其の543:ヴァーホーヴェンの方の「トリック」

 スケジュールがあわず見逃した「ポール・ヴァーホーヴェン/トリック」をDVDながらようやく鑑賞。仲間由紀恵阿部寛が活躍する方ではありませんので御注意あれ(邦題ややこしいわ)。
 ポール・ヴァーホーヴェンといえば、このブログ読んでる方なら書くまでもありませんが、オリジナル版の「ロボコップ」に「トータル・リコール」、「氷の微笑」や「スターシップ・トゥルーパーズ」ほかをハリウッドで手掛けた後、故国オランダに戻って活動しているマエストロ。「ブラックブック」以来の御大の新作だし、日本では滅多に公開されないオランダ映画。コアな映画ファンならチェックするしかないでしょう^^!


 
 ある企業の共同オーナーにして資産家の男。だが会社の業績は悪く、妻や子供2人との関係はこれまでの彼の浮気癖が災いして冷え切っている。男の50歳を祝う誕生パーティーの日、半年前に日本へ向かったはずの元愛人が妊婦姿で突然現れて・・・!?


 
 この作品、最大の特徴は→→→プロの脚本家に冒頭の4ページ(時間にして約4、5分)のシナリオを書いてもらって撮影し、その“続きのお話”を一般公募で募集(驚)!選ばれたシナリオを元にまた5分撮影して、その続きを募集して・・・を繰り返して完成した映画なのです。「どう展開していくか」、「どういう結末になるのか」誰も最後までわからないという通常ありえない製作過程。御大70歳を越えてのこの創作姿勢・・・驚異だし、その発想も素晴らしく頭が下がる思い。勿論、毎回山のように送られてくるシナリオやビデオに目を通し、チョイスしながら脚本に仕上げて撮っていくのだから相当な手間がかかったそうだが。

 映画自体はヴァーホーヴェン作品らしい倫理観(特に性的な面)がイマイチ足りない男女が登場し(若いコの乳出しあり)、割りとドロドロした人間ドラマが展開。トータル的には・・・尺も短いのでオチも含めて『よく出来たブラックユーモアの小品』を観た感じ。「殺人」はないので、そういうのが苦手な方にはお薦め(笑)。
 ただね・・・上映時間:約90分の内、本篇は50分ぐらい。じゃあ、残りの約40分はと言いますとーこの実験的プロジェクトの製作過程を追った“ドキュメンタリー”!!冒頭、筆者はDVDで観たことを書きましたが、ドキュメンタリーが余りに続いたため、思わず「メニュー」に戻って確認してしまった(いきなり「特典映像」の方にいったのかと思ったのよ:苦笑)。まぁ、これはこれなりに興味深く拝見しましたけどね。送られてくるシナリオの多くにマフィアが登場するとか、主人公の邸宅の爆破シーンとか書かれているのでヴァーホーヴェンがドキュメンタリー中「マフィアとか出したくないし、家も爆破したくない」とコメントしてたのには笑ったが(筆者も書いて送りそう)^^。


 映像(これおそらく本篇用のデジタルカメラだよね、多分)も手持ちカメラを多用して若々しい感じだし、とにもかくにもヴァーホーヴェンがオランダで頑張っていたことがただただ嬉しかったな〜!次は超ハイパーバイオレンス大作を撮って頂くことを期待します!!