其の521:日活・ミーツ・ゴダール!「紅の流れ星」

 明けましておめでとう御座います^^。2014年になって早1週間以上経ちました。少〜しだけ正月休みが取れましたが・・・忙しくて、すぐさま正月気分は抜けたけど(苦笑)。

 新年1発目ということで何を書こうか迷ったのですが・・・昨年末がイタリア映画だったので、バランスをとって邦画にしようかと。そこで先日、初DVD化された「紅の流れ星」(’67)をチョイス!今や懐かしの“日活アクション映画”ですが・・・21世紀の日本映画にはちょっとみられない“粋な快作”ざんす^^。


 東京で敵対する組織の親分を射殺したヤクザの五郎(=渡哲也)。「ほとぼりが冷めるまで」と、組の手引きで神戸に送られて早一年。地元の組の用心棒を務め、特に不自由のない気ままな生活ながらも日々退屈し、焦燥感だけを募らせていた。そんなある日、組と取引きしていた宝石商が消息不明となり、その男の婚約者と名乗る啓子(=浅丘ルリ子)が手がかりを求めて事務所にやって来る。東京から来たクールな容姿の彼女に興味をそそられた五郎は宝石商探しを手伝うことにするのだが・・・!?


 その昔、映画しか娯楽のなかった日本では各映画会社が大量に映画を製作していた。そうなれば当然、オリジナル脚本ばかりじゃアイデアもやがて枯渇、間に合う訳もなく洋画からアイデアを頂いたりもしていた。のちに「宇宙戦艦ヤマト」、「ノストラダムスの大予言」、近藤真彦中森明菜主演の珍作「愛・旅立ち」を手掛ける(←ちょっと紹介が偏ってるな^^)舛田利雄監督が石原裕次郎主演で演出した「赤い波止場」(’58)はフランス映画「望郷(ジャン・ギャバン!)」の“翻案”。その「赤い〜」を舛田自身がセルフリメイクしたのが今作である。

 それにもちょっとした“事情”があって・・・若手俳優・渡哲也をブレイクさせたい日活は舛田&渡のコンビで<新作>を準備していたものの、相手役に予定していた水前寺清子チータ!)のスケジュールの問題で延期となる。「このままでは劇場に穴があく」ことを恐れた会社が「渡主演なら何でも!」・・・ということで、舛田と脚本家の池上金男(後に小説家)が先の「赤い波止場」をベースにすることを決める。設定と大まかな話を決めて舛田はすぐに神戸にロケハンに出かけたというから、そのぐらいの突貫作業だった訳だ。

 今作の最大の特徴は何と言っても“大量の渡の台詞”!!で、それが結構かっこいいのよ、チャライけど(笑)。現在の渋〜い渡哲也しか知らない若い人はさぞかしビックリするだろう。女にすぐ「俺と寝ようよ」とか言うし(笑)!
 それもその筈、渡は「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドをイメージして役を演じたという。「望郷」のカスバが神戸になったのは如何なものかと思うけど(笑)、確かに人は殺すけど、憎めない女好きの子悪党・・・って、まんまこれ「勝手にしやがれ」のベルモンドじゃん!よもや日活アクションにゴダールが加わるとは・・・ゴダール本人は夢にも思わなかっただろうな^^。ただ中平康太陽族映画「狂った果実」(日活作品)にトリュフォーとかヌーベルヴァーグ一派が影響を受けた訳で・・・ホントに映画は<世界言語>であることを再認識した次第^^。

 何度も以前に書いたけど、<昔の映画を観る楽しみ>のひとつは俳優たちの若き日の姿を観られること。ブレイク前の渡哲也のほか、クールビューティー浅丘ルリ子を筆頭に髭のない刑事役の藤竜也(まだ「愛のコリーダ」演ってない)、「流し目」以前の関西弁をまくしたてる杉良太郎松尾嘉代(マジ若っ!)、宍戸錠から歌も披露する奥村チヨまで!!いや〜「人に歴史あり」とは言ったものだ^^。

 
 公開された“1967年”といえば・・・学生運動華やかかりし頃。理由のわからぬ焦りや不安、社会への不満等、当時の若者像が主人公の五郎に投影されているのも単なる翻案、セルフリメイクを越えた設定、脚本の妙。哀愁漂うテーマ曲(→劇中、五郎が口笛で吹く)といい・・・彼の胸中は21世紀の日本を生きる我々にも十分共感出来る。どうでもいい漫画とか無理矢理アニメを実写化するぐらいしか企画がないのなら、「紅の流れ星」21世紀版を製作して欲しいものだ(いや、ホント、マジで)。