其の305:デビュー作からバイオレンス「デリンジャー」

 久々に「最近きかない監督シリーズ」を。映画監督にして脚本家でもあるジョン・ミリアスの名前も最近とんと聞きませんなぁ。兄貴分のフランシス・フォード・コッポラは先日新作を発表したし、仲間のルーカスやスピルバーグも「インディ・ジョーンズ」で健在をアピールしたばかりなのだが(出来はまた別)、何しているんだろ??そんな彼の初監督作(兼脚本)が実録ギャング映画「デリンジャー」(’73)!よく「デビュー作に監督の資質が出る」といいますが・・・これはその典型といえそうだ。TVアニメ「キャッツ・アイ」の歌とお間違いなく(懐)!


 1920〜30年代にかけて大暴れしてFBIから「公衆の敵ナンバーワン」と称され目の敵にされた実在のギャング、ジョン・デリンジャー(1903〜1934)の後半生を描いたのが今作(=デリンジャーを演じるのは「ワイルドバンチ」、「ガルシアの首」ほかサム・ペキンパー作品の常連ウォーレン・オーツ)。デリンジャー一味と彼を追うFBIの様子が交互に描かれる。ギャングたちよりもFBIの役者たちの方が「強持て」なのが面白い(苦笑)。実録ものだし、ギャング映画だからラストは・・・言わずもがな、ということで。
 デリンジャーをモデルにした映画は1935年の「Gメン」に始まって現在までザッと10数本もあるのは大衆から「義賊」として愛されていたからでしょう(=詳しく知りたい人はそのテのサイトや本で調べてね)。後年「エイリアン」や「パリ、テキサス」に出演するハリー・ディーン・スタントンや「未知との遭遇」以前のめっちゃ若いリチャード・ドレイファスも出てるよ。


 ジョン・ミリアスビリー・ワイルダー(「お熱いのがお好き」、「アパートの鍵貸します」)やウォルター・ヒル(「ストリート・オブ・ファイヤー」)同様、脚本家としてキャリアをスタート。「大いなる勇者」(’72)や「ロイ・ビーン」(’72)で注目されて監督も手掛けるようになるんだけど、71年の「ダーティハリー」の「1」にノン・クレジットながら脚本に参加してるんだよね(同「2」では正式クレジット)。で、主人公にマグナム持たせることを考えついたのがミリアスらしい(彼は無類のガン・マニア。ちなみにマグナムは普通の人が撃つと肩を脱臼する程の強力な銃!次元大介の真似して片手で撃っちゃあかんよ)。その彼が初監督作に選んだのが「ギャング映画(=ドンパチやり放題)」というのは・・・めちゃめちゃわかりやすい(笑)。


 彼の作品はよく「男くさい」とか「失われたロマンを追い求めたもの」と評される。でミリアスは俗にいう「タカ派」でドンパチ大好き(笑)!!「デリンジャー」以降でも「風とライオン」(’75)、本人の黒澤趣味が出た「コナン・ザ・グレート」(’82)、何故かアメリカの田舎に侵攻してきたソ連軍を学生たちが迎え撃つ「若き勇者たち」(’84)、まんまの「戦場」(’89)なんてアクション映画を作ってるし、コッポラの「地獄の黙示録」も彼の脚本である(アクションバリバリの結末をコッポラが変更したことは有名)。とはいっても日本で一番人気の高い作品は、おそらく非アクション映画「ビッグ・ウェンズデー」(’78)なんだろうけど(=ミリアスが学生時代に熱中していたサーフィンを題材にした青春映画)。


 監督作以外に書いた脚本も「ジェロニモ」(’93)や「今そこにある危機」(’94)など「自分の興味のあるジャンル」しか仕事しないという姿勢が素晴らしいね(笑)!そんなミリアス大先生だけに「デリンジャー」は初監督作ながら先述した名役者たちを集めて(=オーツが出ているだけで今作も「男くささ」ムンムン)ドラマ部分の演出は奇をてらわず手堅いし、銃撃戦も迫力があって初監督とは思えぬ上手さ!!若い監督たちは是非見習うように^^。
 時々合間に挿入される「デリちゃん活躍紹介シーン(すばやいカットで新聞記事と写真、実写が挿入される)」は「明日に向って撃て!」を参考にした気がするけど。音楽が「カントリー」調なのは、「30年代実録ギャング映画」のお約束か(笑)?
 脚本書けて演出もうまい才人を放っておくのはもったいない。とにもかくにもジョン・ミリアスの新作がなにより観たい。CGも駆使して手足スパスパ血しぶき大量の大銃撃戦を希望(笑)!!


 <余談>ですが・・・1963年、アメリカで一時「デリンジャー生存説」が持ち上がったことがある。一説によればデリンジャー研究家(=アメリカには現在でも彼のファンクラブがあるらしい)が老デリンジャー(当時60歳)の写真を入手したことがきっかけらしいが・・・勿論、公式には確認されずに終わった(一応、死後まもなくの彼の写真は、デリンジャー関連サイトにアップされてるよ^^)。もし生きていたらFBIの立場はなくなっちゃうけど、おそらく「源義経が生き延びてジンギス・カンになった」とか「ヒットラーが南米で暮らしている」等の類の話でしょう。トリビアとして書いときました!

 
 それにしても正月映画は・・・観たい作品がありませんなぁ(涙)。つい暇つぶしで無理矢理「007 慰めの報酬」やキアヌ・リーブスのリメイクSF映画を観てしまいそうな自分が怖い(苦笑)!