其の495:ゴア!ゴア!!「2000人の狂人」

 この世の中、どんなジャンルにおいても“知る人ぞ知る・・・”という方がいらっしゃるわけですが、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督もそういうお人の部類に入るでしょう(ホラーマニアと一部の映画おたくは知っている:笑)。そこで今回、彼の“最高傑作”と称される「2000人の狂人」(’64)を取り上げます。・・・タイトルだけでも凄すぎて放送不可能(苦笑)!!前回、スピルバーグの新作「リンカーン」を紹介しましたが・・・今作も「南北戦争」を題材にしているので、「リンカーン」と併せて観ると味わいも倍増するだろう(んなわきゃない)。60年代のカルト映画といっても<カラー映画>なんで、若い人たちもご安心めされよ^^


 現代のアメリカ(撮影当時の)・・・南部のとある小さな町。町の<誕生百周年>を祝うからと、車に乗って北部から来た6人の旅行者(男3人女3人)が“町のゲスト”として無理矢理滞在させられる。だが、それは100年前の南北戦争での恨みを晴らすための恐るべき罠だった!ひとり、またひとり北部の旅行者たちが血祭りに上げられていくー!!


 タイトルも含め、決して凡人には思いつかないリアリティーあふれる素晴らし過ぎる設定(笑)。タイトルの<2000人>というのはこの町の人口・・・どう数えてもそこまでいないけど(笑)、南部の陽気なカントリーソングにのって繰り広げられるゴア(=流血、血糊。引いては人体破壊)描写は観ていてウケる。
 ルイスは1926年、米・ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。シカゴを拠点にCMや企業映画を製作後、エクスプロイテーション映画へ参画。’63年、世界初のスプラッター映画「血の祝祭日」を発表。マンネリ化していたホラー映画において、その衝撃的な内容と映像が話題を呼ぶ。以降、ストレートすぎるタイトルの「ゴア・ゴア・ガールズ」(’71)、集大成的作品「血の魔術師」(’72)を監督。しばらく映画界から遠ざかっていたものの、80年代のホラービデオブームで再評価され、2002年「ブラッド・フィースト 血の祝祭日2」で監督復帰し、ファンを喜ばせた。自己資金で手っ取り早く話題作りするために作る映画といえばエロかホラーというのは映画業界の“セオリー”だネ(ラス・メイヤーサム・ライミ井筒和幸然りだ)。
 ちなみに今作は2001年にロバート・イングランド主演でリメイク。その時のタイトルは・・・「2001人の狂宴」・・・1人増えてる(苦笑)。自らを“血の魔術師”と称したルイスは今作ではテーマソングも作曲。ノリノリの演出を披露する。筆者は残念ながらアメリカ本土に行ったことがないので、南部のお祭りって実際どんなもんだか分からないけど、60年代の町の雰囲気はよく出ていると思う。クルマも・・・古いし(笑)。で、明るいノリで北部からきた男女が様々なアイデアで次々に殺されていく(笑)。その毎回異なる殺され方を楽しむのが今作最大の見所だ。
 さすがに60年代の映画だし、大手スタジオ製作の大予算で撮られた映画じゃないので、現代視点で観ても俳優は誰も知らないし(→メインの親父がちょい麻生太郎氏に似ている^^)、撮り方もそれほど巧くないし(勿論、まだ腕がもげるとかの直接描写はさすがにない)雰囲気はラス・メイヤーっぽいけど、ラスほど編集も細かくないが・・・そこは大目に見てあげよう。
 この文章を読んでいて「大昔の恨みを晴らすために町ぐるみで人殺しやるか?」という素朴な疑問が湧いた、そこのアナタ!!その指摘は全く持って正しいのだが・・・ちゃ〜んとそこは意外なオチ(?!)がついてますから♪映画表現が年代毎にどう進歩していったのか(今じゃCGばっかだけど)楽しみながら勉強も出来る作品。気に入ったら、他のルイス作品も是非観てね!