其の270:「明日を夢見て」は今の日本と酷似してるぞ!

 本当はフランス製アクション・アドベンチャー映画「ジェヴォーダンの獣」か、「変態ケンちゃん(洗濯屋じゃないよ)」の愛称でも知られる(笑)ケン・ラッセルの作品あたりを書こうと思いましたが今度にして(笑)、イタリア映画「明日を夢見て」を。俳優陣にメジャーな人々はいませんが、監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」、「マレーナ」のジュゼッペ・トルナトーレ。音楽は勿論、世界最高のスコアを書くエンニオ・モリコーネ御大^^何故、今作を取り上げるのか?その理由は後述!

 戦後しばらくしてのイタリア・シチリア島(=マフィアの発祥地)を舞台に「映画のオーディション参加料」として人々から金を奪ってはトンズラする自称・大手映画スタジオのスカウトマン(=詐欺師)を主人公にしたロード・ムービー。そんな彼に映画のヒロインを夢見る薄幸の少女(巨乳)が絡むが・・・トルナトーレらしい苦い結末が観客の胸を打つ。

 トルナトーレ自身は「ニュー・シネマ〜」と同じくシチリア島を舞台にして(それも戦後の貧しい時代)トトとアルフレードとは異なる視点で「映画愛」を綴った「裏ニュー・シネマ・パラダイス」として今作を制作しているが・・・ここに登場する「現状からの脱出を願う大勢の人々(ヒロイン含む)」って・・・これっていまの日本人そのものじゃない?「格差社会」における大半の「下流層」の姿そのまんま。そして、彼らにつけこむ悪い奴・・・そんな人物や業者はいまの日本には吐いて捨てるほどいる!公開当時は「フランダースの犬」と同じく「日本人好みのお涙頂戴もの」と思われた嫌いもなくはないが、その時とはまた違った見方がいまの日本人には出来るのではないか(それも映画の効用のひとつだ)??

 ところがねぇ・・・これソフト化されてません!DVDはおろかビデオにもなっていないと思う(筆者が所有しているのも以前、某BSチャンネルで放送された時に録画したもの)。今作はリアリティを重視してトルナトーレが主人公以外の大半の出演者を素人から選んだ野心作でもあるのに。ヒロインの女の子は素人だったのにいきなり脱がされたから・・・今作以降、映画に出ていないようだ。やっぱり懲りたのかな(苦笑)?
 以前から思っている事をまたまた書くけれど、どうでもいい映画がどんどんソフト化されるのに対して肝心の往年の名作、佳作、傑作がソフト化されないのは何故??権利関係云々ある事は百も承知だが、ビデオ全盛期でも例えばビリー・ワイルダーの「お熱いのがお好きマリリン・モンロー主演)」やベルナルド・ベルトルッチの「1900年」辺りも最後の最後になって、ようやくソフト化されたほど!で、未だに「1900年」はDVD化されていない(出たら即買いするのに)!!!

 今回は作品紹介よりも(久々に)メーカーの方々に喚起を促すために「明日を夢見て」を例に書いた次第。ラス・メイヤーの諸作品や、石井輝男の「異常性愛シリーズ」がDVDで観られるのは大変嬉しいが(それ以前は特集上映や輸入版ビデオで観るしかなかった)埋もれてる映画はまだまだ山ほどあります!是非、メーカーの方々に売れる・売れないが大事なことも分かりますが<文化事業>のつもりで精力的にソフト化して欲しいと思います。