其の329:輝男!輝男!!輝男な続編もの2本

 「網走番外地」シリーズの監督にして日本のカルト映画王としても知られる故・石井輝男(今風に呼ぶならテリー石井か?)。彼は宇津井健もっこりタイツ姿が眩しい「鋼鉄の巨人(スーパージャイアンツ)」シリーズの監督でもある(笑)。そんな彼の絶頂期の2作品を追加紹介!シャレの分かる粋な映画ファンならハマること請け合い^^

 
 まず1本目は「怪談昇り竜」(’70)。主演は2年後に「女囚さそり」に出演するタランティーノも大好き梶芽衣子。早い話が<任侠もの>なのですが、今作はそれまでの「昇り竜」シリーズにタイトル通り「怪談」と「エロス」を盛り込んだニューウェーブな第5作(笑:何故ホラーにしたのかツッコんではいけない)!
 関東立花一家二代目・立花明美(=梶)らが剛田組組長を襲撃した際、ひょんなことから黒猫に呪われるようになる。以後、次々と怪死する組員。そこに敵対する土橋組&正体不明の見世物小屋のせ●し男ら(超唐突)が絡みつつ、任侠映画のお約束、「殴り込み」へと突入していく・・・!
 三池崇史監督作「牛頭」が<極道ホラー>なら、そのルーツに当たるような作品。早すぎる<任侠ホラー>・・・である(他に聞いたことないけど)。古今東西、昔っから「黒猫」は不吉なものの象徴だが・・・ネタ元はエドガー・アラン・ポーの小説あるいは「化け猫」映画あたりか??
 梶芽衣子のほか、「独立愚連隊」シリーズの佐藤允に、「砂の器」の加藤嘉がいつもの重厚な演技を見せつつ・・・観客が予想もしない、もの凄いことになる(笑:御大の出演理由不明)!ちなみに見るからにアブナイせ●し男は石井の盟友にして「恐怖奇形人間」でも御馴染み土方巽大先生!!
 いつものように摩訶不思議なセット+切れ味良いアクション及び編集が堪能できます(オープニングのキャスト・スタッフクレジットの入れ方もうまい!若い映画監督やTVマンは観て勉強しましょう)。石井ファンのみならずノーマルな任侠映画に飽きた方にも御薦めv

 
 そして2本目が「やさぐれ姉御伝 総括リンチ」(’73)。鈴木則文の「不良姉御伝」のキャラ・お蝶(もち池玲子よん♪)を引き継いで監督した第2弾!「総括リンチ」といっても連合赤軍とは何の関係もありまへん。
 神戸にやって来たお蝶はいきなり正体不明の男たちに拉致られ即、拷問(乳出しあり)!目が覚めるとアソコをえぐられて殺された女性の殺人容疑をかけられてしまう!前作の「復讐譚」と異なり、ミステリアスな序盤から、やがて麻薬密売が絡み、クライマックスではもはや凡人にはついてゆけぬ大乱戦が繰り広げられる(本当です)!!
 出演には「東映ピンキー・バイオレンス」には欠かせない池玲子を筆頭に遠藤辰雄、安部徹、名和宏内田良平、林真一郎(=「エロ将軍」!)+大泉滉と・・・石井映画いつものメンバー(笑)!短い出番ながら「アラカン」こと嵐寛寿郎大先生が出ているのは・・・何かの間違いだろう(笑)。あるいはニセの台本渡して騙したか(笑)。
 「通常3本の映画に当たる脚本を1本にまとめる」のが石井の脚本術だが、今作も例に漏れず「任侠」、「ミステリー」、「アクション」の3要素が渾然一体となっている。
 先述の「怪談昇り竜」が三池の「牛頭」のルーツ的作品なら(=もっとも「牛頭」の脚本を書いた佐藤佐吉には、石井作品のことは毛頭なかったと思われる)今作は三池の初期作「戦国極道志 不動(主演、谷原章介!)」に似ている。「不動」では<生首でサッカーする子供たち>や<アソコで吹き矢を飛ばして人殺す女子高生ストリッパー>他とんでもない設定のオンパレードだが(=ビデオ等で観られた時に早送りされないよう考えた末のことらしい)、石井の今作も<九龍城を彷彿させる迷路のような神戸の街>や<完全にイッちゃった患者たちで溢れる脳病院>、さらには<麻薬の密売に●●●の●●●を利用するヤ●ザ>等、現在なら即台本が却下される設定がいっぱい(爆笑)!で、劇中の随所に大量のおっぱい要員を投入、ラストカットも池玲子とおっぱいって・・・もう永久に日本では製作できない映画ですわ(何故か関西弁)。余談ながら生前、石井は食堂でラーメンとカレーライスを一緒に注文し、交互に口に入れていたという。「あらゆる要素をぶち込んで観客を楽しませる!」という彼の気質が食事の仕方にも表れていたと思われるエピソードだ(=超好意的解釈)。
 「恐怖奇形人間」や「徳川いれずみ師 責め地獄」のぶっ飛びぶりには及ばないが、今作も最高!「怪談〜」と今作を比較すると、マニアの間では「怪談〜」人気が高いようだが、筆者的には「総括リンチ」の方に軍配を上げる。


 ・・・しかし「怪談〜」など肝心の本国・日本でDVD化されずに、海外の方でソフトが出ているって・・・どういうこと(「奇形人間」然り)!?これが本当の本末転倒!嘆かわしい限りだ。
 
 <全くの余談>実写版「ヤッターマン」が予想以上の大ヒット(でハリウッド版「ドラゴンボール」は日米で大コケ^^)!子供もターゲットにしたその割りには下ネタが多いそうな(筆者未見)。監督の三池崇史曰く「台本に書くと怒られて直されるから、現場でドンドン足していった」。その確信犯的作劇方法からみても三池はもしかしたら本人の意思にかかわらず石井輝男の正当な後継者なのかもしれない(多分、違う)。