其の523:リーマンファンタジー「ニッポン無責任時代」

 早いもので2月になりました。
 先日、人生初のインフルエンザにかかって寝込んでしまい、間が空いてしまいました。本当にいま大流行しているらしいので、皆さんもどうぞお気をつけてー!!

 自分が病気をしたせいではないのですが、ここはひとつ<観ると元気の出る映画>ということで、スーパーサラリーマンが活躍する「ニッポン無責任時代」(1962)を。メジャー作ゆえ、このブログに書くのは少々気が引けるが・・・面白いんだからしゃーない^^


 口八丁、手八丁のスチャラカ男・平均(→「たいら・ひとし」と読む。演じるは勿論、植木等だ!)は、とあるバーで大手洋酒メーカー「太平洋酒」の乗ッ取り話を小耳に挟む。無職だった彼はさっそく「太平洋酒」氏家社長(=ハナ肇)の所へ行き、まんまと総務部社員に採用される。初仕事は、大株主である富山商事社長(=松村達雄)の買収。これを見事成功させて係長へ昇進。ところが乗ッ取り屋・黒田(=田崎潤)が富山の持株を手に入れたことで、均はクビに。だが新社長になった黒田は均の余興と宴会のとりもちの巧さから渉外部長として彼を拾う。黒田は「北海物産」のホップの買い付けに均をあたらせるのだが・・・!?


 無職だった男が自分の才覚だけで、あれよあれよと出世するという“サラリーマンのファンタジー”だよね、今作は^^。ほんの数日で昇進したり、遅刻して怒られても全く懲りないし(笑)。「会社のために忠実に働く者が良いサラリーマン」だったこの時代の全て逆をいっても巧みに立ち回る主人公。愉快痛快とはこの人のためにある言葉だわ。

 東宝は「社長シリーズ」(1956〜70)と呼ばれる伝統的なサラリーマン喜劇を作ってるところでもあるんだけど、脚本の田波靖男は自分も東宝のサラリーマンであることから悶々と思うところがあったらしい。それをストーリーに書き溜めておいたところ、TVで人気が出たクレージーキャッツの主演企画が持ち上がり、それまでのアイデアを今作で実現させた訳(松木ひろしと共同脚本)。

 今作はなんと言っても<植木等の魅力>に尽きるよね!ちょっと言われても「固いことは気にしないで」と軽くいなして本題に持っていくわ、自分にウザイことがふりかかりそうになると、ジョークで相手を煙に巻く(笑)。身のこなしも軽やかにヒット曲「スーダラ節」や「ドント節」、「ハイそれまでヨ」ほかを次々と歌い上げる才能(作詞は言うまでもなく青島幸男先生)♪。映画観てると「植木等はこの役を演じるために生まれてきたのではないか?」と思うぐらいハマってる。クビになっても会社に固執しないポジティブ・シンキングも素晴らし過ぎる。こんなに痛快なキャラクターは「幕末太陽傳」のフランキー堺以来ではないかと個人的には思う次第。

 監督は古澤憲吾。この人も脚本に負けないコミカルな演出を今作では随所に披露。タイトルバックのアニメーションに始まって、宴会場で歌っていた植木がいつの間にやら広〜いスタジオで歌っている・・・というトリックや、ワイプでのお遊び等、全体的に凝りに凝っている。古澤は今作が大ヒットしたことで以降、シリーズ化された「クレージー」映画や、いまでは散歩しまくっている加山雄三の「若大将」シリーズ等の娯楽映画でその名を知られるようになった。先に「今作はファンタジー」と書いたけど、作劇のテイストとしては“ミュージカル風味のコメディ”とするのが正確だろうけどネ。


 植木等をはじめクレージーキャッツの面々も続々と亡くなってしまったが、植木等のスーダラ・スーパーサラリーマンが大活躍する今作は永遠の傑作だと断定してしまおう!ホント、筆者も次に生まれ変わったら平均みたいに生きてみたい・・・(憧憬の眼差し)!!


 <追記>「サザエさん」の波平さんや「ガンダム」のナレーションほかで知られる声優の永井一郎さんが死去!余りの突然さに絶句した・・・。
 筆者も10年ぐらい前、一度お仕事でご一緒したこともあり、ホントにホントに悲しい・・・。ご冥福を心よりお祈り致します。