくなってくる(笑)。そんな観客の話の筋を忘れてきた“頃合い”を見計らうかのようにメイヤー作品初出演の巨乳(←今回、この文字書いたの何回目かいな?)キトゥン・ナディヴィダッドが森の中で全裸で踊りながら登場、「さて誰が犯人かしら?」とちょいちょい入ってきては本題を思い出させてくれる構成(苦笑)。勿論、キトゥンが以降の作品にも出演することになるのは書くまでもないだろう。

 ピラニアを風呂に投げ込んで人殺す発想とそのスプラッタシーンも凄いけど(笑)、まるで話に関係ないと思われたマーゴの正体&殺人の真犯人・・・エロ目的で観に来た観客を驚愕、茫然とさせるストーリー展開・・・メイヤーの撮影手法や編集その他は以前から何も変わってないんだけど(→空手で男倒す方法も女が下手な男より強いのも前回少々書いた「ファスター・プシィキャット キル!キル!」の焼き直しだし)「女の裸が売りだけど、それでもストーリーが同じものは創らん!」という映画作家メイヤーの創作姿勢の現れかと・・・いや、そう思いたい(苦笑)。一部の映画マニアの間では今作は“カルト”と目されているようだが、筆者的にはラス・メイヤーの代表作のひとつにして怪作&珍作という扱いとしたい。ストーリーの複雑さは「ツイン・ピークス」、展開の早さはドラマ「もう誰も愛さない」の先駆け・・・と書くのは多分誉めすぎだろうなぁ〜(笑)!?


 “インディーズ”ということである程度、集客が見込めるポルノ映画の体裁を取りながら、ギャグやバイオレンス、一風変わったストーリーや設定を導入して独自の映画作りに邁進したラス・メイヤー。彼はあくまで“乳”にこだわり、同時に<ソフトコア(本番シーンなし)>にこだわった。だが1972年に公開された「ディープ・スロート」の大ヒットにより、時代は<ハードコア(挿入描写あり)>が主流となっていた。挿入描写のないメイヤーの作品はマンネリ化と同時に下火となっていく・・・。


       <次回:この項の最終回「ウルトラ・ヴィクセン」へ続く>

 

(どうでもいい追記)先述の「エイリアン5」は・・・まだ大分先だと思うんだけど、今年は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に「ターミネーター:新起動/ジェニシス」、「ジュラシック・ワールド」に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」・・・!筆者が10代〜20代の時に観た作品のシリーズがこんなにも多く公開されるとは・・・(絶句)。懐かしさで嬉しいような、その一方、ハリウッドの企画の貧困さに呆れてもうどうでもいいような・・・う〜ん、なんとも言えない複雑な心境です。